放送内容

第1399回
2017.11.05
焼き鳥 の科学 食べ物

 長年、多くの人に愛され続けている焼き鳥を徹底的に科学!

今焼き鳥が人気の秘密

 今、全国で増えている焼き鳥居酒屋なぜ、焼き鳥居酒屋が人気なのか?お客さんにお話を聞いてみることに、食べると楽しい雰囲気になるとの声が多数。その理由を食事における心理行動を研究している東京電機大学システムデザイン工学部の徳永先生に聞いてみると「焼き鳥を食べると自然と会話が盛り上がるから」という謎の答え。本当に焼き鳥を食べると会話が盛り上がるのか実験!協力していただくのは、この日が初対面の男女4人。まず初めに、15分間、4人が焼き鳥を食べているときの会話量を測定します。その後すぐに、今度は居酒屋の定番メニュー、刺し身の盛り合わせを食べている時の会話量を測定します。どちらも、お酒を飲んで盛り上がってしまわないように飲み物はウーロン茶だけです。果たして、4人の会話量に差は出るのでしょうか?
 15分間の会話を書き起こしてみると2631文字でした!比較のために、刺身の盛り合わせを食べている時の、15分間の会話量を測定すると2302文字という結果に。

 焼き鳥を食べていた時の方が329文字、会話量が多かったんです。別の初対面の男女4人で、今度は刺身を先、焼き鳥を後に出して同様の実験をしたところ…こちらも焼き鳥を食べた時の方が502文字多いという結果に!

 書き起こしの結果1組目は刺身の盛り合わせよりも焼き鳥のほうが14%会話量が多く、2組目も焼き鳥のほうが17%会話量が多かったのです。その理由を徳永先生は「焼き鳥の方は、手でそのまま掴んで一口食べるので、会話中の相手にすぐに視線を戻すことが出来、串を持って相手を見ながら会話と食べることを同時に楽しむ事が出来る。その結果、会話量が多くなったのではないかと思います。」つまり焼き鳥を持って食べている時は視線が外れにくく、会話も途切れにくいので会話が盛り上がるのです。

ポイント1

焼き鳥は会話を楽しみながら食事ができるコミュニケーションツールの役割があったのだ!

焼き鳥論争

 みんなで焼き鳥を食べている時に見かけるのが、串から肉をバラバラに外す食べ方。串からそのまま食べる派と、外す派。意見の分かれる、まさに焼き鳥、永遠のテーマ!
 そんな中、とある焼き鳥店の掲げた看板が話題に。「焼き鳥屋からの切なるお願い」「焼き鳥は串から外さずガブリついて食べて下さい!」。串のまま食べてほしいという店主の悲痛な叫びが。この看板がSNSで拡散されると、なんと新聞記事にまで取り上げられる大論争に発展!そこで、問題の看板を掲げた店主、鳥一代の山崎さんを直撃すると「お客様に焼き鳥は、どんな食べ方して頂いても自由だと思います、SNSとかであの看板が一人歩きしてしまってちょっと寂しい思いをしています。」と、予想以上に反響があったのか困惑している様子。しかし、「刺し方、焼き方、味の付け方、全てにこだわりをもってやっています。ですからそのまま召し上がって頂いた方が僕はおいしいと思います。」と力強い言葉。
 そこで串から外すVS外さない!どっちがおいしいか徹底検証!集まっていただいたのは男女10人焼き鳥を串に刺したままのものと、串を外したものを、それぞれ食べ比べてもらいます。山崎さんに、実験用の焼き鳥を焼いてもらい、1本は実験用にバラして食べ比べ実験!結果、10人中10人全員が、串から外さずに食べた焼き鳥の方がおいしいと判断。

 なぜ、串から外さず焼き鳥を食べた方がおいしいと感じたのでしょうか?分析に協力していただくのは、東京家政大学栄養学部の赤石先生。
 赤石先生には実際に焼き鳥の作り方を見てもらい科学的に分析してもらったところ、科学的に見るとポイントは3つあるとのこと。

焼き鳥のおいしさポイント①「串の刺し方」
 刺されている状態を見ると串に対してスジが直角になっている様子が分かります。一口目を食べる時に、歯に対してスジが平行に当たる事になるので食べた瞬間に柔らかく感じやすいという事になります。スジが横と縦では、柔らかさにどれくらいの違いがあるのか?テクスチャー装置という機械で計測すると…スジが横にある肉の方がおよそ2倍も柔らかい事が分かったんです。

焼き鳥のおいしさポイント②「肉の形」
 焼く前の焼き鳥をよく見てみると一口目に食べるお肉から段々と小さくなっている事が分かります。一口目の焼き鳥にボリューム感がある事で食べた時に満足感が得られます。なので、外してバラバラにしてしまうと、食べる順番もバラバラになり満足感が半減してしまうのです。

焼き鳥のおいしさポイント③「味付け」
 1口目のお肉に少し多めにお塩をふっていたんです。では、どの様にして焼き鳥に塩を振っているのか?スロー映像で見てみると串の根本のお肉から徐々に塩を振りかけている事がわかりますが…。一口目に食べるお肉には、10回以上塩をふりかけて味を濃くしている事が分かります。こちらも串から外してバラバラの順に食べると、味の濃淡を感じることができず、おいしさが半減するといいます!
 さらに、どんな焼き鳥でも串から外す事でおいしさが落ちてしまう決定的な理由があると言うのです。「実際に外す時にお肉から肉汁が溢れやすくなってしまう。さらに外してしまうと冷めやすくなってしまう」とのこと。そこで実験!焼き鳥を串から外すと、ジューシーさにどれほど違いが出るのか?5分間で流れ出る肉汁の量を比較してみます。すると、串から外した焼き鳥の方がおよそ2倍も肉汁がこぼれている、という結果になりました。

 さらに、サーモグラフィーで温度の変化の違いも比較してみると…串から外した焼き鳥は、みるみる青くなっていき10分後、串から外した焼き鳥はほぼ全てが冷めてしまう事が分かりました。

ポイント2

1本1本、職人の技と愛情が込められた焼き鳥は串のまま食べた方が、科学的においしいということが証明されたのだ!鳥一代の山崎さん、アナタの主張は正しかったのだ!

科学的焼き鳥温め直し術

 最近、コンビニでも人気の焼き鳥!今や、焼き鳥はどこでも気軽に買える時代ですが、買った焼き鳥は家で温め直すのが難しいとの声が多数。電子レンジでラップをかけて温め直すと、焼き鳥から蒸発した水分で水っぽくなってしまいます。逆に、ラップをかけずに温め直してみると、今度は焼き鳥の水分が蒸発しすぎてしまいパサパサになってしまいます。
 では、どうすれば、電子レンジで上手に焼き鳥を温められるのか?調理科学の専門家・東洋大学食環境科学部の露久保先生に聞いてみると、取り出したのはクッキングシートを使うのが良いとのこと。初めに、クッキングシートを15cmほどに切り、その上に焼き鳥を乗せて、包み込むようにクッキングシートの両端を折り込んで、500Wの電子レンジに入れること30秒。早速、クッキングシートで温め直した焼き鳥を食べてみるとフワッとほどけるように温まりました。この温め方のポイントは、クッキングシートで包んだ時に出来る空間。ここに焼き鳥から出る蒸気がこもり、蒸し焼き状態になることでパサパサを防げます。しかもクッキングシートなら余分な水分が抜け出るので、焼き鳥が水っぽくなることもありません。

 さらに露久保先生によると、買って来たお総菜の焼き鳥を、今度は高級焼き鳥に変身させる温め直し方があると言うんです。使うのはフライパンでと日本酒。
 まず、フライパンの上に、油を引かないで焼き鳥を乗せます。そして、早速、日本酒の出番。あらかじめ焼き鳥に日本酒をかけておくとパサパサになるのを防げるといいます。火をかけてから日本酒をかけると、先に焼き鳥の水分が蒸発してしまうので、要注意!そして日本酒が沸騰を初めた所でフタを閉め弱火でおよそ30秒間、蒸し焼きにします。最後に焼き鳥の両面に焦げ目を付けます。これで、日本酒のアミノ酸と糖が反応して甘味や、うま味が、引き立つようになります。焦げ色が付いた所で完成!
 そこで、集まって頂いた男女10人にスーパーのお惣菜売り場で買った1本80円焼き鳥を露久保先生流に温め直し値段を付けてもらいました。結果、80円の焼き鳥を温め直しただけで、平均197.1円と、元の値段の2.5倍になりました!

ポイント3

日本酒によって温め直すだけで、高級焼き鳥に大変身したのだ!