放送内容

第1530回
2020.06.14
瞬間ハンター・氷の滝つぼ の科学[前編] 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 様々な条件が重なった時にのみ起こる美しい自然現象や、人が作り出す珍しい現象。そんなレアな現象の瞬間を撮影する“瞬間ハンター”。
 今回は、標高2000mの雪山に挑みます!そこでハントする瞬間は、一生に一度は見たいと言われる、幻の氷の滝つぼ!その滝つぼを瞬間ハントするため、金丸慎太郎さんが雪山でのミッションを開始!しかし、滝つぼを見るまでに過酷な試練が!果たして、無事に氷の滝つぼをハントすることはできるのでしょうか。
 今回の目がテンは、「貴重な瞬間を狙え!瞬間ハンター 氷の滝つぼ編」です!

滝はどのようにできるのか

 日本人に、古くから信仰の対象として、さらに景勝地として愛されてきた“滝”。
 全国各地には、巨大なスケールのものや、圧倒的な美しさを誇るものまで、様々な形状の人気の滝があります。それらの滝は、形成過程により、その姿がまったく異なるものになるのです。
 地形について研究する小口教授によると、滝の形成の一つとして、溶岩が流れてきて硬い地層となり、この硬い地層と柔らかい地層が入り混じる場所で、柔らかい地層が川に浸食されると、やがて段差ができ、これが滝となります。硬い地層と柔らかい地層の分布によっては、いくつかの段ができることもあります。このように地層の分布によって、滝は色々な形になるのです。

 壁にそって、ほぼ垂直に落下する「直瀑」、滝の水が階段状に流れる「段瀑」、そして、緩やかに傾斜した岩壁を水が流れていく「渓流瀑」など。
 そんな自然が生み出す多様な滝を、愛してやまない人たちがいます。これまで1000以上もの滝を訪れてきた、滝愛好家の森本さん。そんな森本さんが最終目標としていたのが、今回、金丸さんが瞬間ハントする「百四丈滝」。

 森本さんが訪れたのは夏の時期でしたが、その姿に、涙が出るほど感動したのだとか。しかし、今回金丸さんが狙うのは、この滝が冬の時期だけ姿を変えるという、氷の滝つぼ。滝つぼとは、滝の水が落ち、深く窪んだところ。氷の滝つぼは、ただここが凍るだけではなく、特別な姿になるというのです。滝を愛する森本さんも見たことがない、まさに幻の滝つぼなのです。雄大な滝が冬に生み出す、貴重な氷の滝つぼとは?

瞬間ハントに向けて

 今年3月、冬山登山初挑戦の金丸さんは、瞬間ハントに向けて雪上訓練を行うことになりました。訓練の地は、群馬県にある谷川岳。教えてくれるのは、山岳ガイドの遠藤晴行さん。谷川岳の登山口近くの斜面を使って、ピッケルワークの基本、滑落停止を訓練します。
 ピッケルとは、冬山に欠かせない杖のようなもの。ピッケルを使って、斜面を滑り落ちた時に止まる、滑落停止を学びます。何度も何度も、繰り返し練習。様々な体勢で、滑って落ちた時の訓練を行いました。その後も、冬山登山に必要な基本的な技術を、みっちり学ぶこと3時間半。いよいよ、氷の滝つぼの瞬間ハントへと向かいます。

 アタック前日。石川県へ移動し、今回のガイドさんと打ち合わせを行います。ガイドをしてくれるのは、山本史朗さん。いくつもの海外の山を登頂してきたベテランガイド。そして、奥田さんと小林さん。7000m級の山を登頂してきたベテランです。
 金丸さんが目指す場所は、標高2700mの山の中腹にある氷の滝つぼ。ルートは、ふもとの登山口から登り始めて、1日目はアップダウンを繰り返しながら、標高1700mの無人小屋を目指し、ここで夜を過ごします。2日目は急斜面を登り、標高2000mの場所から氷の滝つぼを見るというルートです。距離は往復で20km。時間は20時間にもなります。

アタック当日

 重さ11kgの荷物を背負い、氷の滝つぼを目指し午前5時50分、登山開始。1日目の目的地は、標高1700mの無人小屋。距離はおよそ7kmですが、なんと高低差は900m!日が暮れる前に登りきらなければならず、初心者の金丸さんにとっては辛い登山です。
 1日目のルートには、大きく2箇所の難所が。

 ここを乗り越えて、やっと小屋にたどり着くことができます。
 登り始めて2時間。ここで一旦休憩です。まだ今日の行程の3分の1も進んでいませんが、すでに疲労が。さらに足に痛みも。痛みに耐えながら、ゆっくりと進んでいきます。
 ここで、ガイドの山本さんが、ヤドリギを発見。

 ヤドリギとは、他の樹木に寄生しながら生きている植物。鳥のフンに混ざった種が、樹木の枝に付着し、発芽。枝に根が入り込み、樹木から栄養分をとり、成長していくのです。この時期だからこそ、樹木が枯れ、はっきり見える貴重な瞬間です。

 疲労困憊の金丸さんに、最初の難所が待ち受けていました。現れたのは、急斜面の崖。

 気温はマイナス2℃。寒さでかじかむ手で、ゆっくりと登っていきます。滑って落ちてしまえば、怪我をしてしまう危険な場所ですが、ようやく、ひとつ目の難所をクリア。
 そんな金丸さんに、今度は吹雪が襲ってきました。まだ、今日の行程の半分しかきていません。
 すでに気持ちが折れそうになっている金丸さんですが、無事に氷の滝つぼをハントすることができるのでしょうか。