第575回日本テレビ放送番組審議会は、1月7日に放送された『もうひとつの箱根駅伝』の合評を行いました。今年で100回を迎えた箱根駅伝に参加した選手たちが語るレースの舞台裏、監督たちの戦略、大逆転の真相、レースを見守った家族の物語など、裏側に密着したドキュメント番組です。(1名リポート)
- とてもテンポよく、見どころが明確で楽しく拝見した。監督の乗る運営管理車の映像が面白く、監督のちょっとした“つぶやき”がうまく切り取られて編集され、来年見る楽しみが増えたと思う。
- 車内カメラはプライベートな空間を覗かせてもらっている特別な感じがあったし、選手と母のLINEのやり取りには心を打たれた。
- 番組の中にほとんど女性の登場がない男性の世界だったことが気になった。ナレーターくらい女性にしても良かったのではないか。そして、来年は留学生の話ももっと知りたいと思った。
- 監督が交代したばかりの駒澤大学は、前監督が選手の横を走っていたり、電話を掛けたりして、まだ院政が敷かれているという感じがひしひしと感じられた。そういう細かいところを映していたのが、とてもよかった。
- 箱根駅伝に限っては、選手や監督の“メディア慣れ”も力量の一部で、メディアの力を使うことや、映り慣れることに圧倒的にたけている原監督が優位になったのではないかと思った。
- 「箱根で注目された選手はその後あまり活躍できない」という話もあり、その後の選手たちの活躍や頑張りにもたくさんドラマがあると思うので、「その後の箱根駅伝」も届けて欲しいと思った。
- 箱根駅伝に勝ったからいいと思われがちだが、人生においては一度勝ったに過ぎない。負けた人はここから学んで社会で活躍しているということが見えたら、この大会に出ることの意味がさらに出てくると思う。そうすれば、社会にとってのスポーツの位置が変わって見えるのではないかと思う。
- 駅伝はドラマを作る側からすると日本人の感性と非常に響きあう気がする。思ったような成績を出せなかった選手が、倒れこむと同時に謝るという感じは好きだが、凄く日本人っぽいと思うときがある。
- カメラがあることが、監督たちにどのくらい心理的な圧迫があるのかが少し気になった。陽な感じがする青山学院の監督は選手の後を押している気がするが、駒澤の監督のちょっと生真面目な感じは、選手にとって少しきついのではないかという気がして、そういうことも面白いと思った。
- 能登半島地震の翌日で、開催できるかという不安と緊張もあった中、ちょうど100回記念という思いが伝わる番組だったと思う。長い信頼関係があるからこそ、密着取材が出来ているのではないか。「勝てる選手だったのに、勝たせてあげられなかった」という監督の悔しさを非常に感じた。
- 監督の違いが面白かった。1年生監督と10年近く監督をしている人の差が出て、選手と監督の対照も含めて一番のポイントだと思った。
- 給水ポイントのところや、山下選手の両親がそっと見ているシーンで泣いてしまった。駅伝中継を振り返ると3区が勝負だったと思ったが、このように後から分析してもらうと、もっと味わいが出ると思った。
- 練習風景や沿道で応援する家族や指導者など、多角的な視点から見せる手法に感心した。スポーツ好きな人はもちろん、物事を色々な角度から見るメディアリテラシーの力も養えるように思った。
- 放送は1時間強だが、その背景でどれだけ取材をしたのかぜひ知りたいと思った。
この御意見を受けて、日本テレビ側は次のように答えました。
「箱根駅伝の裏側をどれだけ伝えられるか、それぞれの学校の特色をいかに捉えるかを使命として、夏合宿をはじめとして、予選会では十数台ものカメラを出して、一年を通して取材している。今後はいただいたご意見を参考にして、より良い番組作りに努めます。」
また、今回の審議会では24時間テレビの今後の募金活動についても報告しました。
そして、ドラマ『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子さんの訃報については、委員から「背景・経緯を検証し、再発防止策を講じることが重要だ」などの意見をいただききました。