学校
給食
(秘)ソフトめん
第890回 2007年7月8日
子供の頃、毎日学校で食べていた思い出の懐かしい
給食
。今回はそんな給食の美味しさの秘密を徹底科学します。
そもそも学校給食が生まれたのは今から118年前の明治22年、山形県の小学校でお寺の住職が貧しく、お昼が食べられない子供たちに与えた食事が給食の始まりと言われています。その当時のメニューはおにぎりに焼き鮭、漬物の3品でした。そして昭和27年には全国の小学校で給食が実施されるようになりました。
町行く人に給食の思い出のメニューを聞いてみると、3位は、鯨でした。当時、捕鯨が盛んで他の肉よりも安かったため給食によく取り入れられていました。2位は、揚げパンです。実はこの
揚げパンは、給食から生まれた
のです。人気のなかったコッペパンの食べ残しを減らそうと、揚げたパンに砂糖をまぶしたのが始まりで一躍人気メニューに。そして第1位は、ソフト麺でした。
なんとこの
ソフト麺も給食から生まれた発明品
だったのです。ところで
なぜソフト麺は時間が経ってもおいしく食べられる
のでしょうか?その作り方を探ってみました。まずは材料である小麦粉をこね、それを切って麺の状態にします。その後フタをかぶせて
蒸した後に麺を茹で
、1人前ずつパックにして出来上がりです。
蒸さずに茹でたうどん
の場合は、麺の外側が水分を吸収し、真ん中にほどよいコシが残ります。しかし
時間が経つと外側の水分が面の内側へと浸透
していき全体が柔らかくなってしまいます。これがいわゆる麺が
延びた状態
です。一方
ソフト麺は蒸して全体を加熱
することで、小麦粉に含まれるグルテンという成分が麺の中に
網目構造
を作ります。この構造のおかげでゆでた時外側にたまった水分が、
時間がたっても内側に浸透せず延びない
というわけです。
ソフト麺が延びない秘密は、茹でる前に蒸すことでグルテンという成分が網目構造を作り、水分が内側に浸透するのを防ぐからだった!
一度に大量に作る給食。その調理法の秘密を探るべく、矢野さんが一日3000人分の給食を作る給食センターに向かいました。このセンターでは徹底した衛生管理のため、白衣に着替え、マスクと帽子で完全防備しています。さらに細菌検査のため事前に検便までする徹底ぶりです。また、菌の感染が広がらないように、扱う材料によってエプロンを青と黄色で色分けるという工夫がされていました。
センターには直径1.2メートルの700人分作れる巨大な釜や、20キロのジャガイモをわずか2分でむく皮むき機。さらには、500切れもの魚をいっぺんに蒸し焼きにするスチームオーブンなど大量調理に欠かせない機械がたくさんありました。
でも、
プロの料理人が大勢で作った方が美味しく作れるのでは?
ということで、前代未聞の
中華料理人VS給食のプロ大量料理バトル
を行いました。元台湾五つ星ホテルの総料理長率いる5名と、普段給食を作っている3名で対決です。作るメニューは
中華丼と野菜スープを50人分
です。材料は同じで、普段使っている調理器具で作ってもらいます。
調理時間は1時間
。まず、中華料理人チームは5人で一気に野菜を切りはじめ、下ごしらえを終えると一気に調理へと突入しました。一方、給食のプロはいたってマイペース。機械を使い、いつもどおり野菜の洗浄をしています。その頃中華料理人チームは中華丼を完成させましたが、このペースでは間に合わないと残り40人前を一気に作る作戦に変更しました。一方給食のプロはようやく野菜を切り始めましたが、機械を使うためあっという間にカットし、さらに2つの大きな釜を使って中華丼の具の魚介類と野菜を同時に炒め始めたのです。一方、中華料理人チームは味のばらつきを防ぐため、料理長一人だけが鍋を振ります。そして両チームとも見事一時間以内に出来あがりました。
料理を判定するのは30人の小学生たち
です。
出来上がった料理は、給食と同じように1時間かけて子供たちに運び食べてもらいます。赤と青の皿に盛り付け、子供たちにはどっちが作ったかは内緒にして食べてもらいました。結果は、
28対2で給食のプロの圧勝
でした。一体どうしてなのでしょう?感想を聞いてみると、給食のプロの野菜はシャキシャキしていて、中華料理人の野菜はべチャべチャだったと言うのです。実は給食のプロは切り終えた
野菜を20分間冷蔵庫に入れ、野菜の水分をへらし、時間がたってもシャキシャキ感を保つ工夫をしていた
のです。さらに片栗粉を多めに入れ、中華丼のあんを固めにするなど食べるまでの時間を考慮して仕上げていました。一方、中華料理人チームは、いつも出来たてをおいしく食べてもらう調理法なので戸惑ったようでした。
給食は、常に大量に作る給食のプロによって、時間の経過を計算するなど、様々な工夫がされた調理法で作られるから美味しかったのだ!
さて、
給食は、みんなで一緒に楽しく食べるからおいしいのでは?
という仮説を検証すべく実験してみました。片方のクラスには全員前を向いて会話をせずに食べてもらい、一方隣のクラスにはグループごとに一緒に食べる普段どおりのスタイルで食べてもらい、どちらが給食を残す量が多いか比較してみました。実験終了後、残した量を比べると、なんと
黙って食べたクラスの方が残した量が多かった
のです。理由を聞いてみると話をしないと味が違う、悲しい、とのことでした。念のためもう一度食べ方を入れ替えて実験してみても同じ結果でした。楽しく会話しながら食べると自然と食事の量も進むようでした。