放送内容

第1463回
2019.02.17
のり弁 の科学 食べ物 人間科学

 ハンバーグに幕の内、中華など、お店に並ぶ、色とりどりのお弁当。その中でも、昔から“変わらぬ人気”を誇るのが、お弁当の大定番「のり弁」。銀座には、のり弁の専門店がオープン。なんと、千円を越える価格ながら、お店には、行列ができるほどの人気ぶり!
 もちろん家庭のお弁当としても人気ののり弁ですが、一体なぜ人は、のり弁にこんなにも心惹かれるのか?その理由を科学の力で徹底解明! さらに!のり弁の悩みも解決。どうしても海苔がフタにくっついてしまう。そんな悲劇を回避する簡単な方法をご紹介!
 今回の目がテンは、今も昔も大人気!「のり弁」の科学です!

のり弁の魅力とは?

 今や家庭だけではなく街のお弁当屋さんでもすっかり定着したのり弁。北海道文教大学が行った、のり弁に対する意識調査ではおよそ8割の人がのり弁に対し好意的な印象を持つという結果も。では、なぜのり弁はこんなにも愛されているのか?その理由を探るため、科学者のもとへ突撃!すると“ある意外な事実”がわかったのです!
 まずは、調理科学の専門家・露久保先生。露久保先生によると、のり弁は旨味がてんこ盛りだといいます。海苔は代表的な3つの旨味成分、グルタミン酸・イノシン酸・グアニル酸を全て含んでいる非常に珍しい食材。さらに、のり弁に使われるご飯と醤油にはグルタミン酸、鰹節にはイノシン酸とまさに旨味成分がてんこ盛り!
 そしてこれらの成分は、組み合わせることで、より旨味が増すと言われており、ある研究によると、およそ8倍も旨味を感じるという結果も。

 続いて伺ったのは、香りの専門家・長谷川准教授。長谷川先生によると、実は海苔の香りにはリラックス効果があるといいます。古来から海苔の香りは、生活に密着した香りとして使われ親しまれており、多くの日本人がここち良い香りとして認識しているため、それが原因で海苔の香りを感じる心地良い気持ちにつながるんだそう。
 海苔の香り成分はしっとりとした状態でも口の中で噛み、温まることで発散。すると、海苔の心地よい香りが安心感を生みリラックス効果に繋がるんです。

 ちなみに、長谷川先生によると、のり弁は温かい緑茶と一緒に食べるのがオススメ。緑茶の香りにもリラックス効果があるため、のり弁と温かいお茶は最強の組み合わせだったんです。

 続いて、おかずも調査。街のお弁当屋さんでのり弁を買ってみると、おかずにある共通点が。
 それは、多くののり弁に「白身魚のフライ」と「ちくわ天」が入っていたんです。

 そこで向かったのは、今から40年以上前にこのスタイルを考案したというお弁当チェーン。担当者に、その経緯を聞いてみると、海苔に合う食材を試行錯誤、そして1番重視したのが食べた後の満足感、それらを考慮して魚のフライとちくわ天に行き着いたとのこと。こうして世に出たのり弁は大ヒット!その後、徐々に他のお店でも白身魚のフライとちくわ天が定着していったといいます。
 実は、そんなのり弁の"おかず"にも意外な栄養効果があったんです。
 露久保先生に聞いてみると、海苔には、疲労回復や免疫力を高める栄養素「ベータカロテン」が含まれており、脂と一緒に摂取することで、カラダへの吸収率が大幅にアップするというんです。さらに、おかずに油脂が加わることで、油脂から得られるコクや旨味も加わりより満足感を得られるんだそう。
 のり弁人気のヒミツは、科学的にも裏付けされた美味しさが関係していたんです!

なぜ、のり弁に人は心惹かれてしまうのか?

 街でのり弁の印象について聞いてみると、どうやら海苔に惹かれてのり弁をつい選んでいるようです。そこでこんな実験! チキンの照り焼き・焼きシャケ・白身魚のフライ、3種類のおかずがのったお弁当のうち、1つだけをのり弁にして、パッと見て食べたいとおもったものを選んでもらいます。それを3種類のお弁当で同様に繰り返し、お弁当に海苔を敷くだけで選ぶ人が増えるのか実験してみます。
 まず3種類のお弁当の中で、チキンのお弁当だけのり弁に変えて選んでもらいます。協力してもらったのは男女10名。3種類のお弁当を見て、1番食べたいと思ったものを選んでもらいます。
 それでは実験。みなさん次々とAのチキンのり弁を選び、結果は、なんと10人中9人がAのチキンのり弁を選びました。

 のり弁効果は絶大なのか?さらに実験を続けます。続いて、Bのシャケ弁当をのり弁に変えて再び10人で検証してみます。選ぶのは、先ほどとは別の男女10人。果たしてのり弁に変えるだけで、どれだけ人気に違いが表れるのでしょうか?
 すると、海苔なしでは誰も選ばなかったBのシャケ弁当をのり弁に変えただけで10人中5人が選ぶという結果に!

 同様に、これまで1人しか選ばなかったCの白身魚フライ弁当をのり弁に変えたところ、10人中3人が食べたいと、Cを選んだのです。
 のり弁に変えただけで選ぶ人が増えるという結果に。これは一体どういうことなのでしょうか?
 購買行動や食事に関わる心理を研究する坂井教授に聞いてみると、大前提として過去に食べた時に美味しかったという記憶があるが、のり弁はご飯を隠すように海苔が乗せられているため、中身が見えないと人間は中身が知りたくなるという意識が働くといいます。例えばスクラッチを削って中を知りたいという心理と同じこと。
 なんと、ご飯を海苔で隠すだけで、「見たい」という欲求が掻き立てられると言うんです。
 そこで、のり弁と同じように、あるモノを隠した状態で見てもらうと、人は一体どんな反応をするのでしょうか?坂井先生の知恵をお借りして、こんな実験をしてみました。
 花の絵をのり弁風に布で隠し鑑賞した場合、隠さない時と比べ、行動にどんな違いが出るのかを検証します。

 美術館に見立てた場所に3枚の絵を展示し、5人の方に1人ずつ鑑賞してもらいます。そして、黄色い花が描かれている絵の鑑賞時間を計測。5人の鑑賞時間は、平均で15秒になりました。
 続いてのり弁風にした状態で、ふたたび鑑賞時間を計測します。鑑賞するのは、先ほどとは別の5人。果たして、絵を隠す事によって鑑賞時間や行動にどんな違いが表れるのでしょうか?
 それではスタート!まずはコチラの女性から。黄色い絵の前に立ったところで計測スタート。すると、隠してある布を避け、絵をのぞきこみます。そして何やら首をかしげ、さらに絵に近づいていきます。かなり興味津々の様子ですが、今度は少し離れたところから眺め、鑑賞時間はなんと41秒でした。その後、他の4人ものり弁風の絵に興味を示しじっくり鑑賞。結果5人の平均鑑賞時間は38秒!絵を隠さなかったグループと比べると倍以上に伸びたんです。

 坂井先生によると、中身を隠されると知りたくなるという好奇心が芽生えてくるといいます。これらの心理ものり弁を手に取ってしまうという理由の1つ。のり弁には好奇心をくすぐる“宝探し”のようなワクワク感があるんです。

のり弁の悩み!簡単解決方法!

 日々のお弁当づくりで欠かせないのり弁。しかし、そこにはいくつかの"悩み"が。
 「海苔がフタにくっついちゃう」「食べる時に海苔が一気にはがれちゃう」
 こんな経験、一度はした事ありませんか?
 そこで今回はそんな〝のり弁〟の悩みを目がテンが解決致します!協力していただいたのは露久保先生。
 まずは、お弁当を開けると海苔がフタにくっついてしまう問題。

 フタの裏にくっついてしまう原因はご飯の蒸気。海苔がご飯の蒸気を吸ってしまって粘りが出てしまってフタにくっついてしまうのが原因。
 そんな悩みを簡単に解決する方法というのが、「海苔を2枚重ねて使う!」
 これは、ご飯の蒸気を海苔2枚で吸収し、粘り気を抑える事でフタにくっつきにくくするという方法。

 では、海苔を2枚重ねるだけで、どれだけ効果があるのでしょうか?こんな実験を行いました。
 海苔が1枚と2枚重ねの“のり弁”をカタチや材質の違う弁当箱でそれぞれ10個ずつ作り5時間後、蓋を開けた時の状態を見比べます。使用する弁当箱はプラスチック製・アルミ製・木製の3種類。
 今回は海苔がよりくっつきやすい状態を作るため冷まさず温かいご飯で実験します。そして同じ量のご飯を弁当箱に詰めおかずは入れずに蓋をします。
 そのお弁当を番組スタッフがバッグに入れ、通勤・通学と同じ状況を作るため、会社まで移動して運びます。その後、お弁当は社内に置いたままの状態で保管。
 そしてお昼を想定した、フタをしてから5時間後。果たして海苔を2枚重ねにしたお弁当は、蓋にくっつくのを防止できたのでしょうか?
 実験の結果、海苔1枚のお弁当は10個中7個が蓋にくっつき海苔2枚では、なんと1つも蓋にくっつかなかったんです!

 ちなみに、木製の弁当箱は箱自体が水分を吸収するため、海苔1枚でもフタにくっつきませんでした。

 続いての悩みは、いざ食べる時に海苔が上手に切れない問題。

 この悩みを解決する方法は、“おろし金”。
 海苔をおろし金にのせて、上から指で軽く押さえます。おろし金を使えば、細かい穴を手早くたくさん開けられるためお箸を入れた時に海苔がちぎれやすくなります。

 悩みも解決したところで美味しいのり弁を作るための“海苔の選び方”もご紹介!
 のり弁に合う海苔は食べるときに切れやすく、ご飯ともなじむ柔らかい海苔。柔らかい海苔をスーパーで選ぶときには、パッケージに初摘み、1番摘みと書いてあるものがおすすめ。
 海苔は収穫回数が多くなるほど硬くなる性質があり、収穫シーズンの最初に摘んだ柔らかい海苔は「初摘み」または「1番摘み」と表記され販売される事が多いのです。

 そしてもう1つ、柔らかい海苔を見極めるポイントが海苔の色。より黒いものを選ぶのがおすすめ。柔らかい海苔には色成分がより多く含まれており黒く深い色の方が、柔らかい海苔の目安となるのです。

 さらにスタジオに用意したのが、「目がテン特製のり弁」。
 その作り方は、まずご飯を炊くときにお酒を少量混ぜ、海苔に塗るしょうゆは、みりんを1対1の割合で混ぜ合わせます。
 さらに海苔を2層に分け、1段目には昆布、2段目にはかつお節を敷けば、うまみ成分がさらにアップ。

 そしてもう一つ、とっておきの隠し味も。それは「青のり」。
海苔には「青混ぜ」という、「一番摘み」の上質な海苔の中に少しだけ青のりが混ざった希少な種類があります。この青混ぜに近づけるため、青のりを入れました。