放送内容

第1457回
2019.01.06
かがくの里・田舎暮らし の科学[里のこぼれ話①] 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー 水中の動物

 5年にわたり続けてきた、科学者たちが豊かな里山をよみがえらせる長期実験企画、かがくの里。2018年11月。ウナギ養殖プロジェクトで大きな成果が!通常の養殖場で、エサをやって育てると99%がオスになってしまうウナギ。そこで去年6月、かがくの里の池に放流して育てたら、調べたウナギのほとんどがメスに!
 でも、わずか5年前、ここは何もないただの荒れ地でした。様々な科学者たちは、どのようにしてこの荒れ地を開拓し、豊かな土地へと生まれ変わらせたのか?そこで今回は、かがくの里5年の軌跡を様々なテーマで、一気にご覧いただきます!泣く泣くカットしてきた未公開映像もたっぷりお見せします!

田園編

 5年前に出会った茨城県のおよそ2000坪の土地。持ち主が数年前にここを離れ、放置されたことで荒れ放題でした。
 この土地を最初に訪れた科学者は、農業の専門家松村先生。まずは、この荒れた土地から最初の作物を収穫するまでを、一気にお見せします!
 2014年12月。松村先生指示のもと、地元土木業者さんの手を借りながら、ここに畑と田んぼを造りました。
 しかしこの場所は、畑にするには重大な欠点があったんです。それは、水はけの悪さ。これをなんとかしないと作物が育たないというんです。雨の翌日はさらにひどく、一度ぬかるみにはまると、長靴が抜けなくなるほど!根で呼吸する畑の作物は水はけが悪いと息が出来ず、腐ってしまいます。松村先生は、土の改良が必要だとおよそ3tもの堆肥を畑に運び込みました。堆肥にはおがくずやもみ殻が入っていて、隙間が沢山あります。これを土に混ぜてやることで、水が染みこみやすくなるんです。
 でもこれ、単純な作業ですが、やるとなるとすごーく大変!手伝ってくれたのは、松村先生の教え子2人。シャベルでカゴに堆肥を入れて、畑へ運び、同じ面積に広がるようにカゴの堆肥を撒いていきます。スタッフも総出で作業すること4時間!なんとか3t全ての堆肥を撒き終わりました。
 そのあと、普通は畑では使わない水田用の車輪をつけて耕運。堆肥を混ぜ込みました!これで、ようやく作物が育つ畑に。

 そして、ここに植えた記念すべき最初の作物は、ジャガイモ。でも、まだ水はけが不安な松村先生から、普通だと10cmとか深く植えるが、今回は浅く植えて上に土をかけるという植え方の注意が。
 キタアカリと男爵イモ、2つの品種を土をかぶせるようにして植えていきます。農作業をやったことがないスタッフも手伝って、日が落ちるギリギリまで作業しました!
 それから1か月。土壌改良の効果が出てジャガイモが芽吹いてくれました。
 里の初めての作物、少し掘り返して土の中を確かめてみると、小さな小さなジャガイモが!
 しかし5月、ある異変が。一部が芽吹かず隙間ができています。掘り返してみると種イモが土の中で腐ってしまったんです。そのワケは周囲の土に水分が多すぎて呼吸できなかったから。
 でも、どうしてこの場所だけ?それは植える時に松村先生が言っていた注意点にありました。それは、あまり深く植えないこと。つまり、ここだけ深く植えすぎたようなんです。この場所を担当したのは、農作業は素人の番組スタッフでした。
 そんな大失敗がありつつもほとんどのジャガイモはすくすくと育ち、迎えた7月。深く、くわを入れると中から、かがくの里、初めての実りキタアカリ!

 さらに!男爵イモも収穫!さっそく採れたてジャガイモを調理します!調理法はシンプルに、鍋で蒸かして蒸かしイモに!
 鍋を加熱するのに使ったのは、今や、かがくの里にはかかせないロケットストーブ。これを持ち込んでくれたのは自然エネルギーの専門家、根本先生でした。ロケットストーブは一斗缶の中に煙突が入っていて、それを断熱材で囲ってある構造。この煙突で熱せられた空気が上昇気流となって上がっていきます。すると煙突内部の空気が薄くなり入口から空気が吸い込まれていくんです。そのため、熱効率が非常によく、火力も強い。
 かがくの里初の収穫物、じゃがいもを調理。塩も振らずにそのまま一口。自分たちで作った作物は蒸かしただけでも特別なおいしさでした。あれから4年、かがくの里では様々な作物が実るように。初夏、水田でもち米を植え、秋に稲刈りをして収穫。ここで育てたササゲと炊いてお赤飯に。冬に撒く小麦は、真夏、美しい黄金色になった頃が収穫の時。調理科学の専門家、露久保先生がこね、阿部さんが作った窯で焼けば、ホカホカのパンに。
 夏はエダマメとしても食べられる大豆は冬、枯れた頃に手作業で収穫。大豆は、露久保先生と豆腐を作って、湯豆腐にしたり、真冬に仕込んで熟成させてお味噌を作ったり。
 荒れ果てた土地は豊かな田畑になりました。今年は一体どんな作物が育って、どんな料理が頂けるんでしょうか?!

池編

 そもそもどうしてかがくの里に、池を造ったかというと、実はここに田んぼを作る上で、松村先生が必要だと言い出したんです。田んぼを造るうえで、一番大事な水の確保のために掘られた池。しかし、肝心の水はどこにあるのか?松村先生は湧水を探しに裏山へ。
 すると、茂みの奥に湧水を発見。

 そこで地元の土木業者さん協力の下、山の湧水を里まで引き込むことに。まず、湧水を溜めておくための穴を掘り、水が地下に染みこんでいかないよう、金属の箱を埋めます。箱にたまった水はホースで、傾斜を利用して、かがくの里へ。その結果、見事キレイな湧き水が池に溜まっていきました。こうして、かがくの里のため池は生まれたんです。

 そもそも、田畑の水を確保するための池。水の流れも、季節によって変わります。稲作が始まる5月頃は、直接田んぼに水を入れます。田んぼと池は地下のパイプでつながっていて田んぼの水位が一定の高さになると、水は池へ流れ込むと言う仕組み。
 夏には、池の水を畑にまいて利用していましたが、それだけじゃもったいないと、松村先生。「釣りをして七輪なんかで焼いてビールでも飲んでみたい」といいだしました。
 この夢を叶えるためにやってきたのが、魚養殖の専門家、千葉先生。かがくの里のため池を視察した結果、ここで養殖できそうな魚はドジョウだといいます。確かにドジョウ養殖は、かがくの里にピッタリ。ドジョウは普段は池にいますが、産卵の時は田んぼに入り、卵を産みます。すると田んぼの稲にいい影響が!
 雑食性のドジョウは泥の中のプランクトンや小動物を泥ごと吸い取りエサにするため、泥が水中に巻き上がり光が届かなくなることで、雑草が生えにくくなるんです。

 その後、ドジョウが逃げ出さないよう池にシートをはりました。そして、2015年の収穫祭で所さんがドジョウ1000匹を放流。冬の間は、泥の中で冬眠していましたが。翌年の春。ちゃんと育っているか池をさらってみると、ギンヤンマのヤゴを発見。さらに、メスがオスの背中に卵を産み、オスが世話するコオイムシ。昔は水田などの水辺に沢山いましたが日本の水辺の環境が悪化、現在は、準絶滅危惧種に指定されています。他にも、ゲンゴロウやタガメなどさまざまな水生昆虫を発見。
 貴重な虫たちがいるのは、実は農薬を使っていない田んぼが近くにあるから。堆肥などを入れたことで栄養豊富な田んぼの土。水をはる5月頃から水温が上がり植物プランクトンが大発生。これが池に流れ込むことで、植物プランクトンをエサにする動物プランクトンが増え、それを食べに、虫たちがやってきます。
 そして、元気なドジョウも発見。しかも撮影のために掌に乗せてみると、おもしろい現象が。
 実はドジョウ、エラ呼吸の他に腸でも呼吸をします。空気が腸を通りすぎる時音が出るんです。さらに、放流からわずか半年で、ドジョウはすでに稚魚を産んでいたんです。

 ドジョウなどの魚にとってため池はエサが豊富で住みやすい環境ということ。
 そこで千葉先生は新たな魚の養殖に挑戦することに。それは、1kgおよそ3000円で取引される高級魚ホンモロコ。およそ1000匹を放流。すると、放流からわずか一月後、ホンモロコも稚魚を産んだんです。養殖と言っていますが、人工的なエサも与えず、世話もせず勝手に魚が増えていくという、ほったらかし養殖。
 この環境で去年始まったのがウナギの養殖プロジェクトでした。人工的な生け簀でエサをたっぷり与えて育てると、ほとんどがオスになってしまうウナギ。自然発生したプランクトンや、ドジョウやホンモロコの稚魚がたくさんいる、自然環境に近い状態のため池で、ウナギを育てる事、5か月。放流したときは体長10cmだったウナギを探してみると、なんと、35cmの大きさに!そして、調べたウナギのほとんどがメスになったんです。