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浴衣(秘)着崩れない方法
第1040回 2010年6月26日


 夏の楽しみ、花火大会やお祭りに定番のファッションといえば浴衣ですよね!最近は手頃な価格で販売され、若者にも大人気!そこで今回は、日本人なら知っておきたい、浴衣の秘密を科学で解明します。

 浴衣といえば、かつては伝統的な藍染めの紺色が一般的でしたが、最近の若者には色鮮やかで派手な柄の浴衣が人気のようです。柄実験(昼間)赤の浴衣32mでは、カラフルな浴衣はどれだけ柄が鮮やかにみえるのでしょうか?そこでこんな実験!派手な赤の浴衣と伝統の紺色の浴衣を用意し、柄の代わりに、背中に白い視力検査のマークを貼付けます。そして、被験者から徐々に離れていき、どこまでマークの向きが認識できるか距離を比べます。すると…男性3人で実験した結果、赤い浴衣の平均は30.6mで紺の浴衣の平均は29.3mと、わずか1.3mの差。鮮やかな赤の浴衣は、必ずしも柄が目立つとはいえない結果になりました。

 でも、浴衣といえば花火大会など夜に着る機会が多いので、夜は赤が目立つのでは?ということで、今度は夜に、2m間隔で電灯がある場所で、昼間と同じように実験すると…3人の平均は、赤の浴衣は14.5m、紺は17.5mと、夜は紺の浴衣の方が3mも記録が伸び、柄が目立つという意外な結果になりました。一体なぜでしょう?色彩の専門家に伺うと、これはプルキニエ現象と呼ばれ、暗くなったことで波長の短い青が見えやすくなったと考えられるそうです。実は、人間の目の網膜には、暗い時に働く桿体(かんたい)細胞があり、この細胞は青など波長の短い光に対する感度が高いので、人の目は暗くなるほど青色に敏感になるのです。だから夜は赤よりも紺の浴衣の柄がくっきり見えたんですね。例えば、道路標識には青色が多いですよね。最近では他にも街灯や、夜に着ることが多いパーティードレスも、夜に明るく見える青色のものが増えているそうです。

所さんのポイント
ポイント1
人間の目は暗くなると波長の短い青色に敏感になるため、夜は赤い浴衣よりも紺の浴衣の方が、柄は目立つのだ!

 さて、浴衣の最大の弱点といえば、着崩れ!そこで、浴衣はどれだけはだけやすいのか実験です!普段あまり浴衣を着ないという20代の若者8人に専門家の着付けできっちりと浴衣を着てもらいます。そして、あわせ部分に目印の赤いテープを貼り、フォークダンスと盆踊りでどれだけ着崩れに差が出るのかを検証します。まずはフォークダンスを踊ってもらい、4分後にチェックしてみると、軽いダンスなのに、ほとんどの人の浴衣がはだけて、平均で襟は2cm、裾は5cmも開いていました。続いては、着付け直して盆踊りに挑戦!そして4分後、皆さんの浴衣をチェックしてみると…なんと全員、襟も裾も赤いテープはほとんど見えず、着崩れは少なかったのです。さて、同じく浴衣の着崩れと言えば、旅館などで浴衣を着て寝た場合、朝起きたら裸同然に…なんて経験ありますよね。そこで、浴衣で寝るとなぜ着崩れるのか検証しました。男性2人に、浴衣の帯をしっかり締め、前の実験と同じように、合わせ部分に目印をつけ眠ってもらいます。翌朝、部屋に入ってみると、2人の浴衣は見事にはだけ、赤いテープもばっちり出ていました。シーツ姿で振り返る男性2人そこで、寝ている様子を見てみると、それぞれ6時間で15回以上も寝返りをうち、その時に生まれる上半身と下半身のねじれによって、帯が緩んだり、中の浴衣が巻き込まれたりしてはだけていたのです。ならば、寝返りの時に体をねじらなければ着崩れないのでは?ということで、別の男性2人の体をシーツでくるみ、さらにガムテープで身体がねじれないようしっかりと固定した上から浴衣を着てもらい、調査開始!

 すると…男性は、体をねじることなく真っ直ぐなまま寝返りをうち、翌朝もほとんど着崩れしていませんでした。つまり、体をねじらなければ着崩れは起こらないのです。実は、先程のダンスでも同じことが起こっていました。フォークダンスでは上半身は手を繋いだまま動いていませんが、下半身だけが左右に動き、ねじれが発生。一方、盆踊りでは、同じ側の手と足が同時に前に出て、ねじれが起こらないため、着崩れも起こりにくかったのです。つまり、浴衣や着物で踊る盆踊りは着崩れが起こりにくい振り付けになっているのです。そこで、スタジオで実験!矢野さんがあわせ部分に印をつけた浴衣を着て、スタジオを5周普通に歩いてみると…襟は1.5cm、裾は3cmも着崩れしてしまいました。普通に歩くだけでも、手と足が交互に前に出るため、ねじれてしまうのです。しかし、同じ側の手と足を一緒に前に出す「ナンバ歩き」という歩き方で5周歩いてもらうと…今度は着崩れの幅が少なくなったのです。実は、日本人が浴衣や着物を着ていた江戸時代の頃は、この「ナンバ歩き」をしていたという説があるそうです。他にも、時代劇などでお侍さんは上半身をあまり動かさず、ササーッと走っていますよね。これから浴衣を着る方は、身体をあまりねじらない動きや歩き方を意識すると良いかもしれません。

所さんのポイント
ポイント2
浴衣は身体がねじれるとはだけてしまう!着崩れさせないためには、同じ側の手と足を同時に前に出す歩き方が有効なのだ!




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