• 12月10日(水)深夜2:24〜3:24

  • 指 揮 沼尻竜典
    ソプラノ 大岩千穂
    管弦楽 読売日本交響楽団
    司 会 古市幸子(日本テレビアナウンサー)
  • モーツァルト作曲 セレナード第13番
    「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
    リヒャルト・シュトラウス作曲 
    歌劇〈サロメ〉から
    「7つのヴェールの踊り」
    「サロメのモノローグ」
    三善晃作曲
    ノエシス〜オーケストラのための
※2008年10月24日 昭和女子大学人見記念講堂にて収録


モーツァルト作曲

セレナード第13番 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
モーツァルトが31歳の時に作曲した名曲。
CMやドラマ、ホテルの朝食BGMなどでよく耳にするこの曲は、ウィーンの香りが漂うセレナード(18世紀に発達した娯楽的な器楽合奏曲、小夜曲)であり、通常、弦楽合奏、あるいは弦楽五重奏で演奏されます。

よく耳にする、このタイトル「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の意味とは・・・・
Eine(アイネ)
kleine(クライネ)
Nachtmusik(ナハトムジーク)
女性形の不定冠詞
形容詞klein(小さな)の女性形
Nacht(夜) + Musik(音楽)の合成名詞

以上が合わさり、日本語で「小夜曲」と訳される。
この題名は、モーツァルト自身が自作の目録に書き付けたものである。

リヒャルト・シュトラウス作曲

歌劇《サロメ》から  「7つのヴェールの踊り」「サロメのモノローグ」
歌劇《サロメ》 ストーリー
イギリスの作家オスカーワイルドの戯曲「サロメ」を原作とする、官能的物語のオペラ。舞台は紀元30年頃のエルサレムのヘロデ王の宮殿。ヘロデ王の妻、ヘロディアスの連れ子である王女サロメは、井戸の地下に幽閉されているヨハナーン(預言者ヨハネ)に恋焦がれている。サロメは、自分に欲望の目を向けるヘロデ王のために一枚一枚ヴェールを脱ぎ捨てながら踊り、その踊りの報酬として、ヨハナーンの首を手に入れる。
今回抜粋の2曲は、サロメがヴェールを脱ぎ捨てながら踊るシーンの曲(7つのヴェールの踊り)。そして、最後大詰めのクライマックス、踊り終わったサロメがヨハナーンの首を手に入れ、その首に陶酔の表情でキスをする、という長大なモノローグ(サロメのモノローグ)です。

今回の出演者、絶対音感の本でも話題となった鋭い音感の持ち主、指揮者・沼尻竜典さん、そして、その情感溢れる歌声で今年初CDをリリースした、ソプラノ歌手大岩千穂さんを迎え、歌劇《サロメ》について様々なお話をうかがいました。
実はこのお二人、今年2008年10月12日、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールにて、オペラ《サロメ》の公演を終えられたばかりです。 その公演の感想をうかがいました。

2008年10月12日 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール
写真提供:びわ湖ホール







 一番右:
 大岩千穂(サロメ役)

沼尻:なかなか真に迫ってて怖かったです。お客さんは鳥肌立ったって・・・。
古市:大岩さんご自身は?
大岩:普段と変わらず…(笑)自然体で行けた気がします。
沼尻:大岩さんのキャラクターは近いものはありますよね。
    そういうのを潜在的に持っているというか・・・。

古市:オペラには、カルメン、トゥーランドット、「サムソンとデリラ」のデリラ、マノン・レスコーなど、
    様々な“魔性の女”が登場しますよね。その中でもサロメは、魔性の女度が
    ダントツに高い
感じがするんですが・・・?
大岩:私は、“魔性の女”というのは、全ての女性の中にあると思っています。それにサロメは
    気づいていないというところが、よけいに怖いんだと思います。

古市:大岩さんにとって、サロメとは?
大岩:愛を渇望している女性。終始、愛を探しているんですよね。
古市:沼尻さん、サロメのような女性に迫られたら、どうしますか?
沼尻:迫られる前に逃げますね(笑)見かけただけで。
古市&大岩:見かけただけじゃ、分からないかもしれませんよ・・・??(笑)
古市:さて・・・、サロメを演じる歌手には、どんなことが求められるのでしょうか?
沼尻:こういったオペラの場合は、歌よりもキャラクター。この人はこういったことをしかねない、
    という人を選んでお願いしますね。

古市:へえええ!!大岩さん、そう言われるのはどうなんですか?
大岩:光栄です・・・(笑)
古市:今回はコンサート形式の「サロメのモノローグ」ですが、オペラとの違いは
    どんなところですか?
大岩:いきなり、血圧とかいろんなものが高くなった状態で歌わなきゃいけない、
    ということで、いかに楽屋でテンションを高く持っていくか、ということですね。

沼尻:オペラの場合、歌手はオケの後ろにいますよね、でも今回はオケが後ろに
    います。そういう、普段とは違ったバランスをとるんです。単純にオケの音量を
    落とすのでなく、音楽的な内容を殺さずに音量を落とすんですが、
    それが難しいんです。

古市:なるほど・・・。それでは、「7つのヴェールの踊り」の聴き所とは?
沼尻:オペラで古い演出なんかでは、本当に歌手が1枚1枚ヴェールを脱いで裸になる、というエロティックな音楽なんです。今回は、
    踊りもないので、オケだけでどこまで“エロさ”が出せるか、というところですかね。

古市:「サロメのモノローグ」の聴き所はいかがですか?
大岩:私は、R・シュトラウスのオペラは全てセリフだと思ってるんです。なので、いかに歌わずして語るか。歌手であることを忘れて、
    語る。それだけに集中しようと、いつも思っているんですけどね。


♪魅力的なサロメとなって歌う大岩さんの豊かな表情の変化は、聴衆の目を釘付けにしていました
笑うサロメ
絶望するサロメ
怒るサロメ


三善 晃 作曲

ノエシス〜オーケストラのための

作曲家
三善 晃
1933年 東京生まれ
1951年 東京大学文学部仏文科に入学
1955年 パリ国立音楽院に留学

フランス音楽の洗練された作風と日本の伝統音楽の響きを融合させた作品が注目を浴び、尾高賞、芸術祭奨励賞など数多くの賞を受賞。
また桐朋学園大学の学長を20年の長きにわたって務め、日本の音楽教育に大きく貢献した。

今回指揮の沼尻さんは、桐朋学園在学中に、三善晃から作曲を学びました。
三善晃先生に影響されたことから曲の特徴まで、在学中のエピソードを交えてお話してくださいました。

Q、沼尻さんにとって、三善晃さんはどんな存在?
中学生の頃からの憧れの作曲家・・・というか憧れの音楽家でしたね。
在学中は、あんまり細かくあーしろこーしろ、とはおっしゃらないんですが、やっぱりいろんなことに影響は受けました。音楽に対する向かい方や付き合い方なども、すごく影響を受けたし。実は僕、あんまりレッスンに行けなかったんですね。室内楽や伴奏、指揮など、いろんなことをやっていたので。そっちの方が忙しい時、例えばコンクールの前でみんなの伴奏をしていたりすると、先生に廊下で会っちゃって、「たまには、お話にいらっしゃい」と言われて。で、本当に何も持たずにお話に行くと、いろいろ楽しいお話を聞かせていただいて。曲を書かなきゃ!と思ってまた帰るという、そんなかんじでした。
Q、影響を受けたことは?
やっぱり音楽というのは、いろんな思いがこもってるんですよね。単に、楽しいな、キレイだな、だけではなくて、体の中からグゥッとくるとか、あるいはそこから重圧がくるとか・・・いろんな、音楽との“向かい方”があって、やっぱり何か“思い”がこもっていなきゃいけない、ということですよね。だから僕も、自分のレパートリーの中に、ただ楽しいな、という曲はあんまりないかもしれません。
Q、三善晃の作品の特徴は?
三善さんの曲は、彼の少年時代の戦争体験抜きには語れないですね。僕は戦争を直接知りませんけど、三善さんは、一緒に遊んでた子供が、機銃掃射で隣でいつのまにか死んでいたとか、生と死が本当に隣り合わせという経験をしてて。
特にこの曲はそれを歌ってはないですけど、やはり曲の途中から入るチューブラベル、ああいうのはやはりお弔いの鐘に聴こえますしね。非常に激しい部分は、何か爆発とか・・・そういう苦しみ・悲しみの音が入っているようにも聴こえます。そしてそのお弔いの鐘の音で静まった魂が、すうーっと浮かび上がるようなイメージ・・・・。
そういうものが最近少し分かるようになった気がするので、三善先生の作品をこれからもやっていって、もっといろんなことがこの先見えてきたら、もっと面白くなるな、と思っています。

沼尻 竜典 (指揮)
Ryusuke NUMAJIRI(conductor)
びわ湖ホール芸術監督、大阪センチュリー交響楽団首席客演指揮者。1990年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝。ロンドン響、モントリオール響、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ響、デュッセルドルフ響等を指揮、ロストロポーヴィチ、ゲルバー、ベロフなど世界的なソリストと共演。オペラではケルン歌劇場、新国立劇場、日生劇場、バイエルン州立バレエなどへ客演。現代音楽にも深い理解と造詣を持ち、数多くの日本初演を手掛けている。2007年4月よりびわ湖ホール第2代芸術監督に就任して、≪王女様の誕生日≫、≪ばらの騎士≫(ホモキ演出)、≪サロメ≫(グルーバー演出)を大成功に導いている。

大岩千穂(ソプラノ)
Chiho OIWA(soprano)
国立音楽大学卒業。ヴィオッティ音楽院オペラ科マスター・コース首席卒業。 第1回国際オペラコンクールin Shizuoka最高位、及び三浦環賞受賞他数々の国際コンクールに入賞。 99年 ハンガリー国立歌劇場『ラ・ボエーム』ミミ、フェニーチェ歌劇場(伊)『蝶々夫人』を歌い絶賛され、02年フロリダ・パームビーチ・オペラでのレナータ・スコット演出『蝶々夫人』でアメリカデビュー。03年にはチェコ・フィル、ボリショイ劇場管弦楽団等と共演。国内では佐渡裕指揮『蝶々夫人』、若杉弘指揮『海賊』にて卓抜した表現力で大喝采を浴び、最近では08年10月沼尻竜典指揮『サロメ』に主演。 国際的に通用する存在感と表現力は国内外で注目され、真のリリコ・スピントの逸材として今後の活躍が更に期待されている。ミラノ在住。二期会会員
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