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伊豆・ 天城 越えの科学
第835回 2006年6月11日


 伊豆半島の中心に位置する観光地、天城浄蓮の滝を始めとする数々の滝や、ワサビ、いのしし等でお馴染みです。またこの天城は、石川さゆりさんのヒット曲「天城越え」でも歌われているように、伊豆半島の南北を結ぶ難所としても有名。さらに、川端康成の「伊豆の踊り子」でも、主人公の学生と踊り子が出会ったのも天城越えの最中でした。
 そこで今回は、矢野さんが学生、佐藤アナが踊り子に扮し、天城の謎に迫りました。

 まず2人は、なぜ「天城」という地名がついたのか調査に乗り出しました。すると出会ったのが、地名の由来になったという謎のお茶。飲んでみると、なぜか砂糖を入れてもいないのに甘いというのです。一体、どういうことなのでしょう?
天城甘茶の花  実は、これは「天城甘茶」という甘茶の一種。観光ガイドにも載っている天城の名産物だったのです。しかし、お茶なのになぜこんなに甘いのでしょう?
 その理由は、アマギアマチャは、お茶の仲間ではなく、ユキノシタ科アジサイ属の植物だから。実は、この天城甘茶の「甘茶の木」が「甘木」になり、さらに「天城」になって、天城という地名の由来になっているのではないかと考えられているのです。

 皆さんご存知の天城の名産と言えば、やっぱりワサビ。しかし、なぜ天城はワサビの名産地なのでしょう?
 そこで、ワサビ田を訪れてその理由を伺ってみると、天城は水が豊富だからとのこと。実は、ワサビを育てるには、水が大量に必要なのだそうです。例えば、米1kgを収穫するために必要な水は約2トンなのに対し、ワサビ1kgを収穫するためには水が約31トンも必要なのだそうです。
 実はワサビは、自分に含まれている辛味成分が他の植物を枯らしてしまうだけでなく、自分の成長も妨げてしまうため、大量の水で適度に辛味成分を洗い流す必要があるのです。
 しかし、なぜ天城にはそれほど豊富な水があるのでしょうか?実は、天城の過去20年間の平均年間降水量は4,406mmで、全国1283の観測点の中で第3位なのです!しかし不思議なことに、降水量は伊豆全体が多いのではなく、なぜか天城だけが断トツに多かったのです。一体、なぜでしょう?
 その理由は、伊豆半島が海に突き出しているため、海からの湿った空気が天城連山にぶつかると雨雲ができ、雨や雪が降りやすくなるのです。さらに、天城連山がU字というユニークな形をしているので、海風が東から吹いても、西から吹いても、南からも吹いても山にぶつかり、天城に雨雲を作ってしまうからなのです。

所さんのポイント
ポイント1
天城の降水量は全国3位!
その理由は、天城連山がU字の形をしているために、雨雲が天城に出来やすいからなのだ!


U字形  しかし、なぜ天城連山はユニークなU字の形になっているのでしょう?その理由は、伊豆半島の誕生に秘密がありました。
 もともと伊豆半島は南にあった島で、フィリピン海プレートに乗って少しずつ移動し、今から500万年前、神奈川県の丹沢辺りで日本列島にぶつかりました。そしてさらに伊豆半島は、プレートの影響で本州に押しつけられて、天城連山が真ん中で折れU字のような形になってしまったというわけだったのです。

 そもそも「天城越え」とは、湯ヶ島と河津の間にある、天城連山を越えることを言います。つまり、1000メートル級の天城連山を越える天城越えは、非常に大変なものでした。しかし、なぜそんな高い山をわざわざ越えなくてはならなかったのでしょう?
 実は、今も昔も天城越え以外に、伊豆半島を南北に抜ける道は無かったのです。この秘密も、U字型の天城連山に秘密がありました。実は、山がU字に折れたことで、天城を中心に谷が出来、多くの雨が降ったことでその谷を川が通り、土砂を削ったことで、天城峠を通るたった1本の道が出来たのです。
 さらに伊豆半島の海沿いは切り立った崖が多く、海岸線を通ることもできなかったので、人々は難所でも天城峠を越えるしかなかったのです。

所さんのポイント
ポイント2
天城連山がU字型だったことから、谷に沿って1本の道が出来、これが天城越えのルートとなった。わざわざ天城を越えるのは他に道が無いから!




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