やがて、美しいウスバカゲロウが次々に羽化していくものと思われたが、梅雨明け後から局所的な集中豪雨が頻発。
巣穴があったあたりの砂を確かめてみると、幼虫の数は激減していた。
湿った砂では獲物を獲ることができない。
守山先生「雨が強すぎた。長期間水に浸るようだとそこのアリジゴクは全滅してしまいます」
縁の下を探すと、かすかに動く砂粒の塊が…。
城島「あれっ!あの玉、あんなでかくないか?」
守山先生「アリジゴクの蛹(さなぎ)ですね」

蛹は砂でできた繭に包まれてこの時期を過ごす。
繭を作って、3週間ほどで羽化し、美しい姿となるが、成虫になってからは1か月ほどのはかない命。
羽化すれば命はわずか2週間。

この夏の激しい雨は、更に村の環境を変えていた。
水車小屋の横を流れる浅い小川の水量が激増していた。
その陰には、落ち葉で巣を作るトビケラの幼虫の姿。
幼いサンショウウオや、ヤゴ、ミズムシなど様々な生き物を育む場所が、この夏の度々の雨で溜まっていや落ち葉や泥が流され、里山から砂が流れ込み、水辺が一変。
アリジゴクを見つけたように砂をすくうと、無事に見つけることができたのは、オニヤンマのヤゴ。
守山さん「土が溜まると砂地で生きる生き物しか棲息できなくなる」
そこで、大量の砂を取り除き、下に埋もれた泥を掘り返し、落ち葉が流れていきやすい水の流れをつくることに。

すると、明雄さんが見つけたのはフタスジモンカゲロウの幼虫。
ウスバカゲロウとは違い、モンカゲロウの幼虫はヤゴのように水中に生息し、成虫も水辺を好み、川面に大量発生することで知られる。
昔からよく見つけていたという明雄さんは、
明雄さん「砂からとってスナムシだなんつってそいつで魚釣ったんだよな」
さらに、モンカゲロウの親の姿も。これにもある利用法があった。
守山さん「これを真似して作った毛鉤(けばり)というので魚を釣る事もできるんですよ」
すなわち水面で羽化するモンカゲロウの成虫を好物とする川魚の習性を利用したのが毛鉤である。