知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


詐欺 の科学
第1265回 2015年3月1日


 日本を揺るがし続ける大問題。それは・・・"振り込め詐欺"。警察や自治体、銀行などの呼びかけにより振り込め詐欺の手口はみなさん知っているはず。にもかかわらず、去年の被害総額はおよそ375億円と過去最悪を記録。一体なぜ、知っているのにだまされてしまうのか?
 そこで今回の目がテン!は、振り込め詐欺に科学の力で切り込みます!

①なぜ息子の声を聞き間違える?

 振り込め詐欺の中でも一番多いのは・・・電話で息子を装いお金を奪い取る"オレオレ詐欺"。そこで、詐欺などの知能犯を専門に扱う警視庁捜査二課で長年刑事を勤めていた、大場良明さんに最近のオレオレ詐欺の特徴を聞いてみると、「多いのは、名簿をインターネットで購入する。住所・氏名・家族構成などが載ってる。もちろん家族の携帯電話もわかる。それを利用してだまし取る」とのこと。
 最近の手口は巧妙化し、犯人側は、相手の細かい情報が記載された名簿を入手。名前や年齢、職業までも把握した上で、電話をかけてくるそうです。
 さらに大場さんは、「母さん、この電話番号は変えたから変えといて。ということで、電話番号を書き換えるとそのニセの電話番号が子供の名前として載ってしまい、完全に信じ込んじゃう」と解説。犯人は、詐欺の第一段階として"アポ電"と呼ばれる電話をかけ、犯人が使う携帯番号に、本物の息子の名前を登録させてしまうといいます。でも、聞き慣れた息子の声と、赤の他人の声を聞き間違える事があるのでしょうか?
 街で聞いてみると、多くのお母さんが、自分の息子の声は区別できると言っています。では、実際にそういう状況でも聞き分けられるのか?
 そこで、目がテン!大実験。成人した息子さんがいる3人のお母さんに、架空の番組撮影に参加してもらうという名目で日本テレビに来てもらいました。
 しかし、実は受付で待つお母さんに実際に行われているオレオレ詐欺の手口で電話をかけます。そして最終的にお金をだまし取ることができるのか?実験です。犯人役はこちらの2人の役者さん。1人は"掛け子"と呼ばれる本物の息子を装って電話をかける役。そして、もう1人は"受け子"と呼ばれる、お金を受け取りに行く役を演じてもらいます。2人には、受付のすぐ目の前に停めた車の中で、お母さんに電話をかけてもらいます。
 まずは、詐欺の第一段階"アポ電"。スタッフが用意した携帯電話を使って携帯番号が変わったことを伝えます。果たして、お母さんは本物の息子ではないと見破る事ができるのでしょうか?すると・・・なんと、あっさりとアポ電を信じてしまいました!
 続いて、別のお母さんで実験したところ、最初は、息子と声が違う事を怪しんでいる様子。しかし結局、息子だと信じてしまいました。
 結果、3人全員が他人の声にもかかわらず本物の息子からの電話だと信じてしまったんです。

所さんのポイント
ポイント1
オレオレ詐欺の手口①
「息子の名前と携帯番号が変わった」など用件のみを伝えてつじつまを合わせる!


②オレオレ詐欺再現実験!他人にお金を渡してしまうのか?

 オレオレ詐欺の手口を再現した実験はまだまだ続きます。
 今度はオレオレ詐欺の第二段階、「急にお金が必要になったので貸してほしい」という電話です。まずは一人目のお母さんから。携帯電話の修理代金が足りないので急きょお金が必要になった事を伝えます。  この電話では、お母さんの居場所を聞き出し自分でお金を取りに行くと伝えました。お金を取りに来る息子を心配してか、落ち着かない様子。
 さらに、待ち続けるお母さんに、第三段階の電話を仕掛けます。
 今度は・・・お金を取りに行くのが、息子本人から他人の携帯ショップの店員へ代わるという内容。ここで、より信用させるため店員役に電話を替わります。このように、電話口で何人もの人が登場する手口は"劇場型"と呼ばれ最近のオレオレ詐欺の手口の1つなんです。そして、5分後・・・お金を受け取る"受け子"のニセ店員が、母親の元へと向かいます。
 そしてなんと、お金を渡してしまいました!そこで、スタッフが説明に入ります。でも、なぜお金を渡してしまったのか?被験者の母親に理由を聞くと、「いつも忙しいコだから、困っているんだろうなと思って」と答えました。続いて、別のお母さんも第二段階の電話をあっさりと信じてしまい、続く第三段階の電話も、丁寧にメモまで取って、確認しています。
 そして、携帯ショップの店員を装う役者と会うと・・・なんとこちらも、疑うことなくお金を渡してしまいました。結果、3人中2人のお母さんが、お金を渡してしまったんです。
 一体なぜなのか?詐欺犯罪などを研究している立正大学心理学部の西田公昭教授に伺うと、「"時間的切迫感"の影響があった。時間的切迫感というのは、思考に余裕がなくなってしまうのであり、感情が揺さぶられている状態なのでお金さえ用意すれば解決する、と言う風に唯一の答えを用意して、そこに時間的な圧力をかける。そうすると、その答えに飛びついてしまう」というんです。

所さんのポイント
ポイント2
オレオレ詐欺の手口②
「今すぐにお金が必要」など時間的切迫感を与えて余計な事を考えさせない!



所さんのポイント
ポイント3
オレオレ詐欺の手口③
「会社の小切手をなくした」「交通事故を起こした」など時間的切迫感を与え、現金を要求する!


③巧妙なオレオレ詐欺 ダマされないためには?

 3人中、唯一お金を払わなかったお母さん。一体、なぜだまされなかったのでしょう?電話のやりとりを聞いてみると・・・息子本人がお金を取りにいくという第二段階の電話までは少しも疑っていません。しかし、"息子本人がお金を受け取りに行けない"という事を伝えると、事態が変わります。その後、いくら話しても、納得してもらえません。そこで、実験を中断して事情を説明。電話自体は息子さんと信じていた様子。では一体なぜお金を払わなかったのでしょう?お母さんに聞いてみると、「急いでいる理由が、もっと深刻だったら払ったかもしれませんね」。
 こちらのお母さんは、息子さんが大学生という事もあり、時間的切迫感を強く感じてはいなかったようなんです。
 そこで今回、オレオレ詐欺に騙される要因の「時間的切迫」から逃れられる方法を発見しました!それは・・・鏡を見て電話をするということ!
 では一体なぜ、鏡を見ると冷静に考えられるのでしょうか?西田公昭教授に聞いてみると・・・「これはセルフモニタリングの効果。鏡を見る事によって自分を客観視し自分の気持ちが落ち着いて混乱から逃れられる。振り込め詐欺の犯人は、できるだけ客観視できないように話をもっていくわけです。そこを断ち切るために鏡が重要になってくる」。

所さんのポイント
ポイント4
オレオレ詐欺対策
電話を受けるときは必ず鏡を見て、自分を客観視しながら話すことを習慣にする!





人間科学編へ
前週 次週
ページトップ

ジャンル別一覧 日付別一覧
番組に対する、ご意見、ご感想等ございましたら、番組メールボックスの方にお寄せ下さい。
宛先は、 megaten@ntv.co.jp です。
原則、質問にはお答えできませんが、頂いたメールは、番組スタッフが閲覧し、今後の番組作りの参考にさせていただきます。