第542回日本テレビ放送番組審議会は、2020年上半期の「番組種別時間の報告」を行った後、
土曜ドラマ『35歳の少女』を合評しました。
事故でこん睡状態だった主人公が25年ぶりに目を覚ますことで、この25年間で私たちはどう変わってしまったのか、何を得て何を失ってしまったのかということを、視聴者の方々と一緒に考えたいという思いを込めて作られたドラマです。
今回も感染防止のため、リモート形式で行いました。(リポート2名)

  • 柴咲コウさんや鈴木保奈美さんの演技に圧倒された。突飛な設定に思えたが、自分の体に違和感を持つというのは普遍性のあるテーマだという気がする。「外見も心も色々な人がいていいんだ」という多様性を考えるきっかけになるドラマだと思った。
  • コロナを感じさせない本格的なドラマの撮影が出来ていて、スタッフが見えないところで努力をされているのだと思った。
    25年後に目覚めた主人公とそれを迎える家族の両方に感情移入したが、辛い状況や背景が解き明かされていくことが楽しみだと思う。
  • 評価する人としない人が真っ二つに分かれるというのも、遊川作品の特徴だと思う。坂口さんが演じる結人のやっている代行業が現代的で、今の社会が抱えている“ゆがみ”や“欠如”を反映させている設定が上手いと思った。
  • この番組で描きたいのは『モモ』という作品に描かれている「時間は大切な財産なんだ」ということだと思う。若い人も自分たちの世代も、この作品を通して色んな人生訓や言葉が聞けると思うと、すごく楽しみに見ることが出来る気がする。
  • 見ていてどこか不安な気持ちになるが、遊川さんはあえてやっていると思う。どういう態度で見ていいのか分からなくなってくるところがあり、不自然だが、不自然だからこそ出来ることがあるのかもしれないと思った。
  • 役者としてはとても難しい役。やり過ぎるとわざとらしさが立つし、やらないと何も伝わらない。もう少し10歳の心理に分け入って欲しいと思った。
  • 凄く自然に遊川さんの世界が描かれていると思った。柴咲さんが演じる望美が大人をぶった切っていくというか、突っ込みが出てきて「それだ、いいぞ!」となるシーンがあると良いと思った。
  • 望美が自我を獲得して自信を持った時に急激な成長が始まると思うので、一人の女性の転換点というか、そこを大事にして欲しいと思う。
  • 重い問題がいっぱいあったが、その一つ一つを10歳の少女の心で解決していってもらうと、ちょっとホッとする感じがすると思う。
  • 少々現実離れしたところもあったが、現在の社会や家庭が抱えている色々な問題を取り上げた深刻なドラマだった。人間とは、家族とは何かを考えさせられた。夜遅い時間のドラマなので、明るさが感じられる展開をお願いしたい。
  • 普通の話を次々と展開させていくので、視聴者は混乱して先が読めない。どこへ向かうのか緊張を強いるドラマ。個人的には坂口さんの使い方、描き方、芝居に注目している。

この御意見を受けて、日本テレビ側は次のように答えました。

「どういう立ち位置で見たらよいのかが分かりにくいというご意見があったが、見る方の想像力を掻き立てられるような作りを目指している。希望・成長・時間というものが、見た方の心に残るような、一石を投じられるようなドラマにしたいと思っている」