しかし板同士のつなぎ目となる面もなかなか水平にはならず、どうしても微妙な誤差が生じてしまう。
そこで名人が取り出したのが新たな道具「セン」。
両手で持って引き寄せながら使うこの道具は、板の側面などを削るのに便利な道具。
この専用道具で桶づくりのほうは少しずつ順調に進み始めた。
一方、沸かすのに必要なのが鉄のボイラー鉄砲釜。
この釜の作り方を相談するならば、以前半鐘の時にもお世話になった頼れる人物が。
それは「渡邉梵鐘」の菅江さん。

しかしいかにこの道のプロの菅江さんでも、50年近く前の風呂釜を扱った経験は少ないのだという。
それでもさすがは菅江さん、設計図さえあれば作ることができるという。
だが、かつての鋳物の設計図を見つけることができず、思わぬ壁にぶち当たってしまった。
そんなとき保原が見つけてきたのは、使い古され廃棄されていた鉄砲釜。
この発見に菅江さんから提案されたアイデアは、この壊れた釜で型を取り、新しい鉄砲釜を作るというもの。

菅江さん「砂型復元法っていうんだけど」
この方法で釜のほうも何とかメドがつき、新たな風呂の完成に向け男達の作業にも熱がこもる。
そして山に白さ残る3月。
ようやく浴槽の板も19枚完成と底板も完成し組み立てるまでに持ってくることができた。
底板を側板の上からはめ込み、水を入れて穴がないか点検する。
太一「漏れてないね・・・!」
新品の風呂桶は一杯の水をたたえ、一滴ももれることなくたゆたっていた。