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姫路城 の科学
第1272回 2015年4月19日


 今回は、約6年の改修を終え2015年3月27日に一般入場を再開した国宝で世界遺産の姫路城の科学です。

①姫路城の白さの謎に迫る!

 国内の城の中でもひときわ白い姫路城。改修を終えたばかりの白く美しい天守閣が街を見下ろしています。でも、改修前の姫路城はかなり黒ずんでいました。姫路城には4つの天守があり、今回改修されたのはもっとも大きい大天守。高さ46mの大天守の周りに素屋根と呼ばれる囲いを建て、6年にも及ぶ工事期間を経て、築城当時の白さを取り戻したんです。
 今回、10年にわたり大改修に携わった、建築のエキスパート小林さんと、姫路城の歴史を調べて23年、歴史のエキスパート工藤さんに姫路城について教えてもらいました。なぜ姫路城はこんなに白いのか?聞いてみると、「姫路城は壁だけじゃなくて屋根まで白い。その秘密が漆喰にある。」とのこと。漆喰は消石灰が元の建築材料。防火性、防水性を高める性質があります。そして、見た目が美しく、細かな加工ができることからも昔から多くの城で使われていました。屋根まで漆喰が塗られている姫路城は他の城と比べて、白さが際立っています。その屋根を近くで見ると、漆喰は全体に塗られている訳ではなく格子状に塗られているだけ!これを遠くから見ると真っ白に見えるんです。屋根瓦の繋ぎ目に漆喰を塗るのは雨や風が入り込むのを防ぐことが目的。
 しかし、屋根まで漆喰を塗るのは築城当時から大変な手間と費用がかかったはず。今回の工事でも屋根の改修だけでかかった期間は1年半。職人さんが全て手作業で塗り直しました。専門家によると、今回の改修で24億円かかり、当時の藩財政にとって小さくない負担であったと予測できる」とのこと。これが、姫路城以外の多くの城が屋根まで白く塗らなかった大きな理由だと考えられます。
 しかし、どうしてそこまでして白さにこだわったのかたずねてみましたが、姫路城を知り尽くす関係者ですら、その謎は解けませんでした。
 そこで、今回、姫路城の白さの謎を解くため、番組では心理学の分野からアプローチします!協力していただくのは知覚心理の専門家・日本女子大の竹内教授。心理学者が考えた姫路城が白い理由は…「白は他のものよりも大きく見える。権力の象徴である城をより大きく見せようとした」とのこと。ここで先生からミニ実験!
 これは姫路城の様子を簡略化して色の部分だけを取り出したもの。青い部分が空。緑の部分が木々とか山。白い部分がお城です。中央の四角の大きさを比べると、なんとなく白の方が大きく見えますよね?だけど実際は全く同じ大きさ。つまり、目の錯覚なんです。人間の目は白を大きく見える様にできている。この錯覚効果を利用して姫路城をより大きく威厳があるように見せたのではないか?というのが竹内先生の仮説です。
 しかし、江戸時代の人々は色にこの様な効果があることを知っていたのでしょうか?実はその可能性は十分に考えられるんです。その証拠が囲碁の碁石。囲碁の碁石は白い石の方が少し小さく作られています。江戸期に使われていた碁石もそれは同じ。実際に取った面積と印象が変わらないよう、昔から白の碁石が黒よりも一回り小さく作られていたんです。このことから当時から人々が白という色の持つ効果を知っていたことを窺い知ることができます。
 姫路城は数あるお城の中でも、より権力を見せつける必要のあるお城でした。姫路城がこの様な白いお城になったのは1609年、天下分け目の関ヶ原の戦いの直後です。この城を建てたのは家康の娘婿、池田輝政。輝政に任された役割は『西側大名の押さえ』なんです。
 関ヶ原の戦いは終わったといえ、いつ西側の反乱が起きるか分からなかった時代。もし、反乱が起きたら西側の武将が大阪や京都に集結します。
 姫路城は中国、九州から近畿に入る道にあったので、反乱が起きた時には姫路城で食い止め時間稼ぎをする役割を課せられていたんです。そのため、徳川の威信を常日頃から見せつける必要があったという訳なんです。

所さんのポイント
ポイント1
姫路城が白さにこだわった理由は、より大きく見せるためだと考えられるのだ!

②心理学者が暴きだす姫路城の心理トリック!

 美しい見た目とは一転、鉄壁の防御機能を備えていた姫路城。お城を上から見てみると…曲輪と呼ばれる壁や崖、石垣などで分断されたいくつものブロックが組み合わさってできていることが分かります。そして、そこには心理的に敵の侵入を防ぐ数々の罠があったんです。
 初姫路城の竹内先生と後藤さんが、城内の心理的トリックを暴きながら天守閣を目指します!スタートの菱の門をくぐり、次に向かったのは正面の門。しかし、姫路城の専門家によると「それでもう敵にやられる」とのこと。罠はどこにあったのでしょうか?
 最初にくぐった菱の門の先に見える「いの門」。後藤さんはこの正面の門を目指しまっすぐ進みました。
 ところが、選んだ道ではない、一見何もなさそうな別の道の先にはもう一つ門が。それが「るの門」という小さい隠し門が!正面切って「いの門」めがけて進んでしまうと、隠し門から攻め出た城の兵に、背後から挟み撃ちにされてしまうんです。心理学者の竹内先生によると、これは非常に巧妙な心理トリックなんだとか。人間は目的地へ向かう時、ゴールに一直線にいくわけではなく、身近身近にゴールを設定してそこを行くそう。つまり門は身近なゴールそのもの。だから、後藤さんはなんの疑問も持たずに門を目指して突っ走ったというのです。
 続いて、一行がさしかかったのは、天守閣に目前まで迫った場所。今では見学用の通路があるが、当時は通路はなくて、左を見ると天守には近づきそうだけれど石垣があり行き止まりに見える。そこで、行き止まりに見えた道を避けカーブした壁伝いを進むと・・・突然壁は消え、進むべき道は断崖絶壁!
 これには「補完のトリック」が使われているという。竹内先生に補完のトリックの典型的な例を見せてもらいます。
 この何の形だかわからない黒い模様に赤い丸を重ねると文字が浮かび上がるんです。赤い丸の下に何かが隠れているんじゃないか?と思うと頭が勝手に補完してABCDを作ってしまうんだとか。
 つまり、姫路城にあったカーブした壁も、道が続いていると思い込ませ、侵入者を断崖絶壁に誘い込む罠が隠されていたんです。

所さんのポイント
ポイント2
分野が違う心理学者と一緒に城を見るはおもしろいのだ!

③姫路城に隠された防御の仕掛け7連発!

 いよいよ、天守閣内へ進みます。入り口は敵の侵入をはばむ二重構造の扉です。
 姫路城の入口は地下1階。そこには籠城戦を想定し作られた「流し台」や「厠」がありました。城の中にトイレが残っているというのは非常に珍しい例なんだとか。続いて地上1階。フロアの隅には、謎のフタがあり、下をのぞけるようになっています。実はこれ、石垣を登ってくる敵兵めがけて石や鉄砲で攻撃する為の「石落とし」と呼ばれる防衛設備。外からは攻撃されにくい構造になっています。続いて2階!階段には扉がつけられており、閉めてしまえば敵が下から上がってこられない作りに。さらに突起がたくさん出ている壁は槍や鉄砲をかるための物。そして、大天守最上階からは遥か遠くまで見張ることができます。実は今回の工事で新しい発見があったといいます。今はただの壁になっている場所、外側の土壁を落とすと、窓だということが分かりました。しかし、最終的に窓は作られることはなく壁になっています。これは築城中に、天守まで大砲の弾が届くという事実を知ったため、急遽、壁に作り替えたからだと考えられています。
 こうして、完成間際まで難攻不落の城を目指し続けた姫路城は、他に類を見ない最強の城となったんです。

所さんのポイント
ポイント3
ちなみに江戸時代は平和だったので姫路城が実際に戦に巻き込まれたことはなかったのだ!




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