第107回日本陸上競技選手権大会・クロスカントリー競走が、2月25日に国営海の中道海浜公園 (福岡)で開催されました。
アップダウンのある大芝生広場に設置された1周約2kmの特設コースを周回するため、選手たちにはタフさが求められます。
3月30日開催の世界クロスカントリー選手権(セルビア・ベオグラード)の代表選考会を兼ねたシニア男子10kmで日本一に輝いたのは、今年の箱根駅伝でも活躍した早稲田大学の山口智規選手(2年)でした。

「うまく流れてくれたので、思い通りのレース運びができました」
レース後にこう振り返ったように、早大の先輩である井川龍人選手(旭化成)や東京オリンピック男子5000m代表の坂東悠汰選手(富士通、法政大学OB)といった力のある実業団勢を相手に、山口選手は序盤から先頭集団に食らいつき、冷静にレースを進めていました。
「最後の1周はしんどかった」と言うように、優勝争いが井川選手、荻久保寛也選手(ひらまつ病院、城西大学OB)、藤曲寛人(トヨタ自動車九州、順天堂大学OB)の4人に絞られると、苦しそうな表情を浮かべる場面もありましたが、それでも粘りを見せ、最後は井川選手との一騎打ちに持ち込みました。

「ラスト1周でペースが落ちたので、井川さんはラストに向けて力を溜めているなと思いながらも、スプリント勝負になったら正直勝てる気がしなかったので、少し長めのスパートをかけました。脚を使わせたいと思って、何回か仕掛けました」
満を持して山口選手は先頭に立ち勝負を仕掛けますが、井川選手も先輩の意地を見せます。
「レース前に井川さんには『最後競り合いになったら譲れよ』と冗談を言われていました(笑)。でも、さすがに譲れません。(先輩との競り合いは)すごく感慨深くて楽しかったです」
両者譲ろうとしないラストスパート勝負は、29分16秒の同タイムで決着。最後は山口選手が一歩早くフィニッシュに駆け込みました。

「疲労があって調子が悪かったが、勝ち切ることができて、自信になりました」
山口選手はこれまでタフなレースに苦手意識を持っていましたが、その弱点を克服し、大学生の枠を超えてシニアの大会で初めての日本一に輝きました。
山口選手は、今年の箱根駅伝ではエース区間の2区を走り、渡辺康幸さん(住友電工監督)が持っていた早大記録を29年ぶりに塗り替えました。また、昨年11月には大迫傑選手(Nike)が持っていたハーフマラソンの早大記録を更新するなど、名実ともに早大のエースとして活躍を続けています。
この優勝で世界クロカンの日本代表も有力。また、目標としていた5月開催の日本選手権10000mの出場権も手にしました。さらには、3月にはニューヨークシティ・ハーフマラソンの出場が決まっています。

「これからレースが続きますが、日本選手のトップとしてしっかり勝負できるようにしたい。
日本選手の長距離も(5000m)12分台や(1万m)26分台が目指せるようになってきたので、置いてかれないように頑張っていきたいと思います」
日本一の称号を手にした臙脂のエースは、大学3年目のシーズンにさらなる飛躍を誓っています。