放送内容

第1421回
2018.04.15
巨木 の科学 植物

 日本人にとって、古くから信仰の対象とされてきた巨木。その数と種類において、日本は世界屈指の「巨木大国」なんです!いったい巨木の魅力は何なのか?科学で徹底解明します。そして、いま大人気の「巨木ツアー」に密着!樹齢1000年を超える巨木のパワーとは?さらに、高さ45m!巨木の高所診断に挑戦!
 今回の目がテン!はデカいだけじゃない、巨木の科学です。

巨木の魅力~巨木ツアーに密着!~

 巨木の魅力について教えてくれるのは、高橋弘さん。これまで30年かけて、3400本以上もの巨木を調査。8年前からは、巨木を巡るツアーも主催しています。月に一度行われる巨木ツアーも、今回で91回目。さっそく一行が向かったのは、静岡県。バスに揺られること2時間半。到着したのは、民家が立ち並ぶ集落の中。一行は、神社の境内へ。すると、樹齢1000年を超すと言われるスギの巨木。

 高橋さんによると、1000年生きてきた割にはすごい元気で、他の杉と比べても明らかに大きさが違うといいます。では、幹周りはどれだけ太いのか?地上1.3mの太さを測ってみると…幹の太さは10m32cm。高橋さん曰く、10mを超えれば超一級のスギだといいます。さらに境内には他にも巨木が。それは、樹齢300年以上と言われるイチョウ。

 よく見ると、かなり不思議なカタチをしており、いろいろと木に垂れ下がっています。これは、一般に「乳」と呼ばれるもの。「乳」とは枝や根っこに変化する、イチョウの巨木で多く見られるもの。

 これが数十年経つと下まで届き、そこから根が出て幹の一部になり、どんどん幹が太くなっていきます。だからイチョウはすごい成長が早いんです。
 そして一行は、次なる目的地へ。到着したのは、またしても神社。今回特別に許可を頂き、巨木を間近で見せて頂けることに。樹齢は推定1200年、県の天然記念物に指定されているクスノキ。

 木の周りには、パワーを感じると、巨木に手をかざす人が続出。高橋さんによると、山の中にあると周りの樹木との競争があり、一本だけ飛び抜けて大きくなるというのは難しく、人里にある巨木というのは、人間が植えてずっと保護して周りとの競争がない、それで大きくなるといいます。日本の巨木の魅力。それは、人が守り続けてきた木を、身近なところで見られることにあったんです。

巨木を救え~樹木医の仕事に完全密着!~

 神奈川県相模原市。その集落の一角にそびえ立つ巨木。それは樹齢、推定700年の大スギ。長いあいだ、住民たちにより守られてきたご神木です。

 そんな地元の宝に、最近、ある懸念が…。実はいま、台風や落雷による巨木の倒木が相次ぎ、中には甚大な被害を及ぼすケースもあるんです。そこで!樹木医の方たちに、巨木の診断をお願いすることに。まずは、樹の傷み具合を調べるため上から順に調べていきます。でも、一体どうやって登るのでしょうか?用意したのは、パチンコのような特殊な道具。実はコレ、樹に登るためのロープの支点作り。まず細いヒモを通して、それを実際に登るロープに掛け替えます。
 それではさっそく調査開始。裕太さんは、高所作業車に乗って、樹木医の作業をリポート。高さ15mあたりにやって来た裕太さん。しかし、ここからさらに登るといいます。じつは、樹木全体の状態を診断するため、とにかく頂上まで登る必要があるんです。その頃、先に登った池田さんは頂上付近に到着。見晴らしは良いですが…それはかなりの危険が伴う作業。

 高さが27mの地点の裕太さん。すると、だんだん上からお二人が降りてきました。木槌で幹の表面を叩いていますが、これは一体?これは打診といって、叩いて中に空洞があるかどうか診ているんです。すると、阿部さんがなにかを発見。折れてしまった枝を見てみると中が空洞になっています。ではいったい、なぜ空洞になってしまうのか?安部さんによると、枝が折れたあとに腐朽菌が入ったんだといいます。腐朽菌とは、木材を腐らせてしまう「木材腐朽菌」のこと。元はキノコの胞子として空気中に飛散し、木材の内部に入り込んで空洞を作ってしまうんです。
 さらにその下、樹の裏側に回ってみると…驚きの光景が!それは…大人2人がすっぽり入るほどの大きな空洞。その深さを測ってみると…11m。どうやら空洞は、根元近くまで広がっているようです。

 安倍さんによると、かなり大きい空洞で30cmぐらいの厚さしかなく、そこから倒れないようにするという方法であれば、ケーブリングというロープを張るという方法があるといいます。青根のシンボルであるスギの巨木は今後の協議を経て、適切な処置を施すことになりました。

厳選!専門家が選ぶ日本の巨木ランキング

 巨木の専門家、ひとり目はこの方!樹木医の後藤瑞穂さん。後藤さんはこれまで、都会に生きる数多くの巨木を診断してきました。そこで!「大都会でたくましく生きる巨木」をご紹介!
 まず第3位。後藤さんによると、とても生育が旺盛で、樹勢、樹形も美しい。中々そういう状態で残っている巨木は都会の中では珍しいので、そこが特徴的だといいます。東京ドームにほど近い文京区・本郷。そこに…ビルの合間に、巨木を発見!あの司馬遼太郎をして「一樹で森を思わせる」と感嘆させた「本郷の大クス」です。実はこのクスノキ、毎年秋に大規模な剪定作業を行っているんです。適度な剪定を行うことで、樹の形と生育を維持する。その姿はまさに…巨大な盆栽のようです。

 続いて、第2位は?後藤さんによると、歴史ある街並みの風情にすごくピッタリマッチしていて、景観としてもとても優れているとのこと。下町風情が色濃く残る、台東区・谷中。「美しい日本の歴史的風土100選」にも選ばれている、谷中のシンボル・ヒマラヤスギです。でもいったいなぜ、建物のすぐ隣にこんな巨木が生えているのでしょうか?実はこの巨木、元は植木だったんです。やがて根っこが植木鉢を突き抜け、その場に根を張りわずか90年で、お店の主人もビックリの巨木に生長したんです。

 そして栄えある、第1位は?後藤さんによると、駅チカ徒歩0分の巨木。向かったのは、大阪のベッドタウン・寝屋川市。京阪電鉄萱島駅、そのホームのど真ん中に…クスノキの巨木を発見!それはまさしく…駅チカ徒歩0分の巨木。実はこの樹、ホームの下にある萱島神社のご神木。でもいったいなぜ、駅のホームのど真ん中に立っているんでしょうか?1972年萱島駅の高架工事の際、クスノキの伐採が決定。しかしその後、地元住民による反対運動が起こります。700年の樹齢の樹を伐採して、もし何か事故が起こったら、それはいわゆるタタリだと。その陳情が決め手となり、当時2億円以上かけて、クスノキを生かすことに。住民たちの思いが込められた巨木は、今日も駅と街に彩りを添えています。

 巨木の専門家、2人目は…これまで3400本以上もの巨木を調査してきた、高橋弘さん。実は高橋さんは、巨木写真家としても活躍しているんです。そこで!「写真映えする巨木」をご紹介!
 まず第3位は…高橋さんによると、もう言葉が出ないぐらい美しい、日本人に生まれたからには一度は見ておくべき巨木。そこは…福島県・三春町。樹齢1000年!国の天然記念物「三春滝桜」です。シダレザクラとしては日本最大。咲き誇る姿は、まるで滝が流れ落ちるかのよう。日本人なら一度は見るべき桜の巨木です。

 続いて、第2位は?高橋さんによると、その生命力の凄まじさ。もう樹を通り越して壁かなんか岩のような感じだといいます。青森県・深浦町。目の前に立ちはだかるのは一本のイチョウの幹。幹周りは驚異の22m!写真映えするのは11月の紅葉の時期。ライトアップされた優美な姿もまた、一興です。

 そしていよいよ、栄えある第一位は!?高橋さんによると、樹形とか樹勢、樹齢とか太さとかを総合して日本ナンバー1の巨木。向かったのは、熊本県北迫町。地元で「寂心さん」と呼ばれ、親しまれてきたクスノキの巨木です。確かに美しい樹形と有り余る樹勢は、まさに圧巻の一言。さらに…枝や葉が茂る最上部の「樹冠」の大きさ。なんと直径50mもあるんだとか。そんなクスノキは、地元の方にとっては“心の拠り所”。写真映えする巨木第1位は、地元の守り神・寂心さんのクスノキでした。