第86回 全国高校サッカー選手権大会

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大会概要

あいさつ(開催趣旨)

(財)全国高体連サッカー専門部長 平山隆造

 冬が来た!高校サッカーの冬が来た。最早、サッカーは冬のものという定言は過去のものとなってしまったが、「高校サッカー」だけは何故か「冬」が、「正月」が似合う。

 私事で恐縮だが、高校サッカーが首都圏に移動したのは教員になった年であった。だから、私の職業暦、教員暦、監督暦は首都圏開催とともにある。伝説の浦和南―静岡学園が初めての決勝であった。5対4…大差の決勝は数々あれど、こんなスコアの決勝は国立では未だ経験がない。彼らも若くて48歳、3年生なら50歳だ。それだけ長い間国立の芝が高校生に踏まれてきたという重い歴史がそこにある。Jリーグ開始、ワールドカップ初出場までサッカー冬の時代といわれていた時も高校サッカーだけは国立を満員にしてきた。

 クラブユース勃興の近年、一時期国立も『やたからす』ではなく本物の烏を数に入れなければ満員にならなかった時代もあったが、成人の日に決勝を移してからは再び上向き、むしろ「恐怖の満員御礼」も含め、今日まで盛況が続いている。

 平成15年1月13日、カレンロバート中心の"熟練"布監督率いる市立船橋、平山相太中心の"御大"小嶺監督率いる国見の戦いは、試合開始前から緊張の連続であった。我々の読みをはるかに上回る観客がそれも試合間際になって殺到。おかげでチケット売り場前には長蛇の列ができ、試合に間に合わない観客が不満を募らせる。チケットボックスで販売していた売り子の中には恐怖のあまり泣き出すものもいたと聞く。我々運営側も各ゲートにお詫びに出向いたが、「後半しか見れないのに1試合分の金を払うのか!!」など、私が観客ならもっともな怒りに対してひたすら平謝りしかなかった。私は「会場長」という立場があったので罵詈雑言に対して頭を下げ続けたが、時間の経過が経つにつれ、入れない観客のストレスは極度に高まり、恐怖感から思わず「会場長」のIDを裏返しにしたことを今は苦笑いしながら思い出す。試合はこの恐怖に違わず素晴らしい熱戦でこれも歴史に残る名勝負といえるであろう。カレンロバートも平山相太もぜひ北京に行って大活躍してもらいたい。彼らを見るとあのトラウマを思い出してしまうという苦々しさもあるが…。

 大雪に見舞われた平成10年の決勝、かけどもかけども掃けない雪、結局一番功を奏したのは水を撒くという方法であったことも記憶に新しい。やれパソコンだITだという人間の知恵の原点が実は原始的であった、という新鮮な思いが今は懐かしい。しかし東福岡も帝京もそこに雪があるのかと思わせるほどの技術の高さを見せ、雪をも溶かす熱戦が繰り広げられた。結果はともあれ、記憶に残る試合であることは間違いない。
 そんなこんなで首都圏開催35年、名勝負、好勝負、珍勝負まで含めて忘れられない試合が数多く展開された。これからも「高校サッカー」が冬を正月を彩るであろう。

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