放送内容

第1447回
2018.10.21
ガラパゴス諸島 の科学③ 場所・建物 地上の動物 水中の動物

 この秋、放送30年目を迎えた『所さんの目がテン!』。それを記念して、世界遺産の第1号のひとつで、貴重な生物が数多く生息する「生き物たちの楽園」ガラパゴス諸島を徹底調査します!生き物大好き!桝太一アナウンサーが、憧れのガラパゴス諸島に初上陸!
 今回は、普通では決して立ち入ることのできない島で独自に進化した生き物たちに迫ります!

海底一面から顔を出すチンアナゴの大群!

 ダイビングをしたのは、サンタ・クルス島の北、ノースセイモア島の南に広がる海です。前々回の放送で上陸したノースセイモア島では、野生で暮らす海鳥たちの様々な生態が見られました。実は、この島の周辺の海は人気のダイビングスポット。ガラパゴスの海にはどんな世界が広がっているのでしょうか?いきなり出会ったのは、魚の大群!ガラパゴス諸島のまわりには、寒流と呼ばれる冷たい海流が流れています。この寒流には、豊かな栄養が含まれているため、プランクトンがたくさん発生します。そのプランクトンを食べに多くの魚が集まってくるのです。

 さらに、ガラパゴス諸島周辺にしか住んでいないガラパゴスアオウミガメがお昼寝している姿にも遭遇。一緒に記念撮影もしちゃいました。

 続いて現れたのは、ガラパゴスガーデンイールの大群。目がテンでも取り上げたことがあるチンアナゴの仲間です。チンアナゴは、体長30センチほどで、砂の中に隠れる変わった習性を持っています。野生のガーデンイールは警戒心が強く、近づくと砂の中に隠れてしまうため海底にカメラを置いて撮影してみます。すると…にょきにょきと砂の中から顔を出しました!よく見ると不思議なことに、みな同じ方向を向いています。実は、海流によって流れてくるプランクトンを食べているため、流れに逆らう方向を向いているのです。

 栄養豊富なガラパゴスの海は、彼らにとって最高のすみか。そのため、海底一面ににょきにょきと顔を出す、とても珍しい光景を見ることができるのです。ガラパゴスは、栄養豊かな海流のおかげで海の生き物たちにとっても楽園になっていたのです。

エスパニョーラ島で進化した、首の長いゾウガメ!

 続いて向かうのは、保護のため、厳しく立ち入りが制限されているエスパニョーラ島。今回、目がテンではガラパゴス諸島を管理する国立公園の調査に同行するという形で島に入る許可がもらえました。
 エスパニョーラ島に入る前に立ち寄らなくてはならないのは、検疫所。中に入ってみると、服を全部脱いで消毒をするように指示されます。これは服に植物の種や昆虫がいないか確認して消毒するための検査。すでに飛行機でガラパゴス諸島に入った時、靴の裏を消毒したり、荷物のチェックはしたはずですが、同じガラパゴス諸島でもエスパニョーラ島は厳しく立ち入りが管理されていて身につけるもの全てを徹底的に消毒します。
 さすがに着ているものをこの場で脱ぐわけにはいかないので、島に行くときに着る服を消毒してもらいます。消毒したあとは、マイナス3.5度の冷凍庫に1日以上保管、生き物が持ち込まれないよう念には念を入れます。

 エスパニョーラ島はガラパゴス諸島の中心、サンタ・クルス島からおよそ100キロ離れています。行く手段は船しかありません。8時間以上かかるため、船内で食事と睡眠をとり、夜通し船を走らせます。そして翌朝、ついにエスパニョーラ島に到着!
 この日の調査は、同行できる人数に限りがあり、佐藤アナは船で待機。桝アナと撮影隊で上陸することに。先に上陸して待っていたのが、生物学者のスティーブ・ブレイク博士。エスパニョーラ島のガラパゴスゾウガメの研究をしている方です。野生のガラパゴスゾウガメは、サンタ・クルス島ですでに見ましたが、ガラパゴス諸島では島ごとにゾウガメが違った形に進化しているというのです。エスパニョーラ島のゾウガメは、どんな姿をしているのでしょうか?
 ゾウガメに会うため、島の内陸部へと向かうと、足元には火山性の岩がゴロゴロ。まさに道なき道を進みます。さらに、足もとに気を取られていると、植物のトゲに刺されてしまいます。このあたりの環境はとても厳しく、まるで砂漠のよう。植物も草食動物から身を守るためにトゲを生やしているんだとか。ゾウガメもトゲのために好んで食べないのだそうです。
 調査を進めていると、乾燥したゾウガメの糞を発見。糞があるということは近くにゾウガメがいるということ。サンタ・クルス島のゾウガメは人が近づいても気にしないのですが、エスパニョーラ島のゾウガメはとても神経質ですぐに逃げてしまうため、物音を立てないようにと注意されます。 上陸から2時間、ついにゾウガメを発見しました!エスパニョーラ島のゾウガメは、サンタ・クルス島のゾウガメとは違い、キリンのように首を高く伸ばし、独特な姿をしています。

 エスパニョーラ島のゾウガメは、首を伸ばしやすいように甲羅の前方部分が高く反り上がっているのです。

 サンタ・クルス島は雨がよく降るので地面にたくさんの草が生えていますが、エスパニョーラ島は非常に乾燥していて地面に草が生えていません。ゾウガメはキリンのように高いところにあるものを食べなければならないため、長い時間をかけて甲羅の形が進化し、今のようになったのです。ガラパゴスのゾウガメは島によって、それぞれの環境に合わせて甲羅の形が変化したと考えられています。
 そしてエスパニョーラ島では、なんとサボテンもゾウガメに合わせ独自に進化していました。170センチ以上の場所に実ができているのです。

 エスパニョーラ島ではカメとサボテンが互いに競争するように進化していて、カメの首が伸びればサボテンはさらに高く、どんどんどんどん進化してお互いに高くなっていくのです。興味深いことに、ゾウガメのいないバルトラ島のサボテンは背が低いんです。

固い絆で結ばれた夫婦!ガラパゴスアホウドリ

 翌日は、エスパニョーラ島でしか繁殖しない、翼を広げると3mという巨大な鳥を探しに行きます。ゾウガメの調査チームに同行している私たちも特別な許可をもらい、テントを設営してエスパニョーラ島の沿岸でキャンプをさせてもらえることに。午後6時、調査チームと一緒に手作りの夕食をとっていると、突如、上空からフクロウが接近!ガラパゴスではフクロウも警戒心が弱いため、すごく近くにまで接近してきます。

 電灯もないため、午後8時には就寝。寝静まった午後11時、獣の鳴き声らしき音がしてきました。恐る恐る砂浜へ行ってみると、声の主は…なんとアシカでした!

 鳴いていたのはアシカの赤ちゃん。アシカは生後半年から1年間はおっぱいを飲んで成長します。お母さんに甘えて鳴いていたんでしょうか?ガラパゴス諸島は夜も驚きの連続でした。
 そして翌朝、巨大な鳥に会うためボートでエスパニョーラ島の東にある海岸へと移動します。上陸した私達を待っていてくれたのは、またしてもアシカの群れ!かわいい赤ちゃんがたくさんいました。そしてこの日は、船に泊まっていた、佐藤アナも合流。国立公園のレンジャーと共に、エスパニョーラ島にだけ巣を作る巨大な鳥を探します。探し始めて10分…その巨大な鳥を発見!正体は、ガラパゴスアホウドリでした。

 翼を広げると3メートルにもなるガラパゴスアホウドリ。離陸には助走が必要ですが、一度風に乗ってしまえば、長距離を飛ぶことができます。なんと、1200キロ以上離れた南米大陸沿岸まで餌を獲りに行ったという研究報告もあるのです。すると、アホウドリが謎の行動を始めました!オスとメスが、くちばしを激しくぶつけ合っています。これは、つがいになった2匹が絆を確かめるためにやる行動だと推測されています。

 さらに…今までの研究によると、ガラパゴスアホウドリは一生同じペアで連れ添うのだそう。ガラパゴスアホウドリはなぜ夫婦の絆を大切にするのでしょうか?理由は、彼らの子育てにありました。ガラパゴスアホウドリが、巣を作って子育てするのは世界でもエスパニョーラ島だけ。毎年、ここに渡ってきます。子育て中は、子供にも餌を与えなければなりません。長いときでは10日以上もかけて遠くの海へと餌をとりにいきます。その間、もう一方の親は呑まず食わずでヒナの世話をするのです。ガラパゴスアホウドリは、夫婦で協力してヒナを育てるため、夫婦の絆を大事にしていると考えられているのです。

 そんなガラパゴスアホウドリを守るため、レンジャーの皆さんは、定期的に個体数や繁殖状況を細かくチェックし、保護に役立てています。
 その時…親鳥に餌をもらえずに死にかけているヒナの姿が。一方の親が戻ってこない時、残された親がヒナのために餌を取りに行くケースがあり、その結果、ヒナが命を落とすこともあるのです。今、ガラパゴスアホウドリの数は安定しているため、このようなヒナを見つけても人間は干渉せず、自然に任せます。さらに、歩いていると無数のヒナたちの骨が散らばっている光景に出くわしました。恐らく、エスパニョーラ島最上位の捕食者でもあるタカの仲間、ガラパゴスノスリに食べられてしまったのだとか。親鳥と戦わないように、取り残されたヒナが狙われるのです。エスパニョーラ島では、自然の厳しさを間近で感じ、鳥たちの愛情あふれる子育てに触れることができました。