放送内容

第1407回
2018.01.07
すき焼き の科学 食べ物

 寒~いこの時期にぴったりなのが…鍋の王様「すき焼き」。家庭でぜいたくな気分を味わえる冬の定番料理です。そんなすき焼きで“よくある悩み”が、輸入牛などのお手頃なお肉が、すぐ硬くなってしまうということ。
 そこで今回、科学の力で、輸入牛を美味しく食べる方法をご紹介します!

硬い輸入牛を高級和牛のように柔らかくする方法とは?

 そもそも、一体なぜお手頃な輸入牛は硬いのでしょうか?30年以上、お肉の研究を行う日本獣医生命科学大学、松石昌典教授に伺うと「輸入牛肉の牛と日本で飼っている和牛の品種が違う。和牛は赤身の中に脂がたくさん入ってサシの状態になり、脂の分だけ柔らかい。輸入牛肉は品種が違うので脂肪が赤身に入らず、タンパク質だけの組織なので硬いということになる」と解説。しかし、そんな硬い輸入牛を和牛のように柔らかくする方法があるというんです。やって来たのは、岐阜県にある洞戸地域。その方法を知る方が、この地域に長く住む松田佑子さん。番組で100グラム198円の輸入牛を用意。サシが入った和牛に比べ、やはり赤身の部分が多いでんす。そこで、この輸入牛を柔らかくする方法を聞くと、それには「キウイ」を使うと言います。まずは、キウイを輪切りにし…お皿に敷いて、その上にお肉。さらに上から、キウイでサンドイッチします。あとは1時間ほど室温に置いておくだけ。

 お肉が柔らかくなるのを待つ間、それ以外の食材を調理し、手際よくすき焼きを作っていきます。そして、キウイで下ごしらえをした輸入牛を食べてみると、格段にお肉が柔らかくなっていました!輸入牛とは思えない柔らかさは、まさに想像以上!実は洞戸地域はキウイの産地。冬の収穫時期、形が悪く出荷できないキウイを活用できないかと考え出されたのが、この方法でした。では、一体どのくらい柔らかくなったのか、専用の機器を使い、噛んだ時の牛肉の硬さを計測します。まずは、キウイを使っていない輸入牛から。その硬さは1.92ニュートン。続いて、キウイで挟んだ輸入牛。同じ部位を同じ時間煮たものを計測すると…1.03ニュートン。なんとキウイを使うだけで、約46パーセントも柔らかくなっていたのです!

 では、霜降りで柔らかい和牛にはどこまで近づくことができたのでしょうか?比較するのは、100グラム1000円超えの黒毛和牛。その硬さは…0.83ニュートン。キウイで挟んだお肉は、霜降り和牛の柔らかさにかなり近かったのです。

ポイント1

キウイで硬い輸入牛を和牛のような柔らかさに近づけることができたのだ!

輸入牛にあるモノを加えると高級和牛に大変身!?

 やって来たのは、茨城県土浦市にある食品研究所。実はあるモノを使うと、輸入牛が和牛のようになるそうなんです。その正体は…なんとココナツミルク。でも一体なぜ?これについて研究所の方は「高価な和牛にはラクトンという甘い香りの成分が含まれている。これはココナツミルクにも含まれていて、ココナツミルクに漬け込むことで風味がUPする」と解説。ラクトンとは、和牛の脂の中に含まれる甘い香り成分。和牛を美味しくする要素の一つです。

 輸入牛をココナツミルクに漬け込むことで、和牛の甘い風味に近づくと言うんです。作り方は100グラムの牛肉に対し、ココナツミルクを大さじ1杯半加え、後は冷蔵庫に30分ほど置けば完成です。でも、これだけで本当に輸入牛が和牛の香りに近づくのでしょうか?そこで、味にはうるさい主婦の方5人に協力してもらい実験です。同じ輸入牛を2つのトレイに分け、一方はそのままのA、もう一方はココナツミルクに漬け込み、和牛の風味に近づけたBとします。その後、全く同じように調理した2つのお肉。これをそれぞれ食べ比べ、どちらが和牛だと思うか答えてもらいます。結果、5人ともココナツミルクに漬け込んだBの方が和牛だと回答。確かに輸入牛にココナツミルクを加えるだけで、和牛のように感じるようです。

 では、本家・黒毛和牛と食べ比べたらどんな結果になるのでしょうか?Aは黒毛和牛。Bはココナツミルクに漬け込んだ輸入牛ですが…多くの方はやはり硬さが違うため、みなさんAを選びました。そんな中でも、Bのココナツミルクに漬け込んだ輸入牛を選んだ方がいたのです。実験後、なぜBを選んだのか?理由を聞いてみると…「Bの方が濃厚な感じでいい香りだなと思った。香りで自分が食べていたんだなと思った」とコメント。

ポイント2

硬さが違うにも関わらず、輸入牛にココナツミルクを加えることで、まるで高級和牛のような風味を生み出していたのだ!

さっぱり美味しい“目がテン流すき焼きレシピ”!

 目がテン流のすき焼き作りに挑戦!協力してもらうのは、目がテンでお馴染み、調理科学が専門の露久保美夏助教です。サポートするのは、3分クッキングでも活躍する佐藤真知子アナです。まずは、すき焼きには欠かせない割り下作りから。目指すのは、「お肉を柔らかくするために使ったキウイを割り下に入れ、香りのある甘めのお肉に合う、さわやかな酸味を感じられる割り下」。作り方は鍋の中に醤油、みりんを加えます。と、ここで露久保先生がひと工夫!赤ワインを加えます。キウイの甘味が立ちすぎないよう、赤ワインの酸味と渋味を加え、味のバランスを整えます。赤ワインと醤油、みりんの割合は1:2:2。これを火にかけアルコールを飛ばします。その後で火を止め、お肉を柔らかくするために使ったキウイを潰し、これを割り下に加えていきます。これで目がテン特製の割り下が完成です。

 続いては、食材の下処理!食材は包丁を寝かせるように、「そぎ切り」にしていきます。露久保先生によると、こうすることで、断面積が広くなるので、ここからより割り下の味がしみやすくなると言うんです。下処理を終えたら、いよいよ具材を鍋に入れていきます。今回はしいたけとえのきに、先ほどそぎ切りをした白菜。ネギも斜めに切り、味を染み込みやすくしました。そこに、焼き豆腐としらたきを入れたら、鍋に火をつけます。お肉はまだ入れていませんが、実はそのタイミングにも“あるポイント”が!なんとお肉を煮込む時間は、わずか30秒。牛肉は、筋繊維が束状に集まって「筋線維束」を構成しており、肉の内部温度が65度以上になる状態が続くと収縮し、かたくなる性質があります。また収縮することで、肉のうま味や水分が抜け、美味しさが失われるので、煮過ぎないことが重要です。

 こうして完成した、目がテン流すき焼き。スタジオで所さんが試食すると大絶賛!科学の力で、輸入牛でもおいしいすき焼きができました!