放送内容

第1531回
2020.06.21
瞬間ハンター・氷の滝つぼ の科学[後編] 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 様々な条件が重なった時にのみ起こる美しい自然現象や、人が作り出す珍しい現象。そんなレアな現象の瞬間を撮影する “瞬間ハンター”。
 今回訪れた場所は、石川県。そこで狙う瞬間は、なんと標高2000mの雪山の中に!それは、一生に一度は見たいと言われる、幻の氷の滝壺。その氷の滝壺を瞬間ハントするため、金丸慎太郎さんが雪山でミッションを開始!
 今回の目がテンは、「貴重な瞬間を狙え!瞬間ハンター 氷の滝壺 後編」です!

ようやく小屋に到着

 金丸さんが目指す場所は、標高2700mの山の中腹にある氷の滝壺。登山ルート1日目は、2つの大きな難所を乗り越え、標高1700mの無人小屋を目指し、ここで夜を過ごします。2日目は、今回最大の難所である急斜面を登り、標高2000mの場所から氷の滝壺を見るというもの。距離は往復で20km。時間は20時間にもなります。

 雪が降る中、氷の滝壺を目指し、午前5時50分、登山開始。すると、最初の難所が現れました。目の前に現れたのは、急な崖。最初の難所を登りきった金丸さん。しかし、吹雪に見舞われ、出発してわずか4時間で、気持ちもすさんでしまいました。疲労困憊の金丸さん。しかし、日暮れまでに小屋へたどり着かなければならないため、5分ほどの休憩で、すぐに出発です。
 すると、ガイドの山本さんが、木の根元に空いた大きな穴を発見しました。これは、ツリーホール。

 「根開き」ともいい、樹木の根元の雪が溶けて、穴が空いた状態をいいます。このようなことが起こる理由は、いくつか考えられているのですが、一説には、樹木が根から吸い上げる水分は外気より温かいため、幹の温度が高くなり、その周りの雪だけが溶けてしまうためと考えられています。
 出発して6時間。ここに2つ目の難所が待ち受けていたのです!それは、細い尾根の道。一見、道は広く見えますが、左にある雪は雪庇といい、ひさしのようなもの。

 尾根の雪が強風によって張り出したもので、下は空洞のため、上を歩くと崩れ落ち、そのまま谷に落ちてしまいます。金丸さん、一歩一歩慎重に歩いていき、無事、2つ目の難所をクリア。
 出発からおよそ8時間。山の先に、今日の目的地である小屋が見えてきました。さらに歩くこと2時間。出発してから10時間が経ち、ようやく小屋に到着! 雪も収まり、雄大な景色を望めます。しかし、金丸さんは景色を見る余裕もなく、さっさと小屋の中へ。そして日も落ちて、待望の夕食。小屋の室温は1℃。冷えた体を温めます。翌日は4時起きのため、早めの就寝です。

最大の難所「美女坂」

 昨日の天気が、うそのように晴れています。たっぷり寝て、少し元気を取り戻した金丸さん。目的地まで、距離はおよそ2km、高低差は300mほど。しかし、元気を取り戻した金丸さんに、「美女坂」と呼ばれる今回最大の難所が待ち受けていたのです!

 距離は400m。傾斜は最大50°以上。滑落防止のため、ロープをつなぎ、登っていきます。これを登りきれば、待ちに待った氷の滝壺に出会えます!
 一歩、一歩、ゆっくりですが、確実に歩みを進めます。そして1時間かけて、今回最大の難所をクリア!しかし、滝壺まで、あと1.5kmもあります!最後の気力を振り絞って歩きます。

幻の氷の滝壺に到着!

 登り始めて3時間。ついに幻の氷の滝壺をハント!

 文字通り、壺のような姿を見せています。滝の落差は90m、いわゆる「直瀑」。滝壺の高さは推定20m。勢いよく滝の水が氷の壺に流れ落ち、雄大な姿を見せてくれます。
 ドローンを飛ばし真上から見ると、真ん中に穴が空いていることがよくわかります。氷でできた壺に、滝の水が流れ落ちる、何とも不思議な光景。これぞ、滝愛好家も一生に一度は見たいと憧れる、氷の滝壺です!

 そして、9時間かけて無事下山。金丸さん、お疲れ様でした!

なぜ氷の滝壺ができるのか

 幻の氷の滝壺。なぜ、あのような不思議な形状になるのか。
 冬になると、滝の下に溜まった水の表面が凍り、そこに雪が積もります。すると、滝の水しぶきが周囲に飛び散り、凍ることで、滝の周辺が盛り上がっていきます。この百四丈滝は水量が多いため、冬になっても凍らず、飛び散った水しぶきだけがどんどん凍るため、やがて、滝の周りに20mほどの氷の滝壺が出来上がるのです。
 このような滝は、日本ではここだけと言われています。滝の水は、冬の間は滝壺の中心に流れ落ち、雪の下を通って沢へと流れます。

 実はこの滝、氷の滝壺だけではなく、雪のない時期もすごいのです!滝愛好家の森本さんが撮影した夏の映像では、落差90mの迫力ある滝を、真下から見ることができます。さらに滝壺まで降りることまででき、迫力ある滝の裏側に回り込める「裏見の滝」なのです!
 季節により表情を変える、魅力あふれる滝。今回は、一生に一度は見たい、幻の氷の滝壺を捉えることができました!