放送内容

第1427回
2018.05.27
神社 の科学 場所・建物

 昔から老若男女問わず、多くの人が訪れてきた神社。近頃は、ご利益を求めて、全国の名のある神社を巡る人が増えているそうなんです。
 中でも、特にブームになっているのが御朱印集め。特に、若い女性たちが夢中になり、御朱印ガールという言葉が生まれたほど。なぜ、御朱印集めにハマるのか?専門家と神社を巡ってその魅力に迫りました!さらに心理学の視点から、神社詣でを徹底分析!そして鎮守の森に秘められた驚きの力とは?
 今回の目がテンは、今日行きたくなる神社を科学します。

御朱印集めの魅力とは?

 神社に行列ができるほどのブームになっている御朱印集め。御朱印ガールたちにその魅力を聞いてみると、「個性のある文字」、「手書き」、「自分だけの特別感」など、御朱印にはいろんな魅力があるようなんです・・・そこで!御朱印の魅力を探るため、後藤が人生初の御朱印集めに挑戦です。御朱印について教えてくれるのは神社や神話に詳しい國學院大學の平藤教授。
 最初にやってきたのは、縁結びにご利益があるとして有名な「東京大神宮」。まず気をつけなければならないのは・・・参拝。 御朱印はあくまで、参拝の証。先に必ず、参拝するのがマナーです。通常、社務所などに御朱印を頂ける受付があり、用意しておいたマイ御朱印帳を渡し、初穂料を納めます。するとさっそく、御朱印ガールたちを惹き付けるポイントが・・・
 神社の方が、丁寧に一枚一枚手書きで仕上げてくれる・・・。そこが魅力なんです。手書きの御朱印は、神社を訪れたその日その瞬間にしかもらえない世界でひとつだけのオリジナル。そこに特別感があるんです。最後に朱印を押して、完成。

 御朱印には、お参りしたという意味の奉拝、お宮の名前、日付が入ります。そして御朱印というだけあって、一番重要なのは最後に押す朱印。確かに御朱印ガールたちも、個性的で、アートでかっこいいといいます。そんな朱印の魅力を探るため、次の神社へ。
 やってきたのは、新宿にある花園神社。参拝をして・・・社務所へ向かいます。こちらの朱印には特徴があるそうで・・・。いただいた御朱印には2つ朱印が押してあります。下の方は花園神社という神社の名前の朱印、上の方は社紋、神社のシンボルが御朱印として押されています。朱印にはそれぞれ個性があり、水天宮では椿と巴を組み合わせたもの、招き猫発祥の地とされる今戸神社では招き猫の朱印が押されます。
 朱印に惹きつけられる科学的な理由はあるのでしょうか?デザイン心理学を研究する日比野先生によると、赤は前に飛び出して見える進出色、一方、青は後ろに引っ込んで見える後退色。赤・朱色というのはぱっと見非常に目立つため、そこに目がいっていいなという風に思ったりすることはデザインでもよくあるといいます。

 さらに、赤・朱色というのは、古い時代から特別な色、ある意味格式の高い色という意味があったので、なおさらありがたいというようなことを感じるとのこと。
 例えば、あの織田信長は私的な手紙には黒印を押していましたが公的な文書には朱印を押していました。ここからも朱印に特別な意味があったことがわかります。御朱印はその色にも、人々を惹きつける秘密があったんです。

 その後も安産や子授けのご利益があることで有名な水天宮、出世の石段と呼ばれる急な階段が有名で防火の神様を祀っている愛宕神社、江戸三大祭りの一つとして有名な山王祭が行われる日枝神社など、この日だけで5箇所の神社を巡り、御朱印集めを堪能しました!

神社のお参りの心理的効果

 平日の神社をのぞいてみると・・・スーツ姿のサラリーマンやOLさん、若者からお年寄りまでたくさんの人が訪れています。また、仕事帰り・昼休みに行ける神社を紹介する本が出るなど日常的に神社を訪れる人が増えているようなんです。
 何を求めて、私たちは神社を訪れるのでしょうか?謎解きをお願いしたのは観光心理学が専門の小口教授。先生によると、何気なく神社で行っている行動の中に、神社が持っている心理学的効果があるといいます。
 この日、訪ねたのは、府中駅から徒歩5分、街中にたたずむ大國魂神社。さっそくお参りをしてみることに・・・。神社の知られざる心理効果の一つが長い参道や石段。確かに長い参道や、長く急な石段は神社につきもの。例えば、伊勢神宮へ続く長い参道や愛宕山の頂上にある愛宕神社の出世の石段など、神社の拝殿や本殿は、入り口から遠く高いところにあることが多いですよね。こういう神社に、苦労してお参りするとよりありがたみが増すんだそうです。

 そして、参拝の前にお清めとして行う手水。この手水にも意外な効果が!結構冷たいのですが、この冷たい感覚が、五感の活性化に繋がっているといいます。小口教授によると、スマホやタブレットを使う、目が中心の生活は、いろんな感覚が使われていないことで大きなストレスになっているが、こうした皮膚感覚や香りなどを嗅ぐことによって、疲労やストレスが取れるといいます。五感が活性化したからか、気が付いたのは・・・静かさ。そこでどのくらい静かなのか、計ってみると・・・神社の外はおよそ70デシベル。これは掃除機の音を間近で聞いているのと同じぐらい!一方、神社の中はおよそ50デシベルで人気のない事務所と同じくらいの静けさでした。

 これは神社の周りを囲んでいる木々が、音を遮ったり、木の葉が揺れる心地よい音が不快な騒音を隠してくれるため。なので、普段、何気なく神社に行くだけで気分がリフレッシュしたり、ストレスが軽くなったりするようなんです。
 そして参拝。実はこの参拝にも意外な効果が!小口教授によると、お願いすることでとてもいい効果があるといいます。心理学では「目標設定理論」という考え方があります。参拝することで、目標が明確になることによって、モチベーションを高めるとてもいい機会になるそうです。

 神社の参拝はつつがなく終了。そういえば、神社の帰り道、皆さん、楽しみにしていること、ありませんか?そう、名物の和菓子!例えば、伊勢神宮の「赤福」、下鴨神社の「みたらし団子」など、神社の近くには、よく名物の和菓子がありますよね?大國魂神社の近くにも、ペリー来航の前年、嘉永5年創業の和菓子屋さんが。人気の名物はアユをかたどった鮎もなか。小口教授によると、その土地ならではの名物をいただく、これがとてもいいといます。甘いものを食べると多幸感があり、それが一つのご褒美になっている。そういうのをセルフギフト効果といい、自分に自分でご褒美をあげることによって、その行動が強化され、よりお参りに行きたくなるといいます。神社にお参りした後のあまーい和菓子というご褒美で、より幸せな気持ちになれるんだそうです。

 普段何気なくしている神社での行動には人々を惹きつける効果があったんです!

鎮守の森のスゴイ力

 神社を囲むようにして残された鎮守の森。古くから神聖な場所とされてきた鎮守の森は、開発されることもなく都会では貴重な、豊かな自然を残しています。実は、鎮守の森は、あるすごい力を秘めていると言います。
 「鎮守の森は、災害から人々を守ってくれる力があるんです。」
 そう語るのは、神社や鎮守の森が自然災害の際、どのような役割を果たすのかを研究する、藤田先生。鎮守の森が災害から人々を守るとはどういうことなのでしょうか?
 2011年の東日本大震災後に撮られた一枚の写真をご覧ください。津波で周りのものが根こそぎ流されたのに、鎮守の森に囲まれたこの神社は流されずに残ったのです。この写真が物語ることとは?鎮守の森は、タブやシイ、カシなど、一年中葉をつけている常緑広葉樹の森です。その土地に自生した常緑広葉樹は地中深くまで根をはり、他の木と根を絡ませあっているため非常に倒れにくいそうです。
 それは、津波の引き波で流された車がぶつかっても倒れず、せき止めるほどの強靭さ。しっかりと根を張った鎮守の森が緑の壁となって、津波の勢いを弱めたので、神社は流されずに残ったと考えられているのです。

 さらに・・・大規模な火災の際に、火が街中に燃え広がる中で、鎮守の森を含む森林があることによって延焼が食い止められ、人々が助かったという例が色々なところで報告されているとのこと。
 こちらは、阪神・淡路大震災後に撮られた常緑広葉樹の並木の写真。周囲が焼けつくされる中、鎮守の森と同じ常緑広葉樹の並木は燃えることなく残り、延焼を防いだというのです。

 藤田先生によると、常緑広葉樹は、葉に水分を多く含んでいるため、葉っぱの蒸発散やそれ自体が燃えにくく、大規模な火災が起きた際でも、火災から守ってくれるというところに繋がっているといいます。葉に水分を多く含む常緑広葉樹は火災にも強かったのです。鎮守の森には災害から私たちを守る力が秘められていたんです。