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 セミを家で鳴かせよう  #645 (2002/08/25) 

 矢野左衛門が真夏の東京を歩いていて、ふと思いました。「江戸(東京)でセミの鳴き声がしない!」。確かに東京でのセミの声は、以前ほどよく聴かれなくなっています。そこで矢野左衛門がまたもや立ち上がりました。「ならばセミを捕まえて、室内で鳴かせてみようぞ!」。みなさんもセミを捕まえたはいいけれど、室内で飼ってもついぞ鳴いてくれなかった、そんな経験は有りませんでしたか?はたしてこの無謀な挑戦に成功するのでしょうか?

 矢野左衛門が向かったのは三浦半島の先端、城ケ島。温暖な黒潮がすぐ近くに流れるこの島はセミの楽園だったのです。専門家の先生も同行。しかし昼間は見つかりはしますが、さっぱり捕まりません。あきらめた矢野左衛門、夜の採取は弟子の右之助に任せることにしました。ところが夜になると、採れるわ採れるわ、2時間で9匹ものセミ(アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ)を、それも手づかみで捕まえてしまいました。セミは昼日性なので、夜は木に捕まり眠っているのです。
羽化し抜け殻にぶら下がるセミ  そして神秘的なセミの羽化(うか)も発見しました。セミは幼虫時代、地中に5年ほどいて、地上に登り羽化。しかし成虫では2週間ほどの命なのです。

 矢野左衛門は獲ったセミを家に持ち帰りました。木を虫かごの中に入れて飼い始めたのですが、ほどなくセミたちはひん死の状態に。それは切った木をセミに与えていたためでした。セミの吸う樹液(サクラ)の糖度は0.8%。花(レンゲ)のミツの糖度22%に比べるとずいぶん低いのです。糖度の低い樹液を吸うセミは、絶えず樹液を吸ってなければ生きていけないのです。

所さんのポイント
セミはずっと樹液を吸わなければならないので、生きた木で飼うこと!

 セミはオスしか鳴きません。セミが鳴くのは、オスがメスを呼ぶためと、仲間にえさ場を知らせるため。そこでこんな実験。録音したクマゼミの鳴き声を、セミが全くいない木にスピーカーで流してみました。すると30分の間に、クマゼミが3匹、本当に集まってきたのです。
 そしてさらに面白いことは、セミが種類によって鳴く時間をズラしていること。今回調べた地域では、明け方&真昼ニイニイゼミ&ミンミンゼミ、午前クマゼミ、午後アブラゼミ、夕方ヒグラシと、本当にズレていました。大きな音で鳴くセミはこうして時間をズラさないと、鳴き声がかぶりあってしまうからなのです。

実験風景  セミの声を大学に持っていった矢野左衛門、すると面白いことが分かったのです。アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミといったセミたちの鳴き声の高さの周波数を調べてみると、なんと皆、4000〜5000ヘルツあたりにそのピークがあったのです。ならばその辺りの音のする楽器を鳴らせば、セミがつられて鳴くのではないか?と矢野左衛門が用意したのは、ピアノとバイオリン
 まずはピアノの一番高い鍵盤(4200ヘルツ)をセミの前で連打してみました。しかし残念ながらウンともスンともいいません。今度はバイオリンの一番高い音(4400ヘルツ)をかき鳴らしてみました。すると、セミ(ミンミンゼミ)が見事鳴き出したのです!

所さんのポイント
セミは自分の鳴き声と似た周波数の音(例:バイオリン)につられて鳴くことがある!


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