放送内容

第1414回
2018.02.25
かがくの里・田舎暮らし の科学 場所・建物 食べ物 水中の動物

 自然がテーマの科学者たちが、未来に繋がる楽しい田舎暮らしを目指す長期実験企画「目がテンかがくの里」2018スタート!

家でもできるお豆腐作り!

 2月3日。里に地元の子供たちが集まって節分!今年の無事を祈って豆まき!4年目となる2018年のかがくの里。鬼退治で今年の豊作を願いました。鬼退治してくれた子供たちに、かがくの里からプレゼント。去年収穫して保存してあったサツマイモを焚火で焼き芋。調理科学の専門家、露久保先生おススメの超絶品焼き芋とは「塩焼き芋」。江戸時代の本に書かれた「塩蒸し焼き芋」は塩窯でサツマイモを蒸し焼きにするんです。それでは簡単に、伝説の「塩焼き芋」を再現できる方法を、教えてもらっちゃいます!その方法は、塩水にキッチンペーパーを浸し、それでイモをくるむだけ。あとはイモが焦げないよう、アルミホイルで包めばOK。これをじっくり2時間、焚火で焼き上げました!塩味がほんのり皮につくことで、対比効果によって、サツマイモがより甘く感じるんです。

 節分の締めくくりは健康を願って、年の数より一つ多く炒り豆を頂きます!もちろんこれ、かがくの里で穫れた大豆。
 去年7月。高橋先生はエンレイという品種の大豆を里に植えました!特徴はタンパク質がたっぷり含まれていて、豆腐やみそを作るのにピッタリなんです。およそ一週間で芽が出て、病気も鳥の害もなく順調に大きく育ち9月の終わりには枝豆が!そして去年の12月、葉が落ちて茎が乾いたところで収穫です!さやから出すと全部で12,5kgも穫れちゃいました!

 この大豆を使って、自宅で意外と簡単に、出来立て豆腐を味わえる科学的豆腐作り!材料はいたってシンプル!大豆と水とニガリだけ!まず、生の大豆に3倍量の水を入れ20時間ほど漬けておきます。柔らかくなった大豆にさらに水を加え、2分ほどミキサーにかけるとドロドロした“生呉”という状態になります。これを火にかけ、なべ底が焦げ付かないようかき混ぜながらコトコトと、およそ10分煮て、さらしに入れて、ぎゅっと絞っていきます。この時、さらしに残る搾りかすが「おから」。豆腐作りに使うのは絞った方の液体、そう、豆乳です!この豆乳に“にがり”という凝固剤を入れ固めるんですが、ここで最大のポイント!「80℃まで温められたらここでにがりを入れます!」。豆乳の温度が高すぎるとすぐ固まって、粒子が荒いザラザラ食感の豆腐になってしまいます。逆に低すぎると、固まらなくなってしまうんです!

 ベストな温度でにがりを加え、3回ほどかき混ぜたら15分置いておきます。これで「寄せ豆腐」が完成。今回はこれをギュッと固めて、木綿豆腐を作ります。まず、その名の通り木綿の布を型に張り、寄せ豆腐を入れます。重しを乗せて、20分、余計な水分を絞って、布を剥がすと、豆腐の形に。最後に10分水にさらしアクを抜き。これで、かがくの里で穫れた大豆で作った木綿豆腐!調味料なしでも絶品の湯豆腐で頂きました。

ポイント1

できたて豆腐は豆の風味が豊かで味付け要らず!里の冬の贅沢なのだ!

2018年かがくの里ビッグプロジェクトウナギの養殖

 2月初め。阿部さんと魚養殖の専門家、千葉先生がいたのは静岡県、浜松市。天竜川の河口付近。夜7時、河口でライトをつけてシラスウナギを捕っていました。シラスウナギとはつまりウナギの赤ちゃん。方法はランプの光に集まってくるシラスウナギを網ですくうだけ。シラスウナギは透き通っていますが、小さくてもこの子たち、すごいんです。2000kmほど離れた西マリアナ海嶺あたりで生まれ、黒潮に乗ってこの時期、日本へやってきて、満ち潮にのって川を上り始めるところ。この漁はシラスウナギが、これから天竜川を上ろうとしているところを捕まえる伝統的な漁なんですって。漁で捕らえられたシラスウナギは養殖場で大きく育てられ出荷されます。

 一方、無事、川を上ることができたウナギは川や田んぼなどで何年もかけて大きく育ち、子孫を残すために、再び大海原に出て、2000km先の西マリアナ海嶺あたりに行くんです。けれど最近は、川の整備が進んで上流に生きにくくなり、棲みかも奪われ、天然のウナギはほとんどいなくなったんだそうです。
 実は、私たちが食べているウナギの99%はシラスウナギを養殖したもの。つまり、今は、シラスウナギ漁をしなければウナギが食べられないんですが、今年は全国的にシラスウナギが大不漁!去年の同じ時期と比べ100分の1程度しか獲れていないと言う異常事態!そもそも日本で捕れる数は年々減っているそうで、2013年には、二ホンウナギがクロマグロなどと同じく絶滅危惧種に指定され、完全養殖技術の実用化が必要とされているんです。

 そこで、千葉先生などの研究者は完全養殖技術の確立を目指しているわけです。完全養殖とは、卵から成魚まですべて人間の管理下で育てる養殖法。2010年日本で研究室レベルでの完全養殖がついに成功していますが、コストなどの問題があり、完全養殖のウナギを食べられる日はまだまだ先になりそう。そのため千葉先生は、完全養殖ではないウナギを増やすための“新たな養殖法”を考えているんです。
 では、現在一般的なウナギ養殖は、どのように行われているのか?向かったのは、浜名湖のお隣にある養殖場。ここで働く古橋さんは千葉先生の教え子。さっそく養殖場を見学させてもらいます。河口で捕らえたシラスウナギは、成長を早めるため水温がおよそ30℃に保たれた生け簀で育てられます。エサは魚粉とスケソウダラの油などを混ぜたものを毎日2回。天然ウナギは何年もかけて大きくなりますが一般的な養殖場では半年、こちらの養殖場では大体1年で出荷サイズにまで大きくするんです。

 早く育つからなのか、養殖のウナギには、不思議な現象が。もともとシラスウナギの頃には、まだ性別がありません。成魚になる途中で、オスかメスか決まるんですが養殖場のような環境で成長が早められるとほとんどがオスになってしまうんです。実はこれが、かがくの里で始めるウナギ養殖の狙い。当然、自然で育つ天然ウナギはオスメスが半々なので自然環境に近い、かがくの里で養殖をしたとき、もしオスメスが半々になれば「生物学的に性を変える環境要因がわかっていないので、それがウナギを通して初めて新しい環境因子がわかるかもしれない」とのこと。

 しかも、もしメスが出てきたら、川に放流して資源の増殖に役に立てるかもしれません、かがくの里で行う新養殖法がうまくいけばウナギを増やすことにも繋がるというワケ。

ポイント2

養殖開始は5月頃!ウナギの未来のため、かがくの里でのチャレンジが始まるのだ!