初代“山の神”の異名をとった箱根駅伝のレジェンド、今井正人選手(トヨタ自動車九州、順天堂大学OB)が現役ラストレースを迎えました。今井選手がラストレースに選んだのは、17年間の社会人生活を送った福岡の地で開催された日本選手権・クロスカントリー。
2月21日に現役引退を発表した今井選手は、前日会見で「やり切ったという表情でゴールに飛び込みたい」と話していました。会場に駆けつけた多くのファンや関係者から声援が送られ、レース中には笑顔を見せる場面もありました。
「名残惜しくて、だいぶ長く走ってしまいましたが、苦しい場面も声援が途切れることなく、ゴールまで背中を押してもらいました。本当に感謝しています」
両手を広げて44位(31分19秒)でフィニッシュすると、コースに向かって深々と頭を下げました。
今井選手は、順天堂大学時代に4年連続で箱根駅伝に出場し、2~4年時は山上りの5区で区間記録を打ち立てる活躍を見せました。大学4年時の第83回大会(2007年)では、現順大駅伝監督の長門俊介さんらと共に総合優勝を成し遂げています。
実業団のトヨタ自動車九州に進むと、バルセロナ五輪男子マラソン銀メダリスト森下広一監督に指導を仰ぎ、駅伝やマラソンを中心に活躍。2015年の世界選手権北京大会のマラソン代表にも選出されましたが、直前の体調不良で本番は走ることが叶いませんでした。
目標としていたオリンピックに何度も挑みましたが、昨年のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)には万全な状態で迎えられず、ついに五輪出場を果たすことはできませんでした。
「皆さんご存知の通り、山あり谷ありの谷の方が深く、うまくいかないことの方が多かったですけど、その度に成長させてもらいましたし、乗り越えたときの喜びもたくさん経験できた。きついことも多かったが、本当に充実した24年間だったなと思います。
名残惜しさもありますが、これだけ幸せな場所で走らせてもらって本当にありがたい。晴れやかな気持ちで終われたと思っています」
レース後の会見では、高校から始めた陸上競技者としての24年間をこのように振り返りました。
今後は、チームに残り指導者の道へ。
「しっかり寄り添いながら、伴走者として、一緒に考えて、一緒に悩んで、一緒に悔しがれるような、そういう存在になれたらなと思っています」
そんなビジョンを思い描き、後進の指導にあたります。