放送内容

第1408回
2018.01.14
タヌキ の科学 地上の動物

 生き物大好きな桝アナウンサーがさまざまな生物の不思議にせまってきた「桝太一の生き物バンザイ!」。今回のテーマはタヌキ。サイエンス雑誌の「ナショナルジオグラフィック」にシンガポールの動物園でタヌキが特別待遇を受けているという記事が。4年前、動物交換プログラムで、日本からシンガポールにタヌキが贈られたんですが、シンガポール側からはなんと世界三大珍獣のこちら、コビトカバが贈られたほど世界では珍しい動物なんです。今回はそんな珍しいタヌキを大都会東京で大追跡!

都心のタヌキ探し「新宿御苑」

 都会のタヌキ探しに協力してくれるのは東京農工大学・金子准教授。数年前、皇室から赤坂御用地のタヌキに関する調査を依頼されるなど、都会のタヌキに詳しい専門家です。在来種の食肉目は、ツキノワグマやキツネ、アナグマなどですが、今、東京の都心部には生息していないといいます。どうしてタヌキだけが都会で生きることができるのか、その謎にも迫っていきます! 
 最初の捜索ポイントは、数年前に目撃情報があった高層ビル群が望める新宿御苑。都会のオアシスとして、長く自然が残されてきました。
 タヌキ探し最初の手掛かりはエサ!特別な許可をもらい立ち入り禁止区域に入ると、タヌキの大好物ケンポナシがたくさん生えていました。この時期、この部分は地面に落ちるためタヌキも食べやすいんです。桝アナが味見してみると「甘い香りがして、さわやかなぶどうくらいの甘さ!レーズン食べている感じ」だそう。他にも、タヌキの好む果実が新宿御苑にはたくさんあります。他にも、タヌキの糞から出てくるのは鳥の羽根やセミの抜け殻など。雑食のタヌキは果実以外にも、肉や虫など幅広く食べるそうです。

 東京でタヌキが暮らせる理由のひとつは、雑食で色々食べられることだったんです。
 さらに、捜索隊は雑木林の奥へ。とても新宿とは思えません。獣道に学生さんが、数日、動物の体温を感知すると録画が始まる特殊なカメラを仕掛けていまいた。このカメラにタヌキはうつっているんでしょうか!
 最初の映像は、3日目よる9時18分のもの。映像には鼻息と何者かの足音が…。このおよそ2時間後、もう一つ、映像が撮れていました。映っていたのは外来種のハクビシン。残念ながら、東京のタヌキではありませんでした。

ポイント1

今回は、新宿御苑でタヌキを見つけることはできなかったのだ!

都心のタヌキ探し「下北沢」

 降り立ったのは下北沢駅前。駅の周辺は、飲食店が密集する繁華街。下北沢駅からわずか徒歩2分。こちらのレストランでタヌキが目撃されたというんです。客席から緑が見えるガーデンレストラン。タヌキがちょこちょこ現れるという庭をチェックすると「セミの抜け殻」を発見。セミの幼虫はタヌキの大好物。餌場になっている可能性が!一週間、仕掛けておいたカメラを回収。さあ、東京のタヌキは映っているのでしょうか?
 2日目のよる11時50分。茂みに、目を光らせる動物の姿が…。さらに、その1分後。プリっぷりのおしりに高まる期待!3日目の朝6時41分…ついに、下北沢で暮らすタヌキの撮影に成功!

 さらにその1分後にペアのタヌキが!イヌ科の動物の大きな特徴として、雄が子供を育てるのを手伝うんです。そのお陰で生まれた子供がうまく大人まで育ち上がる確率があがる。哺乳類で雄も子育てに協力する種は全体の5%もいないそうです。タヌキが東京で生きられるのは夫婦で協力して子育てをするから!そして、4日目の夜には…ペアでエサを探すラブラブカップルが!冬の時期ならではのモフモフぽっちゃりタヌキの撮影にも成功しました!

 今回、タヌキが発見されたお店は線路沿いにあります。
 金子先生によると線路そばは、タヌキにとっていい住処になっている可能性があるそうです。線路は深夜、終電が終われば電車も人も通らないので、タヌキは安心して活動できます。また線路沿いには、果樹の実る木や緑地があるので、エサなども豊富なんだそうです。

ポイント2

下北沢には、確かにタヌキが暮らしていたのだ!

都心のタヌキ探し「東京農工大」

 府中にある東京農工大学。敷地内に住むタヌキの行動を研究してきた学生の原田さんは、ここに暮らすタヌキにGPSの首輪をつけ、どういう動きをしているか研究しています。GPSを取り付けたタヌキの動き。オレンジ色の丸は昼、青は夜の動きを示しています。昼に、点が集中している場所はタヌキの巣穴。夜行性なので、昼間はほとんど巣穴で過ごすそうです。
 今、その巣穴は使われていないそうで、どんな場所か、見に行ってみました。藪をかき分け林をいくと、地面にぽっかりあいた穴。タヌキがいないことを確認した上で、カメラでのぞいてみました。深さは1メートル以上。おそらくアナグマが掘ったもので、タヌキがちゃっかり巣穴にしたようです。

 都会では踏切の下の排水口や…空き家の床下などにタヌキが住んでいた例もあるそうです。どんな環境でも適応し、寝床にできる。これもタヌキが都会で暮らしていける理由の一つ。
 さらに、タヌキ捜索の有力な手がかりが…それは糞。同じ地域のたぬきは、同じ場所に糞をすることで情報交換をします。これをため糞と言います。ため糞場で、タヌキは、別のタヌキがした糞を嗅いで、近くにどんな食べ物があるか、また糞に含まれるフェロモンから性別や年齢、発情しているかなどさまざまな情報を得ることができるそうなんです。

 仲間同士で情報交換をすることが厳しい都会を生き抜くタヌキの術だったんです。
 どうしても生でタヌキが見たい桝アナ。ため糞場の近くの木にカメラをしかけ、原田さんとモニタリング。日が暮れて観察スタートです。ただただ、モニターの中のため糞場をみつめひたすら待ちます。その後も、タヌキを待ち続けましたが気配もなく残念ながら生でタヌキを見るチャレンジ断念です。

 しかし、別の日。カメラの映像には一匹のたぬきがやってきて、糞の匂いを嗅いで情報を得ている映像が。その3時間半後。別の個体と思しきタヌキが現れました。やはり匂いをかぎ、情報として糞を残しています。その2時間後には、また別のタヌキと思われる個体がやってきて匂いをかぎ、情報を残す。この日、ため糞場に一晩でのべ6頭のタヌキが現れ、情報交換をしていたんです!

ポイント3

タヌキの糞は、タヌキ界のSNSなのだ!