知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


50℃洗い vs 干し野菜
第1153回 2012年11月17日


 「収穫の秋」 まっさかり、野菜がとってもおいしい季節!しかし街で聞いてみると、野菜は傷むのが早く保存が難しいという悩みの声が…。そこで今回は、50℃のお湯につけるだけで、しなびた野菜がアッという間に蘇ると話題の50℃洗い、そして長く保存ができて風味も良いと評判の干し野菜を大特集。「旬の野菜を100倍美味しく食べられる方法」を科学します。

①伝統の野菜保存方法とは?
 「野菜の保存はとても難しい」という方が多いので、主婦歴6年の女性がどんな風に保存するかウォッチングです。10種類の新鮮な野菜を渡し「普段通りに保存して下さい」とお願い。すると、ほうれん草、大根、白菜はそのまま冷蔵庫へ。芋類はシンク下へと保存したのですが…1週間後、再びお宅を訪問すると…ほうれん草は痛んで変色。白菜はシナシナ。大根は断面が黒ずみ、シンク下に入れた里芋にはカビまで。ちゃんと保存できたのは10種類中たった4種類でした。では、主婦歴54年、80歳の超ベテラン主婦なら、同じ10種類の野菜を上手に保存できるでしょうか?べテラン主婦が一週間保存した野菜を見せてもらうと…ほうれん草はハリがあり、大根は断面がみずみずしく、里芋もかびていません。なんと10種類の野菜、全部の保存に成功。一体どうやって保存したのでしょう?

 さっそくベテラン主婦の技を見せて頂くと?ほうれん草はキッチンペーパーで巻いて根元を水で濡らし、さらに霧吹きで水分をしっかりと補給して、新聞紙に包み冷蔵庫へ。ほうれん草は接地面から傷みやすくなるので、接地面を少なくするため立てて保存するのがポイントです。白菜は芯を抜き、その穴に濡らしたキッチンペーパーを詰めることで水分補給させると、みずみずしい状態が続くんだそうです。これも新聞紙で巻いて、冷蔵庫ではなく風通しがよい廊下に保存。ちなみに、風通しがよい場所に保存するのがいいのは里芋も同じ。ついつい保存場所にしがちなシンク下は、温度変化が大きく湿気が高いため、細菌が繁殖しやすいので保存場所にはよくありません。さらに、大根は葉を切って、乾燥しないよう切り口をラップで巻いて、新聞紙でくるみます。葉を切らないと成長した葉が大根の水分や養分を吸い上げてしまい、味が落ちてしまうんだそうです。いずれも「野菜は生きていると」言う前提で、水分をたっぷり与え、丁寧に保存する事が長持ちする秘訣だったんです!一口に野菜を保存するといっても、けっこう手間がかかるものですね。そんな野菜がしおれてしまったときに、まるで獲れたてのように蘇らせてしまえる方法として注目を浴びているのが、「50℃洗い」なのです。

②50℃洗いで野菜が蘇る!?
 50℃洗いは、「しなびた野菜を50℃のお湯で洗うと、獲れたてのように美味しくなる」ということで、今年の流行語にもノミネートされた話題の洗いかた。でも野菜は水で洗うのが常識。50℃という熱いお湯で洗って、本当に蘇るのでしょうか?さっそく実験です!まず、スーパーで買って冷蔵庫で3日間保存し、すっかりしなびたレタスを半分に切ります。「50℃のお湯」と「常温の水」にそれぞれ1分間つけます。比較のため産地が同じで、「その日の朝に獲れたレタス」も用意。見た目に左右されないようアイマスクを着用してもらい、街頭で3つのレタスを食べ比べ最もおいしいレタスを選んでもらいます。すると、その日の朝に獲れたレタスでなく、50℃洗いを選ぶ人が続出!「シャリシャリ感がちがう」と大人気で、20人に聞いた結果、半数以上が「50℃で洗ったレタスが一番美味しい」と答えたんです。なぜ、50℃で洗うと野菜がみずみずしく蘇るのか?マイクロスコープで覗いた葉「赤い筋あり、なし」茨城大学農学部、佐藤達雄准教に伺うと「レタスをお湯に漬けると軽い火傷のような状態になり、細胞壁の形が変わったり細胞膜の一部が壊れ、そこから細胞に水が入りやすくなって葉がパリッとした状態になった」と言うのです。50℃で洗うと野菜が水をたくさん吸収すると言うのは本当なのか、実験です。しなびたレタスを食紅で染色した「50℃のお湯」と、「常温の水」に入れ、1分後、水から出してマイクロスコープで見てみると、常温の方は葉に変わった様子はありませんが50℃の方は、葉の中に赤いスジが!!確かに、食紅をつけた水分をたっぷりと吸収しているのが分かりました。

 電子顕微鏡で表面の細胞を見てみると・・水の方は綺麗に細胞の形が整っているのに、50℃洗いの方は細胞を包む細胞壁などの一部が壊れていて、ここから水が入ったのがよく分かります。ちなみに、もっと熱い60℃のお湯にレタスをつけると、細胞自体が溶けて死んでしまうので水は細胞に入らないそうです。ただし、50℃で洗うと細胞がダメージを受ける分、傷むのも早いので、50℃洗いしたら保存しないで早めに食べるようにしてくださいね!

所さんのポイント
ポイント1
レタスを50℃洗いすると、火傷状態になった細胞から水分がたっぷり吸収され、パリッと美味しくなるのだ!

③大人気の干し野菜とは?
 最近主婦の皆さんがよくやっているというのが、余った野菜を干して保存するという「干し野菜」なのですが、失敗した経験のある方も多い様子です。そこで、どんな野菜でも干すとおいしくなるのか!?24種類の野菜で目がテンが大実験してみます。協力してもらったのは落花生を干して33年!天日干しの達人・生形(うぶかた)健一さん。干しやすいように薄くカットした野菜を、達人の指導のもと並べて行きます。24種類の野菜達を丸3日間、太陽が照りつける1日8時間干しまくり!そして3日がたち、早速チェックへ。24種類の野菜ニンジンは元のオレンジより赤みがかって、甘みが増していました。カボチャもいい味に!干し野菜は味が凝縮するので、旨味が増すようです。結果24種類中19種類が干す事でおいしく食べられました!! ピーマン、ニンジン、セロリ、カボチャ、キュウリ、キャベツ、レタスは、そのまま食べても美味しい干し野菜に!カイワレ、モヤシ、ニンニク、ナス、タマネギ、サツマイモ、ネギ、ゴボウ、ハクサイ、ほうれん草、水菜は、調理をすれば美味しく食べられる干し野菜になりました。スタジオで、実際に食べてみた所さんも、その美味しさを絶賛!

 しかし・・白く綺麗だったジャガイモは真っ黒になり、失敗! レンコンも黒くなって失敗です。トマトもカビて異臭が・・。水分の多い野菜は腐りやすく干すのが難しいようで、冬瓜もダメ。脂の多いアボカドも真っ黒に腐って失敗でした。実は、ジャガイモやレンコンなどは、スライスした事によって出来た傷口をふさごうとして表面を黒く変色させてしまいます。この自己防衛反応でできた「カサブタ」のような変色部分が表面をフタし、水分が抜けにくくなるのでうまく干されません。結果、腐ってダメになってしまったわけです。今回の実験では、24種類中、ジャガイモ、レンコン、トウガン、トマト、アボカドの5種類の野菜は、干し野菜にむかないことが判明しました。

 ここで意外な発見が!ピーマンを食べてみると・・なんと生で食べると苦いピーマンが、干すと苦くなくなったのです。そこで実験!ピーマン嫌いの子供たち8人が、干しピーマンを食べられるのかに挑戦。すると・・「おいしい。苦いのがない」と言う声が続出!ピーマン嫌いの8人全員が干しピーマンを食べる事ができたんです。

 一体なぜなのか?お茶の水女子大学、生活科学部の森光康次郎准教授によると、「ピーマンの苦みは香り成分の、ピラジンと味の成分が重なって感じるのですが、干す事により、ピラジンが揮発して消え、苦みが感じなくなった」というのです。他にもネギやニンニクなどにおいの強い野菜もほとんどくさみが消え、食べやすくなったんです。人気の干し野菜、味が凝縮するだけではなく意外な効果もあったんですね。奥の深―い、野菜を美味しく食べる方法でした。

所さんのポイント
ポイント2
水分多めの野菜は干し野菜に向かないけれど、ピーマンは苦味が消えて子供にもオススメなのだ!




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