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なぜ?ラーメンが好き
第1152回 2012年11月10日


 日本人が大好きな食べ物と言えばラーメン!全国のラーメン店の数はおよそ3万4千軒と、そば・うどん店の合計3万3千軒を上回り、即席麺の年間生産量は55億食と、まさに国民食!でも何でこれほど日本人はラーメンが好きなのか?実はラーメンには思わずヤミツキになってしまう不思議な魔力があったんです!そこで今回はラーメンを徹底検証します!

①ラーメンに惹かれる理由…スープの秘密とは?
 ラーメンの何が一番好きか街で聞いてみると「スープが大事」と答える人が多数いました。そこでしょう油ラーメン、塩ラーメン、味噌ラーメンの有名店で「スープの味を左右するのは何か」を調査しました。しょう油ラーメンの人気店「ラーメン大至」では、最も味を左右するのは「昆布ダシと鶏から出る油」とのこと。塩ラーメンの人気店「天神下大喜」は、「大量の昆布でとるダシと鶏の油」といいます。味噌専門店「ど・みそ」でもやはり「昆布ダシと鶏や豚から出る油」がスープの決め手とのこと。しょう油、塩、味噌と味は変わっても「昆布ダシと油」がかかせないようです。ならばラーメンスープに昆布と油がなかったら一体どうなってしまうのか?取材した各店に「店で出しているスープ」、「昆布を抜いたスープ」、「油を抜いたスープ」を作ってもらい、ラーメン博物館で10人のお客さんに飲み比べてもらいました。まずは、塩ラーメンのスープでどれが一番おいしかったか聞くと…全員が「昆布と油入りのスープ」を支持。同様にしょう油、味噌ラーメンのスープで試すとやはり「昆布と油が入ったスープ」の圧勝。
 「昆布抜きスープ」の味はみなさん「薄い」「コクがない」と言うのです。東京家政学院大学・健康栄養学科の國井大輔講師によると、味が薄いのは「昆布を抜いたことでスープの中の旨み成分、グルタミン酸が減ってしまった」せいなんだとか。昆布入りと、昆布抜きスープのグルタミン酸の量を測ってみると…昆布入りは昆布抜きのおよそ3倍も、うま味成分のグルタミン酸が含まれていたのです。一方「油抜きスープ」は「塩気が濃すぎて、しょっぱい」という意見が多数。國井先生によると「ラーメンスープのだしは、長時間煮込むので、うま味だけでなくエグミや雑味も出てくる。それがしょっぱさの元だが、スープの油があると味覚細胞がコーティングされ、刺激を穏やかにし、まろやかな味にする」のだそうです。だから油抜きスープは、濃い・しょぱいと感じたのです。

脳波を計りながら、昆布油入りスープを飲む  さらに「昆布ダシや油」をおいしいと感じている時、脳がどんな反応をしているのか、諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授の協力で脳波を測定しました。すると「昆布ダシと油入りのスープ」を飲んだ時は、脳の「味覚野」が赤くなり、活性化していましたが、「ダシと油を抜いたスープ」を飲むと味覚野はあまり反応しませんでした。何がおきていたのでしょうか。
 篠原教授によると「味覚野が活性化したのは、昆布ダシと油入りのスープを飲んだ時に脳から快楽物質が出た」ためであり、快楽物質が出たのは「タンパク質を作るのに必要なうま味の成分中のアミノ酸とエネルギーの補給源として大切な油という、命にかかわる重要な栄養分を摂ったから」なのだそうです。つまり昆布ダシと油には、脳に幸せを感じさせる効果があったのです!
 脳はこの快楽体験を記憶しているので、昆布ダシや油が入っているラーメンを「また食べたい」と感じてしまい、ついヤミツキになってしまうのかもしれません。

所さんのポイント
ポイント1
グルタミン酸たっぷり昆布ダシと、様々な刺激を穏やかにする油の最強コンビで、脳に快楽物質が出るからラーメンはヤミツキになるのだ!

②即席麺にコシを生む!?秘密の粉とは?
 「即席麺はコシがない」と感じる人が多いようですが、なんとか即席麺にコシを出す方法はないか?プロに聞いてみると「コシの決め手は水分を払う湯切りにある」と言います。そこでラーメン屋さんに即席麺を湯切りをしてもらい、主婦が普通に作った麺と一緒にお客さんに食べ比べてもらいました。すると意外にも「大きな違いは感じない」との感想。なぜ湯切りをしても麺にコシが出なかったのか?
麺MRI「2画面比較」  食品学に詳しい鎌倉女子大学の成瀬宇平名誉教授によると「そもそも生麺と即席麺では構造と水分含有量が違うので湯切りしてもダメ」というのです。茹でた麺の断面を食品用MRIで見てみると…生麺の芯は水分量が少なくコシがある状態なのに対し、即席麺は中心まで水分が入りこんでいました。
 即席麺は保存のため油で揚げたり乾燥させて作られ、麺に無数の小さな穴が開いているので、茹でるとその穴に水分が入り込んでコシがでないというのです。しかし成瀬宇平先生によると「ある粉を使えば即席麺でもコシの強い麺にできる」とのこと。
 その粉をもらって即席麺を茹で、讃岐うどん人気店のうどん職人・長谷沼さん、自家製のパスタにこだわるイタリアンの中口シェフ、多くの人気ラーメン店御用達の製麺所のこだわり職人にしてプロレスラーの負死鳥カラスの3人に、食べてもらいました。すると3人とも、粉を入れた即席麺は「硬さの部分もシャッキリ」「真ん中にもちっとした生パスタに似たような食感」「明らかに麺に違いがある」と、麺にコシを感じたというのです。念のため麺の弾力を測定すると…粉を入れた麺の弾力は入れない場合のおよそ1・4倍!その粉の正体とは、「重曹」でした。麺の弾力を生んでいるのは小麦粉のグルテンと呼ばれる成分で、網目のような構造をしています。重曹はこの網目の中により細かい網目をつくり、弾力を増す効果があって、コシが生まれるのです。重曹の量はお湯500mlに対し約3g、ただし苦くなってしまうので、スープは別のお湯で作るのがポイント。

所さんのポイント
ポイント2
即席麺に重曹を少し入れるだけで、弾力が増してコシがでるのだ!

③何でお酒を飲んだあとはラーメンが食べたくなるのか?
 お酒を飲むとシメにラーメンが食べたくなる理由を、横浜市立大学病院・消化器内科の中島敦教授に聞いてみると、「お酒を飲むと肝臓でアルコールを分解し多量に血糖が使われてしまうので、血糖を補うために脳から炭水化物を摂るように指令が出て、食欲が出てくる」というのです。しかし炭水化物ならラーメンじゃなくてもいいのでは?そこで男女8人に、飲み放題でたっぷり飲んでからカラオケで盛り上がってもらい、帰りがけに「シメに食べたい料理」を自由に書いてもらいました。すると8人中7人がラーメンと回答。なぜラーメンを選んだのか聞いてみると「汁気のあるものがいい」と言うのです。
 中島教授によれば「アルコールを摂ると利尿作用で水分が失われ、炭水化物の中でも汁気の多いラーメンを選んだのではないか」といいます。また、炭水化物で同じ汁気の多いそば・うどんよりラーメンが選ばれるのは、お酒を飲むと血糖値が下がって空腹感を感じるため、満腹感を得やすい脂質を含むラーメンを選ぶ人が多いからなのだそうです。



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