放送内容

第1448回
2018.10.28
かがくの里・田舎暮らし の科学 場所・建物

 荒れ果てた土地を切り開き、科学の力で豊かな里山を蘇らせる、長期実験企画!それが!目がテンかがくの里!7月。照りつける太陽と戦いながらも大成功した、阿部さんの一人夏野菜生活でしたが、夏野菜の世話をするだけじゃなく、もう一つのプロジェクトが進行していたんです!
 それが、里山を再生する上でどうしても出る間伐材を無駄なく使った小屋づくり!!着工から3か月!大工仕事は全くの素人の阿部さんが地元の職人さんたちの力を借りて取り組みました!
 今回は完成までの全てをお見せします!!

釘を使わず骨組みが完成!?

 はじまりは6月下旬、手作り温水器で汗を流した後、阿部さんが贅沢にも脱衣所が欲しいと言い出したんです。そこで阿部さんがまず相談したのが、この人!
 助っ人その1!里山再生プロジェクトでお世話になっている林業家の西野さん。実は、西野さん、とっても凄い人。阿部さんが以前、西野さんが建てた小屋を見せてもらったんですが、外も中もホント素敵!そこで、西野さん全面バックアップの下、露天風呂の隣に素敵な小屋造り計画がスタート!
 7月初旬、小屋づくりに使える木材を伐りだしました。スギやヒノキというまっすぐで加工しやすい針葉樹を全部で12本ほど。
 木は夏、水分を沢山吸い上げるそうで、皮をむいてみると濡れています。でも濡れたままでは、乾いた時、変形するため、使えません。
 そこで、伺ったのが地元の製材所。助っ人2人目は製材職人、中野さん。中野さんが、かがくの里山から出た木材を小屋づくりに使える板にカット。2週間、しっかり天日乾燥してもらいました。

 そして、7月中旬。この日、阿部さんが訪ねたのは、3人目の助っ人、大工の棟梁、森さん。棟梁はかがくの里のスギの木に、四角い穴をあけていました。その脇にあったスギには、ちょうど穴にハマりそうな加工が。
 小屋の骨組みは、ここで加工した木材を、かがくの里でくみ上げるそう。緻密な作業なので、加工は棟梁にお任せして阿部さんが里に戻ると、4人目の助っ人が登場。基礎工事をしてくれる豊田さんです。
 基礎工事とは建物の土台を作るもの。最初の作業は、穴掘り。基礎となるコンクリートを流し込む穴を掘る作業です。普通、穴掘りは重機で行います。でも、この場所は狭すぎて、重機が入れなかったんです。昔式の、穴掘り作業は大変な重労働。水平に張った黄色い糸を基準に上の赤い線が黄色い糸と重なる深さまで穴を掘ります。
 ところが、「真ん中掘ってるだけじゃダメ!平らに掘らないと!」と、厳しいダメ出し。確かに、阿部さんの堀った穴はデコボコ。そしてこちらがプロの仕事。
 掘り続ける事3時間。ようやく、基礎の基礎、穴掘りが完了。

 でも実はここからが本番。小屋の基礎となるコンクリートが土にしみださないように  砂利を敷きます。1回の砂利でおよそ100kg!豊田さんは軽々やってるけど、とっても重いんです!御年62歳の豊田さん。砂利をならして、固めて軽快に作業を進めます。
 ここに、鉄筋を入れ、コンクリートを流し込むんですが、大事なのは水平。水平じゃないと小屋も傾いてしまいます。この日はここまで。コンクリートが固まるのを待ちます。

 次の日。型枠を組み、再びコンクリートを流し込んで、あとは完全に固まるのを待つだけ。1週間ほどで、基礎はすっかり固まりました。
 そしていよいよ、小屋の骨組みづくりにとりかかるこの日、人手が必要とのことで、阿部さんの相方、原田さんもお手伝いに。
 さっそく出来たばかりの基礎に、建物の土台となるスギの木を取り付けます。そこに、棟梁が加工した柱を差し込んでいきます。
 これは木組みと言われる古くから伝わる骨組み。釘などの金属は使わないんです。湿気が多い日本では、金属はさびやすく強度が保てないため、木だけで組み上げるという知恵。実は、あの法隆寺でも使われたといわれる1000年以上も前から脈々と続く日本伝統の工法。木組みだと、結合部分に遊びがあるので、地震でも倒れにくいといいます。
 作業開始から3時間。
 骨組みができたら、今度は屋根作り。まずは野地板と言われる屋根の下地を貼ります。これも、かがくの里から伐りだしたスギ。
 屋根の下地、野地板は雨漏りを防ぐ、ある加工をするんです。それは、あいじゃくり。
 棟梁は、野地板の端っこをL字に削ります。2枚ともL字に削って、合わせると、ピッタリ。確かにこれで、雨漏りの原因となる隙間が無くなります。あいじゃくりした野地板を貼っていくこと2時間。屋根の下地が完成。

 そして翌日。阿部さんこの日は、命綱を付けて、屋根の上での作業です。最初の野地板は横。2重目は縦に板を貼り雨が絶対に漏れないようにする工夫。
 作業開始から6時間。その時、雨が降り始めました。下の野地板に水が染みると腐りやすくなってしまいます。足元に注意しながら作業を急ぎます。そして、屋根の2重目、なんとか終了。見た目もずいぶん小屋らしくなりました!!

スギよりヒノキは腐りにくい!?

 7月下旬。屋根づくりが落ち着き、今度は床作り。まずは、根太と言われる、床板を支える横木。ここでも、釘などは使いません。基礎の上の杉をのみで削り、根太を入れる差込口を作るんです。できた差込口に木材を打ち込めば完成。根太は全部で4本入れました。
 床板となるあいじゃくりしたスギ板を貼っていきます。根太を入れたことで、板にネジが打ち込めるというわけ。
 そして、床が完成。

 次に、西野さんが持ってきたのは窓。取り壊した旧家からもらってきたアンティークです。阿部さん、その窓を取り付けるための横木をハメる穴を削ります。阿部さんが削った穴に台となる柱を差し込んでみると、ぴったり。
 続いては壁。もちろんこれも間伐材のスギ板。そして、棟梁作の扉をとりつければさらに家らしくなりました。壁は一枚だけだと隙間風が入ってしまうそうで、もう一枚、外壁を貼ります。
 雨にさらされる外壁に使うのはスギではなく、里山のヒノキ。その理由は、ヒノキはスギよりも腐りにくいから。
 木材を腐らせる原因は、腐朽菌という菌。実はヒノキの香り成分には、この菌を抑制する働きがあるんです。なかでも、木材の中心にある赤身といわれる木を支える部分に、その香り成分がたくさん含まれているんです。そこで、外壁には、かなり腐りにくいと言うヒノキの赤身を使います。
 ここで現れたのが5人目の助っ人。電気工事士の菊池さんです。菊池さんの手によって、素敵な照明が。

 完成間近の小屋づくり。この日、西野さんが知り合いが捕ったというイノシシ肉を持ってきてくれました。昔は自らも猟をしていたという西野さんが編み出した、いちばんイノシシ肉がおいしくなる下処理とは。
 まずヨーグルトをもみこみます。ヨーグルトに含まれる乳酸菌が、肉の繊維をほぐし柔らかくなるんです。続いて、匂いを消すために味噌を混ぜ込み最後に出汁で味を調えます。この日は串にさして、炭火焼きです。
 阿部さんたちがアンティークの窓を付け終わったころ、イノシシ肉の炭火焼きも完成。
 おいしく進む小屋づくり!完成間近です!!!

日本伝統の屋根工法“小羽葺き”とは

 9月上旬。この日は最後の大仕事、屋根の仕上げです。屋根の3重目には防水シート。でも見栄えが良くないので、最後の4重目は、小羽葺き。
 小羽葺きとは、木を瓦風に並べる屋根のこと。緑豊かな日本ならではの、伝統的な屋根の工法です。材料は腐りにくいヒノキ板。でもその枚数がとんでもない数で、なんと300枚以上!!しかも1枚の板にネジを大体8本打ち込みます。
 貼り終えたのは2日後。結局貼った木羽の枚数はなんと500枚以上!!

 そして、いよいよ小屋づくりは最終仕上げ!西野さんが取り掛かっていたのは、お風呂に入ったあと玄関までに足が汚れないようにとデッキ作り。
 一方阿部さんが取り組むのはペンキ塗り。そこで登場したのが、最後の助っ人、中野さん。中野さんは、西野さんが最初に建てた小屋の持ち主。あの小屋の色塗りは中野さんがやったんです。
 翌日。こちらが、かがくの里山から伐りだした木で作った小屋。
 玄関と露天風呂をつなぐデッキには、間伐した栗の木を使いました。
 そして内装は、木目をそのまま生かし、木のぬくもりが肌で感じられる造り。そして大きく開くアンティークの窓からは、かがくの里の田んぼや畑が一望。春夏秋冬、季節の移ろいを楽しめそう。脱衣所とは思えない、素晴らしい小屋が完成しました。

 その夜。小屋づくりに協力してもらった助っ人たちに集まってもらい大宴会。といっても、並んだ料理は、助っ人たちが持ち寄ってくださったものばかり。
 そして〆は、月見そば!実はこの日は十五夜でした。
 小屋の完成を祝う、真ん丸お月様!収穫祭に向け、かがくの里、素敵に変身中です!