第585回日本テレビ放送番組審議会は、『NNNドキュメント 言えない心のうちがわを~家庭内の性虐待・子ども達の葛藤~』について合評を行いました。長年タブー視されてきた家庭内で起きる子供の性的虐待について、大人になった被害当事者の証言を中心に掘り下げていくドキュメンタリーです。
(1名欠席、2名リポート)
- かなり衝撃的なドキュメンタリーだったので上手く咀嚼が出来ていないが、埋もれがちなマイノリティーの方の声を届けることは、テレビにしかできないことだと思った。
- センシティブなことを話して大丈夫かと心配だったが、精神科の先生が「話すことが治療になる」と仰っていて、証言される方もかなりの覚悟を持って話されている。冷静に、感情的にならずに話してくださるので分かりやすく伝わってきたし、裏付ける専門家の意見があったので落ち着いてみられた。
- たまたまテレビをつけてこの番組を目にしたら、正直、目をそむけたくなってしまうことばかりで最後まで見られたかというと自信がないが、こういう番組は続けて欲しいと思う。
- 時間をかけて取材し、信頼関係をきちんと築いてくれたのはありがたく、それがテレビの大きな役割だと感じた。見ていて感情的になる番組だが、専門家が噛み砕いて説明してくれる視点と共に、皆に知ってもらうことが大事だと思った。
- 今後、この問題に対してのフォローや何かをしていけるのであれば、今回出てくださった皆さんの思いも繋がっていくと思う。
支援者のインタビューを的確に挟んでいることで、視聴者は色んな立場に自分を置き換えて見られる。被害者が身近にいたら自分がどうやって助けてあげられるのかを考える構成になっていたと思う。 - 取材者に証言していただくだけでなく、表現に凄く工夫がされていると思った。近年の活字メディアでは性被害の裁判のケースがとても増えているが、ポルノ的に消費されている面もあると聞く。消費に持って行かない表現は、専門性が高い大事な仕事になると思う。
- 家庭内の性暴力は被害を口に出しにくく、表にも出しにくい事例で、よくここまで顔を出して話してくださったと思う。自助グループの存在は、同じ経験を持つ方々にとって凄く力になると思うので、その存在を知らしめることが出来たというのも一つの大きなことだと思う。
- 被害を受けた女性の母親のケアも必要であることなど、様々なことを教えられた。被害者にならないために、加害者にならないためにという教育が小さなうちから必要なのだということもよく分かった。
- 男の子の性虐待はどうなのかと思った。家庭の内外も含めて男女を超えて小さな子供への性被害、性加害があるとすれば、そちらへの目配りがあってもいいのではと思った。
- 2019年に2週連続で放送された「未成年の性被害」というテーマの番組スタッフを見たら同じチームだった。継続的、長期的に取材すればするほどテーマが深まり、次のテーマも見つかることもあるので、今後もぜひ続けて欲しい。
- 愛情を受けながら虐待される、笑いながら殴られる、被害を受けながら声をあげられない子供たちがいるという現実を、まとめて問題提起をしていただいた。10年くらい前に世界中のドキュメンタリーを調べて「日本でもぼかしを入れずに顔出しのインタビューをすることに取り組まないといけない」という声明を出したが、今回の番組を見て、当時そういう声明を出してよかったと思った。
- ニュースで話題に上がるものの内情をよく知らなかったので、この番組をきっかけにして、性虐待がなくなることや被害にあった子供たちが、これまでより少し前を向けるようになればと思った。次にどのようなアクションを取っていけばこの問題を解決できるのか?何かできることがあるか?も含めて、繋げていけたら良いと思った。
- 今回の番組では女性の体験を中心に描かれていたが、男性にも少し触れていれば、更に多様な視点で問題を考えるきっかけが提供できたのではないか?また、出演者の安全確保とガイドラインの整備をする必要があると思う。
皆様のご意見を受けて、日本テレビ側は次のように答えました。
今回、当事者との関係を築くために直接お会いして、時間をかけて意見交換をした結果、『次の世代に同じ悩みを引き継ぎたくない』という思いを持つ当事者にご協力いただきました。男性の被害について取材は進めているものの、放送できるまでには至っていないため、今後も当事者の気持ちを大切にしながら取材活動を進めていきたいと思っています