知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


駅弁 の科学
第1268回 2015年3月22日


 列車旅行の楽しみといえば・・・駅弁!その土地の名物料理や地元の食材を使った駅弁は旅の気分を一層盛り上げてくれますよね。
 今や駅弁は定番から新作を含めその数2000種類以上!なぜ、これほど駅弁は人気なのか?そこに驚きの共通点がありました!
 そこで今回の目がテンは、旅のお供、人気駅弁を科学します!

①全国の名物駅弁が出品!駅弁大会が人気の理由とは?

 全国各地で行われている駅弁大会!デパートやスーパーマーケットに全国各地の駅弁が集まる大人気のイベント。特に有名なのが、東京新宿の百貨店で毎年1月に行われる駅弁大会。およそ2週間の期間中で出品される駅弁の数は300種類以上もあり、売り上げは6億円以上!そんな大会で人気の駅弁が、ブランド牛・飛騨牛のローストビーフが乗った岐阜県、高山駅の駅弁『飛騨牛しぐれ寿司』。あふれんばかりのうにがぎっしり乗った岩手県一ノ関駅の『平泉うにごはん』。さらに売り上げ個数ランキング、10年連続トップ10入り!北海道、厚岸駅の『氏家かきめし』などなど。
 それにしてもなぜ、こんなに駅弁大会は人気なのでしょうか?20人の方に聞いたところ、そのうちの16人が行ったことのない土地の駅弁を食べたいからと答えたんです!なぜなんでしょうか?
 人の行動心理を研究している、東北大学・坂井信之教授に聞いてみると…「行ったところのない駅弁を買うというのは、旅行などに行くときの計画を立てているときことと同じ。一番楽しいですよね。駅弁を食べるというのは、バーチャルな旅行の一つのような感じになると思うので、楽しい部分だけを持っているようなものになる」とのこと。確かに、旅行雑誌を見たり、計画を立てている時は良いことばかり考えて楽しいですよね。

所さんのポイント
ポイント1
駅弁大会は、「美味しいお弁当」と「旅に行く前のワクワク感」を味わうことができるイベントだったのだ!

②全国各地の人気駅弁"意外な共通点"とは?

 駅弁大会で人気の駅弁を見ていると、あることに気が付きました。
 今回、出品されていた103種類の駅弁を調べたところ、なんと白いご飯が見えていたのは1種類だけ。残り102種類はすべて白いご飯が見えない盛り付けだったんです!この白いご飯が見えないという共通点、駅弁の人気と何か関係があるのでしょうか。そこで、脳科学の専門家である、諏訪東京理科大学・篠原菊紀教授に協力してもらい実験を行います。
 用意したのは番組オリジナルの白いご飯が見えない駅弁スタイルのお弁当。そして、同じ具材、同じ分量で作った、白いご飯がはっきりと見える幕の内スタイルのお弁当も作成。この2パターンのお弁当を全部で5種類、用意しました。これらのお弁当の写真を7秒間ずつランダムに見せ白いご飯が見えない時、見える時の脳の反応を測定します。果たしてどのような反応が見られるのでしょうか?
 まずは、白いご飯が見える幕の内スタイルのお弁当の脳波。全体的に青く、脳があまり反応していません。続いて、白いご飯が見えない駅弁スタイルのお弁当を見せると・・・先ほどとは一転、脳の一部分が赤く反応したんです。二つの違いは明らか。一体どういうことなのでしょうか。篠原教授に聞いてみると…「前頭葉を中心に脳の活動が高くなっています。感情とか心が動くと前頭葉の下側の活動が高くなりやすい、気持ちが大きく動いている、白いご飯が見えないほうが心が動いていることだろうと思う」とのこと。同じ実験を合計5人に行ったところ、4人が白いご飯が見えないお弁当に強く反応。白いご飯が見えるお弁当よりも見えない方が心が動く、それはなぜなんでしょうか。人の行動心理を研究している、東北大学・坂井信之教授に聞いてみると…「白いご飯は"日常"のご飯、という感じですが、ご飯の上に何かが乗っていると、パッと一目見て、あ、いつもと違うっていう気分になれます。この非日常性をよくアピールできるのが、ご飯の部分。日常のストレスから解放されたいっていう気持ちが、旅行に行きたい!パッと一目見て、オッと思えるのがご飯の部分。駅弁っていうのはそういう効果がある」と解説。

所さんのポイント
ポイント2
白いご飯が見えないと"非日常"を感じ、ワクワクするのだ!

③売り上げナンバー1の駅弁!牛肉がやわらかい秘密とは?

 やってきたのは東京駅構内にある駅弁専門のお店。北は北海道から南は九州鹿児島県の駅弁まで全国各地の人気駅弁を170種類以上も取り揃えているんです!連日多くのお客さんで賑わうこのお店の駅弁、売り上げベスト3を見てみると…第3位は、仙台駅の「極撰炭火焼き牛たん弁当」。ヒモを引くだけで容器が温まり、ホッカホカの牛タンを味わうことができるんです!
 第2位は、不動の人気を誇る、北海道森駅の「いかめし」。丸ごとのイカにお米をつめて甘辛のタレでじっくり炊き上げた大人気の駅弁。
 そして売り上げナンバー1の駅弁は、米沢駅の「牛肉どまん中」。特製のタレで味付けした牛肉と牛そぼろを山形県産のお米にたっぷりのせた牛丼風の駅弁。リピーターも多く、お店に並ぶとすぐに手が伸びるほどの人気ぶり!食べたことがあるお客さんにその魅力を聞いてみると…皆さん口を揃えて言うのが「肉がやわらかい」ということ。
 でも、お弁当の牛肉って冷めると硬くなるイメージありませんか?
 なぜ硬くなるのか?加熱調理に詳しい、横浜国立大学・渋川祥子名誉教授に聞いてみると…「大きな要因は脂肪が冷めると固まるということ。牛の脂の特徴は豚や鶏と比べて硬く固まりやすい」と解説。
 そこで実験!鶏、豚、牛の脂を並べ、徐々に温めていくと…まずは鶏の脂が溶けだし、30℃を超えたところで、豚の脂も溶けだしました。一方、牛の脂が溶けだしたのは45℃を越えてから。この脂の溶けづらさが、牛肉が冷めると硬くなってしまう理由。
 では一体、人気の駅弁「牛肉どまん中」はこの弱点をどうやって克服したのでしょうか。その秘密を探るべく、「牛肉どまん中」を製造する工場へ。実際にお弁当を作っている部屋に案内してもらいました。牛肉を細かくカットすると・・・大量の肉をお湯の中に入れ、下ゆでを始めました。実はこの"下ゆで"に最大の秘密があるというんです。工場の担当者によると、茹でることによって、肉の余分な脂をとって、冷めたときに固まった脂が口に残らないようにする」とのこと。そう…冷えて固まる余分な脂を落としているんです!しかも、この下ゆでに使うお湯には、少量の砂糖も入っているんです。
 実はそこにも、肉をやわらかくする秘密が!渋川先生によると、「砂糖はスクロースという成分。タンパク質が固まるのを邪魔する性質がある。下ゆでするときに砂糖が入っていた方がお肉が硬くなりにくい」とのこと。ただし、煮すぎると肉が硬くなってしまうため、下ゆで時間は赤みが取れる程度の短時間。さらに鍋の大きさにも秘密があります!工場の担当者によると、「大鍋ですとムラがでてしまう、できるだけ、均一性をもたらせるために大きくない鍋で」と、鍋の大きさにもこだわりがあったんです。あとは、下ゆでした肉を秘伝のたれで軽く煮て、味をからませ、ご飯の上にたっぷりのせて完成!
 でも下ゆでだけで、そんなに違いはあるのでしょうか。今回特別に下ゆでしないで味付けした肉も作ってもらい、それぞれ1時間冷ましたものを食べ比べてみました。さらに下ゆでしたお肉としていないお肉、それぞれを食感測定器で硬さを測ってみました。
 やわらかいものほど、数値が低く出ます。その結果は…下ゆでしていない方の硬さは599。一方、下ゆでした方は216。下ゆでをした方がおよそ3倍もやわらかくなっていたんです!このテクニック、もちろん家庭のお弁当でも応用できます!小さめの鍋に対し大さじ1杯程度の砂糖を入れ、沸騰したところで牛肉を投入。赤みが取れれば、下ゆでは完了。あとは味付けするだけで、冷めてもやわらかい牛肉になるんです。

所さんのポイント
ポイント3
売り上げナンバー1を誇る「牛肉どまん中」。牛肉がやわらかい秘密は"下ゆで"にあったのだ!




食べ物編へ
前週 次週
ページトップ

ジャンル別一覧 日付別一覧
番組に対する、ご意見、ご感想等ございましたら、番組メールボックスの方にお寄せ下さい。
宛先は、 megaten@ntv.co.jp です。
原則、質問にはお答えできませんが、頂いたメールは、番組スタッフが閲覧し、今後の番組作りの参考にさせていただきます。