第560回日本テレビ放送番組審議会は、7月12日に放送された『いた!ヤバい生き物 キケン生物と大バトル』を審議しました。「ヤバい」という言葉には、ポジティブに凄いという意味も含め、人間にとって「危ない」「凶暴」「迷惑」な生き物たちに密着し、その生態を子供たちに人気がある声優のナレーションとカードゲームのような演出で、親子で楽しめるように制作しました。
(1名リポート)

  • 24台のカメラや暗視カメラなどで様々な生態を追っていて放送局の熱意を感じた。「人間と動物がともに生きられたらいい」と番組を通して筋が通っていたので見やすかったが、欲を言えば、もっと背景を知りたいところがあった。色んな経緯をもう少し深掘りしてくれたら興味も広がるのではないかと思った。
  • スタジオがなくVTRのみの番組構成は1つ1つを見終わった時にホッとできるクッションの場が無いと思った。また、時間帯に関して、食事中にネズミやイタチが出て来ると食欲が半減してしまったかもしれないと思った。
  • 人間から見て厄介ものは、カラス、スズメバチ、ネズミと外来種で、北海道ではヒグマとエゾシカが社会問題になっている。「どう野生動物と共生していくか」という観点があるのに、それらがアトランダムに出て来るので見ていて分かりにくい。少し整理すれば、それぞれの事情や人間がどう向き合ったらいいのかが浮かび上がってくるのではないかと思った。
  • ナレーションが声優の声だけだったので、トーンが全部同じになってしまったのではないか。アニメーションのキャラクターで喋っているので、子供におもねるようになってしまったと感じた。また、すべてが2時間に詰め込まれていて混乱したので、交通整理が必要だったのではないかと思った。
  • ヤバい生き物やキケン生物をただ害獣扱いするのではなく、人間の反省点も感じさせる作りになっているのが、子どもたちにとって良かったのではないかと思った。
  • 数が少なくなると絶滅危惧種になって珍重され、多すぎると害獣として駆除されるという動物の扱われ方を見ていると、一番ヤバい生物は人間だと考えさせられた。人間も動物の一種で、かなりひどい動物だと思った。
  • 自然界のドキュメンタリーが好きでよく見るが、大きく分けると、基本的に加工しないものと全部加工するものの2つある。声や音楽で濃厚な味付けに加工してしまうのが、子どもに向いているという考え方はどうだろうか?
    楽しんでもらおうと加工したものを子供たちに与えて、日本の問題、特定外来種の問題に突っ込めないというのは残念な気がする。
  • 「生き物と人間、うまく付き合って行けると良いよね」というラストのナレーションは、放り投げる感じで結局番組は何も言っていないと思った。作っている側の姿勢みたいなものが、最後大事だったのではないか。
  • 「日本では今こうなっている」「これは駆除の対象」など、子供に対して解説の先生が説明してくれたらうれしいかなと思った。
  • 見終わった後に、何がコンセプトだったのか良く分からない点があった。絶滅危惧種とか在来種は、小学生はなかなか分からないと思うので、もう少し説明をすると良いと思った。
  • これはこういう描き方で良いのか?というモヤモヤがずっと付きまとった。ナレーションが上手くて、面白く煽れているから、尚更困った気持ちになった。
    決して悪意で作っているとは思わないが、面白く見せてはいけないことがある気がした。

この御意見を受けて、日本テレビ側は次のように答えました。

外来種の生物を駆除する話をどこまで入れるのか、ナレーションのテンションが高すぎないか、など色々と議論をしながら制作してきたが、今回、様々なご指摘を頂き、今後は専門家に解説してもらうなど、初めて見る方にも分かりやすい番組を目指して行きたいと思う。