放送内容

第1509回
2020.01.19
サウナ の科学 人間科学

 心も体もリフレッシュできると今、サウナがブームになっているんです。ある調査によると、月に1回以上サウナを利用する人は、2018年には推計1159万人。1年前と比べるとおよそ11%、増えているんです。暑くて辛いイメージもあるサウナなぜそんなにハマるのか?その魅力に都丸紗也華さんが迫ります!
 今回の目がテンは、今人気のサウナを科学します!

サウナ大国フィンランド流のサウナ

 都丸さんが訪れたのはフィンランドの大使館。迎えてくれたのは、フィンランド大使館で働くサーナさん。実は、“サウナ”はフィンランド語。北欧にあるフィンランド共和国は550万人の人口に対して、およそ330万のサウナがあると言われ、一家に一台、サウナを持っているんです。大使館の建物の中にも、2つのサウナがあり週に一回、スタッフや家族をよんでサウナに入っているんです。
 今回はフィンランドのサウナの仕方、方法を教えてもらいます。サウナによる体の変化に詳しい、医師の前田先生にもその入り方を見てもらいます。
 まずはシャワーで汚れを落とし、サウナの中へ。日本のサウナの多くが80度から100度なのに対し、フィンランドのサウナは70度から80度と低温なのが特徴。またフィンランドのサウナは湿度が日本のサウナより高いのですが、そのために熱したサウナストーンに水をかけ蒸気をだすロウリュウを使います。
 ロウリュウをすることで、27%だった湿度が66%まで上がりました。ロウリュウの熱い蒸気によって体感温度が上がり汗をかきやすくなるんです。

 前田先生よると入浴とサウナの違いは、サウナは全身で汗をかけること。入浴の場合、水に浸かっている部分の汗腺は閉じており、汗をかくことでエアコンなどで機能しにくくなっている汗腺を、正常な状態にすることができるというんです。
 時間は気にせずリラックスして入るのがフィンランド流。身体が熱くなり、出たいと思ったら出ます。
 前田先生によると、サウナに入ると体の随所の血の巡りが良くなるそうです。特に、肩こり、腰痛が軽減することにつながるんです。
 5分ほどで、サウナから出たら、その後はぬるめの温度でシャワーを浴びます。シャワーのあとは外気にあたり、飲み物を飲みながら休憩します。

 これを2、3回繰り返し1時間以上かけてゆったりとした時間を過ごします。 都丸さんは「リラックスして気持ちよかった」とのことですが、都丸さんは本当にリラックスできているのか?そこで、心拍数などの値から自律神経を分析する装置をつけます。自律神経は交感神経と副交感神経があり、活動のバランスがちょうど同じだと理想的。

 サウナに入る前は、交感神経が優位で、緊張やストレスを感じていました。
 サウナに入ると、高温のため緊張状態に。交感神経は最大限に優位になります。その後、シャワーを浴びると徐々に副交感神経の活動が戻ってきます。そして、休憩中には副交感神経が優位なリラックス状態に!
 前田先生によると、サウナの中では交感神経の割合がかなり優位になり、シャワーを浴びたあとには副交感神経が優位になってくる。これを何回か繰り返すと、体は自律神経を正常な状態に戻そうと働き自律神経の切り替えがうまくできるようになり、バランスが整うそう。
 サウナは、シャワーや休憩を組み合わせることでストレス解消に効果的だったんです。

どうしてそんなにハマる?

 神奈川県の温泉施設にあるサウナを尋ねると、サウナが大好きな人、通称サウナーの方が。サウナに詳しい、前田先生に聞くと正しく入れば、毎日入っても問題ないそう!
 日本に多いサウナといえば、比較的温度が高くすぐそばに水風呂があるというのが定番。サウナと水風呂の組み合わせにサウナにハマる秘密が隠されているんです!
 そこで、サウナーたちの入り方を都丸さんが体験します。教えてくれるのは、サウナーで、従業員の加川さん。
 汗をたくさんかくサウナ。まずは水分補給。次に体を洗い、汚れを落とします。冷え性の人や体が冷えている場合は湯船に浸かり体を温めます。そして、サウナの中へ。
 サウナの段ごとの温度を計って見ると、上段は100度に近い温度。慣れない人は下から徐々に上に上がって行きましょう。
 10分たったらサウナを出て、水風呂へ。水風呂の温度は約17度。汗を流して、水風呂に入ります。
 サウナと水風呂で交感神経が最大限優位な緊張状態になります。そして重要なのが水風呂後の行動。外気浴で10分ほど休憩。こうすることで、副交感神経が優位になり緊張状態から最大限のリラックス状態に変わります。
 そして、再びサウナへ。サウナ、水風呂、休憩を2、3回繰り返し、交感神経と副交感神経を交互に最大限優位にすると休憩の時に特別な感覚を得られると言います。

 サウナからでたら、水風呂に入り2回目の外気浴で休憩すること、10分。都丸さん、頭の後ろがふわってぬけててリラックスはして超気持ちよかったそう。
 この特別な感覚を“ととのう”といいます。
 この心も体もととのう状態にハマり週に何回もサウナに通う人が増えているんです。ととのっている状態のとき脳ではある変化が起きていると言います。
 サウナ大好き慶應義塾大学、医師の加藤先生に聞きました。加藤先生は、サウナー仲間20人の脳波をととのう前と後で比較。
 リラックス状態を表すといわれるアルファ波ですが、その値が異常値を示すと疲れやストレスを表します。ととのう前の脳、赤い部分は、異常値を示し被験者が疲れを感じていることを示しています。そして、サウナに入りととのった後の状態、異常値を示す部分が半分になったんです。

 これは、脳がリラックスして正常な状態に近くなったと考えられるとのこと。
 さらに、活動的な時に出るベータ波。ととのった後には感覚を司る、頭頂葉で活性化していたんです。
 加藤先生によると、サウナに入った後感覚が敏感になるという現象は、Tシャツを着たときに肌触りが変わる感覚やごはんの味がおいしく感じるなどで、みなさん実感していることだそう。
 ととのうとは、リラックスしている状態にも関わらず感覚が敏感になり、頭がスッキリする特殊な状態だったんです。
 頭がリセットされて集中力が戻ってくるので仕事がはかどる、そのため、ととのった後にミーティングや仕事ができるスペースを提供する施設も登場しているんです。

日本最古?のサウナ

 山口県防府市。鎌倉時代から使われてきたサウナがあると聞き都丸さんが訪れたのは、東大寺別院阿弥陀寺、1180年に焼失した東大寺の復興を務めた重源上人によって、建立されました。
 鎌倉時代のサウナ、石風呂。周りを石で囲んでその上に赤土塗って熱が逃げないようにしています。石風呂は、鎌倉時代、重源上人によって作られ石風呂の中で念仏を唱えると怪我や病気が治るとされていました。

 石風呂の中に入ってみると、中は四畳半ほどのスペース。天井は高さ2メートあります。
 石を温めるために薪を積んで4時間くらい炊くそう。数百年前と同じやり方で、サウナを作ります。
 その間に、サウナの中に大量に入れるという石菖を採りに。石菖の香りの元になる成分には鎮痛作用があるとされ、古くから石風呂に使われてきたんです。
 お昼過ぎになると、地元の人たちが続々と集まってきました。
 石風呂は、燃え尽きた灰や炭をかき出します。ホースの水をまき、火を完全に消します。石風呂の中に入り先ほど採った石菖をしきつめます。熱で石菖から香りが出やすくなるんです。その上にゴザを敷きます。そして、温まったこの中に入れるのが卵。卵を吊るして、40分おくと美味しい焼き卵になるんです。

 そして石風呂の完成。石風呂の上部は、120度以上の高温、床に近い部分はおよそ66度。頭が熱くなるため、毛布をかぶって入ります。タオルや毛布などをかぶり熱さ対策をして服のまま入るんです。都丸さんもタオルを巻き、毛布をかぶって準備OK!
 地元の人たちも一緒に入ります。4畳半のスペースは、いっぱいに。
 石風呂を見守ってきた住職に話を聞くと、石風呂は昔から地域の人たちの憩いの場として使われたといいます。休憩も石風呂の楽しみの一つ。都丸さん、初めての焼き卵に大満足。
 鎌倉時代のサウナ、石風呂は今もなお、地元の人たちの憩いの場所として愛されていたんです。