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お化け屋敷 の科学
第1339回 2016年8月21日


 夏の風物詩"お化け屋敷"。江戸時代後期、お化けの絵や人形を飾った"見世物小屋"として登場したのが始まりだと言われています。
 あれから時は流れ…いま、お化け屋敷は商店街やビルなど意外な場所に数多く誕生し、若い女性を中心に、長〜い行列ができるほどの人気ぶり!しかも!その恐さは、"驚きの進化"を遂げていたんです!
 そこで、恐怖を研究する専門家と"進化系お化け屋敷"を体験!学者も思わず悲鳴を上げる「恐怖の科学」が秘められていました!今回の目がテン!は…怖いのになぜか楽しい!?「お化け屋敷の科学」です。

①脳科学の専門家が体験!恐怖する理由を徹底解明

 閑静な住宅街の中に突如現れたのが…診療所をイメージした、「迷図」。完全予約制の進化系お化け屋敷です。進化系お化け屋敷は、昔のお化け屋敷とは違い、それぞれオリジナルのストーリーがあり、参加者は、登場人物の一人として体験することができます。迷図の場合は、悪夢に悩む患者が心霊治療を受けるというストーリー。参加者は「患者」として治療を受けるため、本当に心霊体験をしているようで怖いと、評判なんです。…と、そこに現れたのは、生理学研究所の柿木隆介教授。長年、脳機能を研究し、恐怖のメカニズムにも精通した、神経生理学の専門家です。今回、恐怖を研究する専門家が、実際に、お化け屋敷を体験しながら、リアルな恐怖を感じるメカニズムを解説します。
 まずは、照明も薄暗く、不気味な雰囲気が漂う待合室へ。ここで、看護師に扮したスタッフから注意事項の説明を受け…待つこと数分。向かったのは「第一診察室」。ここで、悪夢の治療方法。つまり、このお化け屋敷のルールを説明してもらいます。まず、悪夢の原因である「自分に取り憑いた女性の霊」が、診療所内のどこかにいるので見つけ出します。そのあと、追いかけてくる霊から逃げ切り、診療所から脱出できれば治療成功となります。説明が続く、その時。部屋が突然、真っ暗に…。実はこれ、進化系お化け屋敷のポイント。参加者に恐怖を予感させるための仕掛けの1つなんです。
 柿木先生によると、ヒトが恐怖を感じる時は、脳にある扁桃体が活性化します。この後に恐怖が待っているかも、と想像するだけで、扁桃体が活性化しやすくなるのだといいます。続いて向かったのは「第二診察室」。ここで、取り憑いた霊の声を聞かせることで、霊の存在を、よりリアルに感じさせます。
 そして、ここからが本番。参加者自らが、自分に取り憑いた霊を探しにいきます。と、ここで気になったのが"ある音"。廊下中に響く、心臓の音。実はこれ、"進化系お化け屋敷"3つ目のポイント。先生によると、自分の鼓動に似た音を聞くと、ドキドキ感を自覚するため、より恐怖を感じやすくなるといいます。幽霊を探し始めて、10分後。奥へと続く扉を発見。
 しかし、扉を開けた先には、さらに扉が…。実は、次から次へと現れるこの扉も、"進化系お化け屋敷"のポイント。何かが出てきそうな「扉」は、自分で開けるたびに、心理的な恐怖を感じるのだといいます。様々な仕掛けで、リアルな恐怖感がどんどん膨らんでいった、その時。突然、背後から霊が出現!あまりの恐怖に、先生も驚きの表情。ここからは急いで、どこにあるか分からない出口を目指し、逃げなくてはいけません。すると、その途中…怖いはずが、突然笑いがこみ上げてきたんです。
 一体何が起きたのか?実は、恐怖を感じる扁桃体のすぐ近くには、快楽ホルモンを出す「側坐核」があります。強い恐怖により扁桃体が活性化すると、側坐核も活性化し、快楽ホルモンの「βエンドルフィン」の分泌が促進されます。そのため、強い恐怖を感じた時は、快感も同時に感じるというしくみ。そして…ついに出口を見つけ、ようやく脱出成功。恐怖のメカニズムを知り尽くし、全く怖くないと言っていた柿木先生ですが…「理性じゃ恐怖はコントロールできない!これだけ研究してもダメなものはダメだね」とお手上げ状態でした…。


②怖いけど楽しい!進化系お化け屋敷

 人はいったい、お化け屋敷でどれだけ恐怖を感じているのか?
 センサーの光を手首に当て、心拍数を計測できる光学式心拍計を使い検証してみます。成人の場合、心拍数の基準は90前後。これより高くなれば「恐怖」を感じていることになります。さっそく、女性で計測開始。すると…あっという間に心拍数が90を越え、恐怖状態に。そして…幽霊に出くわし、心拍数が急上昇!その後、幽霊に追いかけられる恐怖で心拍数が182まで達したその時!やはり、女性でも強い恐怖を感じると、笑い出していたんです。


③お化け屋敷の意外な効果!冷めた夫婦仲は改善するのか?

 今回、協力してくれたのは、結婚25年目を迎える夫婦。会社員の夫と、主婦の妻。そして3人の子供を持つ5人家族です。2人には、"熟年夫婦の普段の様子を撮影する"とだけ伝えています。撮影するのは、とある休日の1時間。ここで2人が交わす会話時間を計測します。観察を続けると…結局、1時間で熟年夫婦が交わした会話は…わずか54秒。これは夫婦間が冷めきっているということなのか?お互いの本心を、それぞれ聞いてみます。まずは、妻から。夫を5点満点で採点してもらうと、その評価は…星2つ。男としてのトキメキは全くないそうです…。一方、夫の妻への評価は…星4つ!結婚から25年たち、お互いの気持ちに、だいぶズレがあるようです…。
 ここで2人には行き先を告げず、家から連れ出します。果たして、冷めてしまった夫婦仲は、お化け屋敷で見事復活するのか?それでは、実験スタート。ひたすら喋り続ける妻に…夫は終始、無言のまま。
 しかし、時間が経つにつれ、冷めきった熟年夫婦の間に"ある変化"が…。少しづつ会話も生まれ…お互いの距離も近づいてきました。そして…幽霊から逃げ出したその時!なんと!妻から夫へ…20年ぶりの抱擁が。
 その後も、2人は体を寄り添いながらゴールを目指します。そして1時間後…無事ゴール。なんだか、夫婦仲が良くなったような気が…。ここで、お互いの評価を、もう一度聞いてみます。すると…妻の夫への評価は「3.5」。見事、星が1.5個増えました。その理由を聞くと、「付き合ってた時と、同じ気持ちに…。少し戻ったかなという感じ」と意外な感想が!一方、夫は星が4.5とほぼ満点!妻同様、評価がUPしました。
 その理由を夫に聞くと…「強がり言っている所もあるんだけど、違う一面もあったんだなというのを再確認した」と言います。
 ではなぜ、このような変化が見られたのか?心理学の専門家・東京未来大学の大坊郁夫先生に聞いてみると…「普通のコミュケーションでも、近づいているとか、会話をよくするということは、親和性の高い状況。こんなに親和的なコミュニケーションができてるということは、私たち親しいんだと、昔のことを思い出す。恋人時代には、こんなことあったなぁと思い出します。ですから余計に親和性を促進するということになる」と解説。
 結婚から25年。すっかり冷め切っていた夫婦仲が…お化け屋敷で、改善されたようなんです。



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