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子育て上手 コウノトリ
第807回 2005年11月20日


コウノトリ  今年9月、兵庫県豊岡市で人工的に繁殖させたコウノトリを自然に放したことがニュースになりました。実は昔、コウノトリは日本に数多く生息していたのですが、狩猟による乱獲やエサの減少、巣となる松の木の伐採などにより、絶滅してしまったのです。

 掛け軸や花札でよく見る松に鶴の図。しかし、この絵に描かれている鶴は、本当はコウノトリだというのです。一体、どういうことなのでしょう?
 そこで、まずはコウノトリとツル(タンチョウ)の外見を比較してみると、頭が赤いなどの特徴から、やはり掛け軸や花札に描かれている鶴は、間違いなくタンチョウだったのです。
 そこで今度は、掛け軸に描かれているように松に止まるツルを再現することにしました。すると、驚いたことに、なんとタンチョウは松の枝には、全く止まることができなかったのです。
 実は、タンチョウの足の指は4本あるのですが、後ろにある1本の指が短く、枝をつかむことが出来ません。それもそのはず、タンチョウの生活場所は川や湿原なので、そもそも松に止まることもなく、松とは無縁の鳥だったのです。
 一方、コウノトリは松などの高い木を好みます。足の指も、後ろ指が長くなっており、ちゃんと木の枝をつかめるようになっています。実際に昔、日本では松に止まるコウノトリがよく見られたそうなのです。
 では、なぜ掛け軸や花札には、松に無縁なツルが描かれているのでしょうか?その理由を専門家の方に伺うと、コウノトリが高い松の上にいたのでツルと見分けがつかなくて誤解したのではないかということでした。また、あえておめでたい物同士を並べたという意味もあるそうです。

所さんのポイント
ポイント1
ツルは木には止まれない!
よく見かける松に鶴という絵は、松に止まっているコウノトリをツルと誤解したためだった!


 コウノトリといえば、皆さん思い出すのが「赤ちゃんを運んでくる」という言い伝え。でも、よく考えてみるとコウノトリの体重は約4kg程度しかなく、赤ちゃんを入れたバスケットと同じくらいの重さなのです。果たして、本当にコウノトリは、自分の体重と同じくらいの赤ちゃんを運べるのでしょうか?
 そこで模型の飛行機を使って検証してみると、コウノトリが自分の体重と同じくらいの赤ちゃんを運ぶためには、優雅にクチバシでくわえるのではなく、足でしっかり体の重心付近でバスケットをつかみ、普段よりも速いスピードで飛ばないといけないことがわかったのです。
コウノトリの巣  では、なぜこのような言い伝えが生まれたのでしょうか?実は、この言い伝えのモデルになったのは、シュバシコウというヨーロッパのコウノトリ。シュバシコウは、昔から街の電柱や屋根の上で、大きな枝をクチバシにくわえてバスケットのような巣を作っていました。そして、その中に卵を産み、オスとメスが協力して仲良く子育てをしていた様子が、ヨーロッパの人々の目の前で見られていたのです。このようなことから、コウノトリが赤ちゃんを運んでくるという言い伝えが生まれたと考えられているのです。

 皆さんご存知の昔話「ツルの恩返し」。実は、この物語には恩返ししたのは、本当はコウノトリだったのではないかという説があるのです。どういうことなのでしょう?
 実はコウノトリは、クチバシをカタカタとならす「クラッタリング」と呼ばれる方法で、威かくや求愛行動を行います。その理由は、コウノトリはヒナの時には鳴けるのですが、大人になると声が出なくなってしまい鳴けなくなるからなのです。調べてみると、このカタカタというクラッタリングの音が、機織りの音に似ていたから、ツルの恩返しは本当はコウノトリだったのではないかと考えられていることがわかりました。
 そこで、目がテン恒例のびっくり実験。なんと、動物園に機織り機を持ち込んで、実際にコウノトリに聞かせてみることに。もし、本当に機織りの音がクラッタリングに似ているならば、この音を聞いたコウノトリは何らかの反応を示すはず。結果、機織りの音を聞かせて始めてから15分後、見事コウノトリがクラッタリングをしたのです。というわけで、ツルの恩返しで機織りをしていたのは、コウノトリだったかもしれません!?実際に兵庫県では「コウノトリの恩返し」という民話もあったのです。

所さんのポイント
ポイント2
コウノトリは成長すると鳴けなくなる!
その代わり、クチバシを鳴らしてコミュニケーションをとるが、その音は機織りの音に似ていた!?





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