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驚き自宅で(秘)石油作り
第919回 2008年2月3日


 最近、世界中で記録的な高値を続けている、ガソリン。今回は私達に最も身近な石油製品ガソリンを科学で徹底解明します。

 そもそもガソリンとは何なのでしょう?矢野さんは秋田県の由利原油ガス田に向かいました。ここは日本の数少ない油田で一日およそ300kリットルの原油を生産しています。この油田から採れた原油を見せてもらうと、ツーンという臭いのしない真っ黒な液体でした。この原油は石油精製施設に集められ、製油されます
  原油から作られる主な油は、自動車の燃料となるガソリン、ストーブなどの燃料灯油、飛行機の燃料となるジェット燃料、ディーゼルエンジンで走る大型車の燃料の軽油、フェリーなど大型船舶の燃料である重油です。これらの違いを確かめるためにこんな実験を行いました。題して「油―1グランプ 圧倒的にガソリン1着 リ!」5種類の油を同じ量だけしみ込ませた5メートルのロープを並べ、片側に同時に着火し、炎が走るスピードを競います。一斉着火のスタートと同時に、ガソリンが凄い勢いで一気にゴール!その間わずか3秒でした。しかし、ガソリンが燃えすぎたため実験は終了、それまでの順位を見てみると2着は灯油、3着はジェット燃料。後はわずかの差で軽油が4着で、5着の重油はほぼ進んでいないという結果になりました。

 なぜ同じ石油から作られたのにこんなに差がでるのでしょうか?その差は、それぞれの油の『引火点』の違いにあるとのこと。そこでガソリンと灯油を屋外に放置し様子を見てみました。すると、ガソリンの液面から空中に何かモヤモヤと出ていました。これは液体のガソリンが気化している状態で、このモヤモヤの所に炎を近づけてみると一瞬にして引火したのです。一方の灯油は気化している様子もなく、炎を近づけても引火しませんでした。この違いが引火点の違いなのです。
 そもそも油は、液体そのものに火が付くのでなく、ある一定の温度を超え、油が液体から気体に変化しガス状になった時、引火して燃えるのです。この油が気化する温度が『引火点』と呼ばれるものです。ガソリンがダントツに早かったのもガソリンが火を付ける前から気化し、ロープの回りでガスの帯を作っていたからなのです。 ガソリンの引火点は−45℃と特に低く、最下位だった重油の引火点は70℃〜150℃。実験の順位は、引火点の低い順番と同じだったのです。

所さんのポイント
ポイント1
油がある一定の温度を超え、液体から気体に気化する温度を引火点という。ガソリンはこの引火点特に低いため火がつきやすいのだ。

 では、ガソリンとその他の油の違いはどこにあるのでしょう?そこで、最も火がつきやすいガソリンと、最も火がつきにくい重油を同じ量、2mlずつ燃やし水温が何度上昇するか比べてみます。するとガソリンは0.69℃、一方の重油は2.5倍以上の1.83℃も上昇したのです。実は、油を燃やすと、油の中の炭素と酸素が結びつき、一定の熱が発生します。ガソリンに比べ2〜3倍の炭素数を含む重油は酸素と多く結びつきより大きな熱量を産み出すのです。このようにガソリンは熱量が小さいものの、引火点が低く火がつきやすいため、スムーズな反応が必要な自動車のエンジンなどに向きます。それに対して、重油はなかなか火がつきませんが、熱量が大きいため、パワーが必要な大型船などのエンジンに向いているのです。

 さて、軽油に似た油を作り出す『藻』が発見されたという驚きの情報を聞き、矢野さんは海洋バイオテクノロジー研究所を訪れました。光合成する時に体内で油を作るというその藻とは、『シュードコリシスティス』といって単細胞の藻類で大きさはわずか200分の1ミリです。なんとこの藻は偶然に温泉で発見されたそうです。温泉は水温が高く、強酸性や強アルカリ性などの特殊な環境のため、そこで生き抜くために軽油を作るという変わった能力を身につけたと考えられますが、まだ詳しいことはわかっていません。
 早速この藻を増やして軽油を作ろうとしましたが、藻を増やすには水温調整など、昼夜を通しての管理が必要だそうです。そこで、番組ADの自宅アパートの浴槽を使い、10日間24時間態勢で藻を繁殖させることにしました。熱帯魚用の強力なライトやヒーターなどをセットし準備完了。3時間おきに、光が藻にまんべんなく行き届くよう水をかき混ぜます。すると日が経つにつれて浴槽の水は緑色になっていきました。そしてついに10日間後、藻で緑色に濁った水65リットルをタンクに詰め回収。研究所へ持ち込み、何度も作業を繰り返し、藻から油を抽出してもらいました。その結果、わずか30ml、大さじ2杯分ですが、大変貴重な油ができました。
 この油を使いなんとか車を動かしたい!ということで、少量の軽油でも動かせる車があるという大学車が走ったところ。へ向かいました。実験に使うのはバイオディーゼル燃料の研究のため、燃料タンクを改造したレーシングカートです。燃料タンクに藻から作った軽油を慎重に入れると、見事エンジンがかかりました!さらにアクセルを踏むと、車が動きだしました!なんとこの藻からできた軽油30mlで50mを4往復。トータル400m以上走ることが出来ました!1リットル当たりに換算するとおよそ13kmも走ったことになります。実験は見事に大成功でした。

所さんのポイント
ポイント2
シュードコリシスティスという藻が体内で作った油は、軽油に限りなく近い性質で、ディーゼル車を走らせることもできるのだ!




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