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冬の北海道幻の アマエビ
第809回 2005年12月4日


 冬は魚介類のおいしい季節。その中でも、今旬なのがエビ。実は、日本人は1人あたりのエビの年間消費量が世界一なのです。今回は、刺身やお寿司などでお馴染み、エビの中でもとろーり甘い、アマエビを科学しました。

 そもそもエビには脚が何本あるのでしょう?そこで、街の人にエビの絵を描いてもらうと、脚の数は皆さんバラバラ。スタジオで所さんにも描いてもらうと、エビの脚を10本描きました。正解は何本なのでしょうか?
泳いでいる甘エビ  そこで、水族館にアマエビの脚を見に行くと、どうやら脚は体の前の方についているよう。数えてみると10本。ということは、所さん正解なのでしょうか?ところがエサの時間になり、アマエビが泳ぎ出すと、体の後ろの方にしまってあった脚が、さらに10本出てきたのです。
 実は、エビの脚は歩いたりエサをとったりする胸脚(歩脚)が10本、泳ぐための腹肢(遊泳脚)が10本、合計で20本あります。さらに、退化した短い脚などを厳密に数えると、全部で38本もあったのです。
 さらに驚いたことに、カニはエビが進化したものだというのです。でも、カニの脚は10本しかありません。実は、カニは進化の過程で腹肢が退化したらしいのです。その証拠に、カニのお腹の部分を開いてみると、退化した腹肢が出てきたのです。

 アマエビの正式名は、ホッコクアカエビ。食べると甘い味がするので「アマエビ」と呼ばれるようになったそうなのです。
 あれだけ甘いのだから、さぞかし採れたてのアマエビはもっと甘いだろうということで、所さんが新鮮な採れたてのアマエビを試食してみたところ、なんと「甘くない!」と言うのです。しかし、採れてから1日経過したアマエビは、ちゃんと甘くなっていました。一体、どういうことなのでしょう?
 そもそも、アマエビの甘み成分はグリシンというアミノ酸。しかし、このグリシンの量は、採れたてと1日経過したもので比べてみても、ほとんど変わりありません。では、いったい何が違うのでしょう?よく見てみると、1日たったアマエビには、何やらトロトロしたものが出てきています。実はこのとろみがポイント。とろみと一緒に甘みが舌にのると、長い間甘みが舌の上に残るので、甘みが強調されるというわけなのです。つまり、アマエビは甘み成分が増えるわけではなく、とろみが出ることで甘さをパワーアップさせていたのです。
 このとろみの正体は、アマエビがエサを分解するために持つタンパク質分解酵素が、死後自らの筋肉を分解して出来たもの。実はアマエビは、このとろみを作り出すタンパク質分解酵素を、他のエビより多く持っているというのです。
エビの仲間の生息している場所  これは、生息場所に関係がありました。イセエビは約20m、クルマエビは約40m、ボタンエビは200mほどの場所に生息しているのですが、アマエビの生息場所は深海500m。実は、アマエビは食べるエビの中では、最も深い場所に生息しているのです。アマエビが棲んでいる深海は温度が低いので、タンパク質分解酵素が働いてくれません。そのため、他のエビより多くタンパク質分解酵素を持つことで、エサを分解しているのです。

所さんのポイント
ポイント1
アマエビの甘さの秘密はとろみだった。
深海に生息しているのでタンパク質分解酵素を多く持ち、自分の筋肉を分解しているのだ!


 最近は、回転寿司でも手軽に食べられるアマエビ。しかし、超高級なお寿司屋さんのアマエビは、ちょっと違うというのです。実は、普通のお寿司屋さんでは体の大きなメスが使われてるのに対し、超高級なお寿司屋さんでは、性転換中のアマエビが使われているというのです。
 実は、アマエビは卵から生まれたときは、全てオス。5歳になると、オスのアマエビに変化が現れます。5歳になったアマエビは、性転換を始め、オスメスの中間である「間性(かんせい)」という状態になります。その後、アマエビは間性からメスへと変わり、産卵するのです。つまりアマエビは、5歳まではオス、5歳〜6歳が性転換期、その後はメスとして約11年間の寿命を全うするのです。
 でも、どうして5歳になってからメスへと性転換するのでしょうか?実は、アマエビが棲んでいる深海は、水温が低いので卵の成長が遅いのです。そのため、アマエビのメスは10ヶ月もの間、卵を抱いていなければいけません。長い期間卵を抱くには、体力のある大きな体が必要。だから、アマエビは体が大きくなってからメスへと性転換していたのです。

所さんのポイント
ポイント2
アマエビは性転換する!冷たい深海では、卵を長期間抱かなければいけないため、体力のある大きな体になってからメスに変わるのだ!




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