放送内容

第1615回
2022.03.06
から揚げ の科学 食べ物

 家で食事をする機会が増え、人気なのが「から揚げ」。日本から揚協会の調査によると、から揚げ専門店の数は、2018年の1408店舗から、わずか2年で、2445店舗とかなり増えているんです!さらに、好きなおかずランキングでも、名だたるおかずを抑え2年連続1位を獲得。年間消費量(推計)は400億個を越え、まさに国民食とも言えるから揚げ。
 なぜから揚げはこんなにも人気なのか!?科学の力で徹底調査!さらに!パサパサしがちな胸肉が、“あるひと手間”で激変!今日から真似できる、ジューシーで柔らかい絶品“胸肉から揚げ”のレシピをご紹介します。今回は、「から揚げ」の魅力に迫ります!!

なんでから揚げは人気なの?

 今回、科学的に調査するため協力をお願いしたのは、科学調理の専門家、露久保先生です。

鶏のから揚げが人気な理由、その1「鶏肉は安い!」
 から揚げの人気の理由のひとつとして、鶏肉が他のお肉に比べてお値段がお手頃なことも。食肉の卸売価格を見ると、豚や牛に比べ、鶏肉は値段が安く、家庭料理に取り入れやすい食材なんです。そのため、から揚げは家庭でのおかずやお弁当など、さまざまな場面で登場。日本人に馴染みのあるおかずとして愛されてきました。

鶏のから揚げが人気な理由、その2「作り方がシンプルで安定した味を作りやすい!」
 天ぷらの衣は、水・小麦粉・卵を混ぜ合わせ作りますが、配合や揚げる温度を間違えると、サクサクした食感にならないことも。またトンカツの衣は、豚肉に小麦粉・卵・パン粉を順番につけるため、準備や調理に手間がかかります。一方、から揚げは下味をつけ、衣は小麦粉をまぶすだけというシンプルなもの。

鶏のから揚げが人気な理由、その3「やわらかく肉汁たっぷり」
 露久保先生は、鶏肉、牛肉、豚肉と一緒に調理をして比べてみるとわかるといいます。
 そこで、から揚げによく使われる鶏のもも肉と、牛と豚のもも肉を使って、それぞれから揚げを作り、比較します。
 3種類のもも肉を、同じくらいの大きさ・厚さに切り分け、鶏のから揚げと同じく、醤油、酒、生姜、ニンニクで味付けをし、小麦粉をまぶし揚げてから、それぞれどんな違いがあるのか、カットしてみます。
 まずは鶏のもも肉。ふっくらとして肉汁がありジューシーな印象。続いて、豚のもも肉。繊維がぎゅっと詰まっていて、肉汁はあまり感じられません。そして最後は、牛のもも肉。肉の繊維が目立ち、肉汁も少な目な印象。
 そこで、硬度計で厚さ1cmまで力をかけ、鶏、牛、豚それぞれの“肉の柔らかさ”を計測。牛のもも肉は27.57N。豚のもも肉は40.45N。鶏のもも肉は、9.94N。鶏のもも肉が最も柔らかいことがわかりました。

 これはお肉に含まれているタンパク質が影響しています。タンパク質は加熱をすると凝固と収縮が起きます。凝固によってかたくなり、収縮によって肉が縮むんです。牛や豚のもも肉は、脂肪が少なく、加熱によって凝固し収縮する筋原繊維タンパク質などの割合が高いので、高温で揚げると硬く筋っぽさを感じてしまうんです。また収縮によって、水分が押し出されジューシーさがなくなってしまうんです。
 そのため 牛のもも肉は、赤味を残して仕上げ、薄切りにするローストビーフにしたり、豚のもも肉は、薄切りにして、しゃぶしゃぶや炒め物にしたり、煮込んで柔らかくします。また、牛や豚のもも肉を揚げて調理する場合には、脂肪が多いものや別の部位を使用することが多いんです。
 一方、鶏のもも肉は、凝固し収縮するタンパク質が牛や豚に比べて少ないため、高温で揚げても柔らかく肉汁たっぷりのから揚げになるのです。

 また、鶏肉の脂は牛や豚の脂に比べると低い温℃で溶けやすいのも人気の理由。
 鶏、牛、豚、それぞれの脂を用意し徐々に温めてみると、鶏肉は30℃前後で溶けるのに対し、牛や豚は40℃を超えないと油が溶けませんでした。つまり、鶏肉のから揚げの脂は冷めても“口の中の温度で溶ける”ため、美味しく食べることができるんです!!

専門店のから揚げを科学的に分析!

 まず向かったのは、から揚げ専門店「からやま」。お客さんに、お店の魅力を聞いてみると、一番の魅力は、カリッカリの衣!時間が経ってもその状態が続くというんです。さっそく、作り方を見せてもらいます。
 まず、50gほどにカットした鳥のもも肉に秘伝のタレをかけ、しっかり揉み込んだら、冷蔵庫で一晩、寝かせます。
 続いては衣。使っているのは、馬鈴薯のでんぷん。馬鈴薯でんぷんとは、じゃがいもからとれるでんぷんで、片栗粉の原材料としても多く使われています。から揚げの衣には、小麦粉と片栗粉が使われることが多く、タンパク質の多い小麦粉はしっかりとした衣に、一方でんぷんで構成された片栗粉は、油を吸う量が少ないため、さっくりとした食感になるんです。

 衣をつけたら、冷蔵庫で、さらに一晩寝かせます。実はここにも、衣がカリッと仕上がる秘密が。一晩置いている間に、肉の表面の水分が衣の方にうつります。その水分の含んだ衣を揚げることでさらに衣の中の水分を蒸発させます。片栗粉で作った衣は時間が経つとお肉の水分を吸ってべちゃっとなりやすいが、あらかじめお肉表面の水分を衣の方に移していてさらに蒸発させているので時間が経ってもザクザク感が無くならないんです。
 揚げ時間は180℃で6分。一晩寝かし表面に出てきた水分を、揚げて蒸発させることで衣のカリカリとした食感が長続きします。手間と時間をかけることでカリっとジューシーな鳥もも肉のから揚げに仕上がるんです!

 次に、向かったのは、埼玉県にあるから揚げ専門店「鶏笑」。お客さんに、お店の魅力を聞いてみると、なんと一番人気は、定番のもも肉ではなく、胸肉のから揚げ。

 パサつきやすい胸肉、どうやって柔らかくジューシーに仕上げているのでしょうか。その秘密を探るため、作り方をみせてもらいます。
 まず、皮を外し、余分な脂身をとったら食べやすい大きさにカットします。次に、タレに漬け込みます。秘伝のタレは醤油ベースでニンニク少なめの生姜を多め。
 ここでポイント!生姜に含まれる酵素の分解によって、タンパク質が収縮しにくくなり肉汁もとどまりやすくなるんです。生姜たっぷりのタレを胸肉にまんべんなくかけたら、全体を混ぜるように、100回、揉み込みます。そうしたら、2晩寝かせます。2晩おくことで酵素がしっかり作用し、味も染み込むんです。
 続いて、片栗粉をまぶします。この時、余計な粉を落とすのもポイント。最後は、180℃の油で、およそ5分揚げます。出来たての、胸肉のから揚げ。食べてみると、滴り落ちるほどの肉汁。
 ジューシーで柔らかい胸肉のから揚げは、“タレと長時間の漬け込み”によって作られていたんです。

 ちなみに、家庭で作る場合には、冷蔵庫の開け閉めで鮮度管理が難しいため漬ける時間は一晩程度にしてください。

自宅でできる“絶品胸肉から揚げ”に挑戦!

 加熱調理するとパサつきやすい胸肉を、肉汁を感じやすく柔らかいから揚げを作る方法をお伝えします。
 まずは、露久保先生も普段から行っている、胸肉をジューシーに柔らかくする方法。それが、塩と砂糖。これが、肉をやわからかくするんです。
 今回はから揚げ用なので、皮を外し、食べやすい大きさに切っていきます。続いて、袋に、水大さじ2、砂糖小さじ2、そして塩小さじ半分を入れ、全体に砂糖と塩が行き渡るよう、軽く揉みます。
 露久保先生によると、砂糖は水と仲良し。お肉の中の水分が外に出るのを引き止めてくれるといいます。
 さらに、塩水で肉を漬けると、表面のタンパク質が溶け出し、網目構造になります。これによって、肉の内部の水分を閉じ込めるので、肉汁が中にとどまりやすいんです。砂糖塩水に付けたら、冷蔵庫で30分寝かせます。
 こうすることで、肉にどんな変化が生まれるのでしょうか。
 砂糖塩水で漬けたものと、漬けていないもの、揚げて比較してみると、何もしていない胸肉は、肉の繊維がはっきりと見えますが、砂糖塩水につけたむね肉は見た目からも、しっとりとしていることがわかります。砂糖塩水に漬けるだけで大きな変化があったんです。

 さらに他にも柔らかくする工夫を。使うのは、生姜汁。肉のタンパク質を分解する酵素はチューブの生姜では少ないため、生の生姜を使いましょう。
 先ほど、砂糖塩水を入れた袋に生姜汁(大さじ1)、すりおろしニンニク(1かけ分)、醤油(小さじ1)、酒(小さじ1)を入れたら、タレが全体にいきわたるように揉みこみ、さらに30分、冷蔵庫で寝かせます。
 30分置いたら、小麦粉は袋の中に直接入れてOK!袋を振りながら全体にまぶしていきます。
 これで準備は完了!いよいよ揚げていきます。
 露久保先生は、通常の揚げ物より少なめの油を使って加熱。お肉に火を通すだけの油が良く、必ずしも油の中に食材全体が浸かっていなきゃいけない訳ではないとのこと。
 そして、180℃の油で5分ほど揚げていきます。肉を返し両面しっかり加熱。目がテン特製「むね肉のから揚げ」の完成です!

 スタジオでは、所さんにも「露久保流の特製から揚げ」を試食!すると、みずみずしい、これはやったほうがいいと大絶賛でした!!