しばらく考え込んだ後、長瀬が渾身の一句披露する。
長瀬「“象潟の 続くよ道は 果てしなく” どうこれ?」
太一「たいしたこと無いね!」
長瀬に負けじと、こちら太一も一句で応戦する。
太一「象潟の 車走らせ 春を待つ」
長瀬「カッコイイ!!」
長瀬の言葉に気分がよくなる太一はさらに続ける。
太一「荒波に もまれて育つ だん吉君」
長瀬「うまいっ!」
2 人は俳句を詠みながら日本海沿いを南下していくのであった。


しばらく走り国道7号線、見えてくる看板には“ようこそ山形県”の文字。
ついに山形県の入り口に着いたのだ。
海沿いで山形入りを迎えようと右折すると、ここにも芭蕉の通った痕跡
“奥の細道”の看板が立っていた。
しかし今度の道は、木々が生える自然の道。
だん吉に乗っては進めそうに無い。
太一と長瀬は、しばしだん吉から降りて少し歩いてみることにする。


自然の姿が残るその道は次第に厳しさを増していく。
太一「これじゃ、奥の坂道だよ」
登りもきつくなってきた。しかし、視線の先には開けた場所が確認できる。
なんとかあそこまでと進んで、登りきった三崎峠の見晴台。
その眼下には美しき日本海の荒波が180度のパノラマで広がっていた。
さらに、その先には嬉しいものが2人を待つ。
それは、秋田県象潟町と山形県遊佐町の境が記された木柱だった。