サテュロスの仮面
  本展覧会では、ギリシア美術史の正道に堂々と位置付けられている神々の像、肖像彫刻、陶器画ばかりではなく、当時の社会、生活、芸能、風俗を今日に伝えてくれる小品も多数展示される。今日ではギリシア悲劇と称される古代ギリシアの演劇では、俳優はマスクをつけて演技をしたが、素焼きの土で作られたこのサテュロスの仮面が実際に使用されたかは定かでない。サテュロスは、羊飼い・山羊飼いの神で山羊に似た容貌をしていたと伝えられるパンの子孫ともいわれ、自身も山羊の足と角を持った半神半獣。ディオニュソスの従者として「ディオニュソスの秘儀(バッカスの祭り)」では山野を乱舞する姿で登場する。ゼウスやアテナに代表されるオリュンポス系列の神々とは別系統の半神で、ギリシア精神世界の重層性を我々に示してくれる。
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