そんな春の日差しの下、縁側に広げたのは、12月に収穫し、脱穀も終えていた大豆。
乾燥したサヤは、ヤギたちにとって栄養豊かなエサとなる。
茎から取り集め、ヤギ小屋へ配ろうとしていたら、そうするまでもなく、向こうで食事中だったリンダが、ムシャムシャと食べ始め、
達也「うまいの?」
それに倣い、娘もムシャムシャ。
一方の羊たちは興味なし。
ヤギと似ていても好みは違う。

そして肝心なのは、このサヤの中身。
去年の秋。
村に初めて姿を見せた里山のサル。
群れからはぐれたか、腹が減っただけか、集中的に狙ったのが、大豆だった。
網で防がねば、今度の大豆は、初めて栽培した、大切な品種。
収穫するまでの3週間程をサルやイノシシから守り抜き、
木枯らし吹いて12月、サヤも枯れ切って、初めての青大豆、アオバタ豆は、いい実りを迎えた。
通常の黄色とは違う、独特の若緑色にふくらんでいた。

新たな大豆で、新たな村の味を。
そんな思いで、いよいよ春の一仕事。
このアオバタ豆こそが適した品種だった。
達也「これでできるね、絹ごし豆腐」
絹ごし豆腐は、絹でこす訳ではなく、そうしたかのように滑らかさ、きめ細かさから、この名前がついた。
豆腐自体の発祥は、古代中国だが、この絹ごし豆腐という形は日本生まれ。