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美味アン肝VSマグロ肝
第918回 2008年1月27日


 まだまだ寒いこの時期はやっぱりお鍋!中でも冬の定番アンコウ鍋の主役といえば高級魚のアンコウ。しかし、アンコウは謎がいっぱいの怪魚だったのです!

 矢野さんはアンコウに出会うため、茨城県日立市に向かいアンコウを獲っているという船に乗せてもらいました。漁場に到着し、網を海に入れたまま2時間船を走らせ、網を引き上げると、色々な種類の魚がかかっていましたが、アンコウの姿はありませんでした。聞けば、なんとアンコウだけを狙ったアンコウ漁というのはないのだそうです。実は、海の底に住むアンコウは群れではなく常に単独で生活しているためアンコウだけを狙うのは難しいそうです。そこで、根獲という底引き網で海底に棲む魚を根こそぎ捕まえる漁法で、運よくアンコウが入るのを待つしかないのです。そして出港から12時間後、ようやく最後の網に大小2匹のアンコウがひっかかりました。しかし今回の捕獲はこれだけ。つまりアンコウは簡単に獲れないので高級魚だったのです。

 そして獲れたてのアンコウをさばいてもらおうと、アンコウ料理の名店にお願いすると、料理長はいきなり天井からぶら下がるチェーンにアンコウを吊るしたのです。実は、まな板の上にアンコウを乗せるとヌルヌルして滑るので、伝統的に行われているのがこの吊るし切りなのです。吊るしたアンコウの口から大量の水を入れその重みでアンコウの体を安定させ、口の方から一気に皮を剥がすと、アンコウはわずか3分で口の骨と背骨だけになってしまいました。バラバラになった皮や肝、胃などのパーツは「アンコウの七つ道具」と呼ばれ、どれも美味しく捨てる所がないのだそうです。

 さて、矢野さんはなんと深海魚であるアンコウが泳ぐ貴重な姿が見られるという大洗水族館へ向かいました。しかし、水槽のアンコウは砂と体の表面を同じ色にしていたため、なかなか発見できませんでした。これは擬態と言って、体の色を海底の色に同化させることができる特殊な能力なのです。しかしなぜこんなことをするのでしょう?そこで水槽にエサの魚を入れてみました、すると、アンコウは擬態に気付かず魚が寄ってくると、頭に付いた突起をチラチラと振り始めました。これは背びれの一部が変化したエスカというものだそうです。そして、この疑餌にひかれて魚がさらに近付いた瞬間、一瞬で周りの水ごと魚を飲み込んだのです。その間わずか0.1秒。どうしてこんなスピードが出せるのでしょう?その秘密は口の周りについている筋肉であるほほ肉にあったのです。試しにタイのほほ肉と比較してみると、タイのほほ肉は60gなのに対し、アンコウのほほ肉は202gと実に3倍以上でした。これをそれぞれの全身の筋肉に占める割合で比べると、タイのほほ肉はわずか2%なのにアンコウは11%もあったのです。つまり、アンコウは多くの筋肉をほほ肉に集中させ、エサを飲み込む驚きのスピードを生み出していたのです。

所さんのポイント
ポイント1
アンコウは擬態で海底の色に体を同化させ、筋肉の発達したほほ肉を使って、近付いてきた魚を一瞬で飲みこんでしまうのだ!

アンコウの産卵  ところで、深海魚のアンコウも産卵の時には海面に上がってきます。その貴重な映像を見ると、アンコウの卵は美しい天女の羽衣のような形をしていました。

 実は、アンコウの卵はカエルの卵のようにゼリーに包まれていて、外的から卵を守っているのです。卵から孵ったアンコウの稚魚は、最初は普通の魚のような姿で、海面近くで生活していますが、半年を過ぎると扁平な形へと変化して深海での生活を始めるのです。

 さて、お酒のつまみにピッタリのアン肝ですが、なぜアンコウの肝があって他の魚の肝は食べないのでしょうか?高級魚のタイや魚の王様マグロの肝だったら絶対美味しいはず!と、肝の味比べ対決を行いました。しかし、タイの肝は簡単に取り出せましたが、マグロの肝は、マグロが傷むのを避けるため、内臓は獲ってすぐ取り出されるので築地では手に入りません。そこで青森県へ向かい新鮮で最高級の大間のマグロの肝を手に入れました。そしてタイ肝とマグロ肝をアン肝と同じ要領で調理してもらい、料理人を目指す学生さん5人に味見をしてもらいました。すると、なんと全員アン肝が美味しいと答えたのです。タイの肝やマグロの肝はパサパサしていて、やはりアンコウが一番濃厚で食べ易いそうです。そこで、それぞれの肝の脂肪分を比較してみると、アンコウの肝は40%、タイは2%、マグロは3%とアン肝の脂肪分がダントツで多かったのです。実は、エサの少ない深海にすむアンコウはエサを食べると栄養を脂肪にして肝臓に蓄え少しずつ使いながら生活します。だからアン肝は濃厚で美味しく「海のフォアグラ」と呼ばれるのです。

所さんのポイント
ポイント2
アンコウはエサの少ない深海で生活しているため、食べたエサの栄養を脂肪にして肝臓へ蓄える!だからアン肝は濃厚で美味しいのだ!

 さて、捨てるところがないアンコウですが、それでも残ってしまうのが口の骨です。とがった歯を触ってみると、歯が口の内側に向かって倒れているのに、外側には歯が倒れない不思議な仕組みになっています。これはアンコウが一度飲み込んだ魚を逃がさないようにするための工夫です。これを使って何か作れないのか考え、アンコウの貯金箱を思いつきました。この歯の仕組みを使えば、「安子ちゃん」全体像歯にひっかかってお金を盗むことは出来ないはず。粘土で陶芸家の方にアンコウの形を作ってもらい、釜で約20時間焼き、臭いを取った歯をつけて、ついにお金の盗難防止に役立つ「安全・安心の安子(あんこ)ちゃん」が完成しました。泥棒役の矢野さんが貯金箱の口に手を入れましたが、やはり取り出すときに手が歯に引っかかって盗難は失敗!所さんもアンコウの歯を活かした安全貯金箱の出来ばえに大喜びでした。




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