知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


歩く!? ウナギ 上りの謎
第892回 2007年7月22日


 土用の丑の日、そして夏バテ解消の食べ物と言えばウナギ。実は、私達に身近なウナギは謎に包まれた魚だったのです。今回は科学でその謎に迫ります。

 ウナギは世界で18種類いて、日本にはニホンウナギとオオウナギの2種類のウナギが生息しています。天然記念物のオオウナギは、ウナギの中でも最大級で2.5mになるものもいます。
ウナギの養殖  矢野さんは200軒のウナギ屋さんと養殖業者がひしめくうなぎの名産地、浜名湖を訪ねてみると、ウナギはなんとビニールハウスで養殖されていました。中の気温は40℃、湿度は93%と、温水プール並みの温度に保たれていました。これは、ウナギがエサをよく食べる18℃以上に水温をあげ、一年を通してエサをたくさん食べさせるためなのだそうです。ウナギが出荷される時には、大胆にも池の栓を抜き、吸い取ります。そしてホースを伝い選別場に流されていきます。
 さて、ウナギはたくさんの謎に包まれた魚です。日本の川で過ごした親ウナギは、伊豆沖から2000キロ離れたグアム沖の深海に向かいそこで卵を産むらしいのですが、天然の卵はまだ見つかっていません。その後、生まれた稚魚は黒潮に乗って日本近海まで運ばれ、そこで捕獲されると養殖ウナギに、そのまま川に上ると天然ウナギになります。つまりウナギは一生で実に5000キロの大回遊をするということが最近わかったのです。
 ところで、最近のニュースで、ウナギの稚魚の輸出が規制され、値段が高騰し、将来日本でウナギが食べられなくなるのではといわれています。そこで、矢野さんはウナギの完全養殖を研究している三重県にある水産総合研究センターを訪ねました。しかし完全養殖には数々の難問がありました。実はウナギは産卵時期になるまではオスメスの区別がない魚で、しかも養殖するとほとんどがオスになってしまいます。つまりメスがいないのです。そこで研究所ではエサに性ホルモンを混ぜメスウナギを作ることに成功しました。しかし、メスウナギが出来ても今度はなかなか卵を作りません。そこで産卵期のサケの脳の一部をメスウナギに注射してみたところ、2ヵ月後、お腹の大きな卵を持ったウナギができました。ウナギは、1匹約2万個の卵を産むと言われていており、その大きさはおよそ1.2ミリです。卵はわずか1日半で孵化し、約3ミリのウナギの稚魚はレプトケファルス幼生といって透明で柳の葉のような形をしています。しかし最後まで成長するのは卵1万個にわずか1匹程度なのです。しかも養殖用に稚魚を捕りすぎて天然ウナギも激減しているそうです。そこで、天然ウナギを求め、矢野さんが和歌山県古座川のウナギ捕り名人を訪ねました。名人は「もどり」と呼ばれる竹で出来た仕掛けを使いウナギを捕ります。この仕掛けは一度入ると出てこられないよう中は細く狭くなっています。これを川底に沈め石で重しをします。そして翌日、中には3匹もの天然ウナギが入っていました。天然ウナギは養殖に比べると胸が黄色く、実はここから胸黄→むなぎ→ウナギという名前の由来になったともいわれています。でも何故こんな簡単な仕掛けで捕れるのでしょう?
ウナギが筒に入っている様子  そこで実験、20匹のウナギが入った水槽に一本の筒を沈めてみました。すると、餌もないのに自らウナギが次から次へと入り、一時間後には20匹すべてが筒に入りました。実は、ウナギは石と石の狭い隙間や岩の間に出来た穴に隠れる習性があり、もどりはその習性を利用した仕掛けだったのです。さらに今度は同じ筒を二本水槽に沈め、一匹ずつ水槽に入れてみました。すると一匹目が入った筒の中に後からきたウナギも入っていったのです。

所さんのポイント
ポイント1
ウナギは体に何かが触れていることと、狭い窮屈な場所を好む変わった魚だった!

 さて、名人が天然ウナギを地面に放り投げると、なんと水がなくても元気に動いたのです。なんとウナギは湿り気があれば陸上でも平気で歩くというのです。では一体どのくらい陸上で生きていけるのか実験です。まず、ウナギを湿った砂利の上に放置して観察しました。すぐ砂利の中にもぐったウナギは、3時間後苦しくなったのか砂の中から出てきて、エラを動かしながら苦しそうに悶えました。そして22時間後、遂にウナギの動きが止まりました。しかし、水を張った水槽に入れると、なんと何事もなかったかのように泳ぎだしたのです。実はウナギはエラ呼吸だけでなく皮膚でも呼吸できるのです。体が乾くのを防いでいる体を覆うムチンというヌルヌルの成分がウナギの陸上での皮膚呼吸を助けているのです。

所さんのポイント
ポイント2
ウナギはヌルヌルの成分と皮膚呼吸のおかげで、よりよい住処を求め、水のない場所でも移動できるのだ!これがまさに「ウナギ登り」!

 ウナギはスーパーでも売っていますがどうもゴムのように固い食感のことが多いですよね。そこで、スーパーのウナギを美味しく食べる方法を探しました。特売のウナギと専門店のウナギの固さを比べると、コラーゲンと呼ばれる繊維質タンパク質が多く含まれている特売の方が3倍も固かったのです。専門店では蒸したり焼いたり手間をかけコラーゲンを取り除きますが、特売の方は手間をかけないので、ものによっては、冷えると固くなってしまう場合があったのです。そこでおいしく柔らかくする方法を料理研究家の方に教わりました。
 まずは1)ウナギを半分に切り、フライパンに、ウナギの皮を下にして乗せます。ここで、なんと2)緑茶をウナギの皮が浸るくらい注ぎます。そのまま3)5分ほど煮て水分を飛ばしてから、最後にタレをかければ完成
 実は、緑茶は弱アルカリ性で、ウナギのコラーゲンを溶かす働きがあるそうなのです、そこで、同じ蒲焼の部位を中性の水と緑茶で同じ時間煮込み固さを比べてみると、お茶で煮込んだ方が柔らかく、緑茶は確かに有効でした。



動物(水中)編へ食べ物編へ
前週 次週
ページトップ

ジャンル別一覧 日付別一覧