知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


作れ種なし サクランボ
第786回 2005年6月19日


 初夏の風物詩サクランボ。しかし、国産サクランボはここ数年、外国産のアメリカンチェリーに押されて出荷量が減っているというのです。まさにサクランボの危機!?そこで今回、目がテンは国産サクランボの人気を復活すべく、その魅力に迫りました。

サクランボの花とサクラの花  矢野さんが春にサクランボ農園を訪れると、農家の方が花見をしていました。しかしサクランボ(セイヨウミザクラ)の花を見てみると、ちょっと普通のサクラと違います。街で見かけるサクラよりもサクランボの木にはビッシリと花が咲いていたのです。その違いは何なのでしょう?
 その秘密は、花になるつぼみが入っている花芽という芽の多さにありました。通常、ソメイヨシノなどの枝には、3つ程度ひとかたまりでついているのに対し、サクランボは5、6個まとまって花芽がついているのです。枝に花芽が多くついているサクランボは、ソメイヨシノに比べてビッシリと花が咲くのです。
 こんなにたくさん花が咲くサクランボなら、きっと実も多いはず。ということで、目がテン恒例!実際に数えてみよう。矢野さんが、一本の木になっているサクランボの実を数えました。農家の方にも協力して頂いて数えること5時間、なんとその数10625個。すごい数です。ところが農家の方は、これでも花の数に比べて全然少ないというのです。
 実は、サクランボの木はおよそ10万個もの花を咲かせます。ですので、サクランボの実も花と同じ数だけできるのですが、収穫期にはその1割程度になってしまうのだそうです。実は、サクランボの木は自ら実を落としているのです。そもそも樹木は実をつけるために、枝や葉など他の部分の成長に必要な栄養を使わなければなりません。しかしサクランボは10万個の花の全てに実をつけていると、他の成長に使う栄養が少なくなり枯れてしまうので、自ら9割の実を落としてしまうのです。この現象を生理落下といいます。
 では、なぜたくさんの花をわざわざ咲かせるのでしょうか?それは、サクランボの受粉期間が他の植物に比べて短いから。リンゴやモモの受粉期間が5〜6日間なのに対し、サクランボはたったの2日だけなのです。そのためサクランボは昆虫に受粉させるチャンスを増やそうと、たくさんの花を咲かせていたのです。

所さんのポイント
ポイント1
サクランボの木には10万もの花が咲くが、成長の邪魔になるため自ら実を捨て、出来る実は1割程度!

 サクランボといえば、あの固い種子が嫌われ者です。そこで目がテンでは、サクランボ人気復活のために種なしサクランボを作ることにしました。使用するのは、種なしブドウを作る際に用いられるジベレリンという植物ホルモン。これを花粉の代わりに花の柱頭につけると、植物は受粉したと勘違いしてタネなしの果実をつけるというのです。
 そこで、この方法でタネなしサクランボを作ってみました。しかし、スタジオで所さんに食べて頂くと、しっかりあの固いタネがあったのです。一体どういうことでしょう。
 実は、この固いタネだと思っていたのは、内果皮という果肉の一部が木質化したもので、種子を包み込む殻だったのです。つまり、種子ではないのでこの固い殻は無くならなかったのです。一方、正真正銘の種子は、この固い殻の中に入っている小さくて白い、と呼ばれるもの。確かに、種なしサクランボを割ってみると仁は薄っぺらくなっていて、種無し状態になっていたのです

 種なしサクランボがダメなら、その仁をうまく利用できないかと、目がテンスタッフは考えました。そこで通常は、アンズの仁から作られる杏仁豆腐をサクランボの仁で作ってみることにしたのです。
桜仁豆腐  実はアンズもサクランボと同じバラ科サクラ属で同じ仲間。しかし、いざ作るとなると、サクランボの種子はアンズの3分の1の重さしかなく、杏仁豆腐を作るには750個もの種子が必要だというのです。大量にサクランボを扱うジャム屋さんにお願いしてたくさん種子を頂き、一つ一つ丁寧に種子の中のを取り出します。苦労の末、杏仁豆腐ならぬ桜仁豆腐が完成しました。
 しかしスタジオで所さんに食べて頂くと、反応は今ひとつ。淡い味のサクランボの仁は、もっとたくさん使わないと、杏仁豆腐には及ばないようです。

所さんのポイント
ポイント2
サクランボの固い種子の皮は、果肉が変化したものなので無くならない!
本当の種子である仁は、杏仁豆腐の杏仁と同じ風味がした!



サクランボの種で作る「桜仁豆腐」の作り方はこちら




植物編へ食べ物編へ
前週 次週
ページトップ

ジャンル別一覧 日付別一覧