放送内容

第1512回
2020.02.09
冬の花火 の科学 物・その他

 冬の花火は夏より綺麗って本当!?その理由を、検証すると冬と夏の大きな違いが明らかに!そして、花火大会の少ない冬場、花火師さんは普段何をしているのか?工場に行ってみると、そこには意外な姿が!
 さらに、一年間で冬の10日ほどしか作れない 江戸時代から続く、花火作りに密着!江戸時代の人にも楽しまれた貴重な花火とは?
 今回の目がテンは、寒空に上がる冬の花火を科学します!

冬の花火師さんはなにをしているの?

 花火職人さんに話を聞くために向かったのは、山梨県。車で工場に向かうと、人里離れた山奥にあったのはコンクリートで作られた建物。ここが花火工場。迎えてくれたのは、花火師の斉木さん。冬場、花火師さんは何をしているのか。早速現場を見せてもらいます。
 まず目にしたのは星。星とは、花火が上がった時に光や色を出しながら飛び散る火薬の粒のこと。

 花火の光一つ一つが星であり、花火はたくさんの星で構成されているんです。星は軸となるセラミックの粒に火薬を何層にも重ねて作られます。
 星の作業現場では、ご飯を炊くおかまのような特殊な釜を回して作ります。小さな星が入った釜を回転させながら、さらに星の周りに火薬をつけていきます。そして、満遍なく火薬をつけたら天日干しをして、乾燥させます。
 一度に大きくしてしまうと中が乾くまですごく時間がかかってしまうため、この工程を毎日行います。1日に1粒に対して平均して0.06ミリくらい大きくなるそう。花火の種類によって星の大きさも異なりますが大きい星はおよそ1ヶ月もかけて作られます。

 星の火薬を完全に乾燥させることが大切なので、冬は花火作りに適しているんです。
 花火の色は、炎色反応で色を変えています。炎色反応とは、特定の金属イオンを含む物質が高温の炎の中でそれぞれ違った色になる反応のこと。
 花火ができたころに使われていたのは、硫黄、硝石、木炭を混ぜ合わせたシンプルな火薬で、江戸時代の花火は赤茶けた色が定番でした。一方、最新の星はバリウムという金属を使いキレイな緑色に発光します。今では様々な火薬を使うことで10種類ほどの色を出せるようになり、色とりどりの花火を楽しむことができるんです。
 そして、星を玉に詰めていく玉込めの作業。室内で行うのですが暖房設備を使えないため寒いときには気温が5~6度になることも。花火は火気厳禁。冬でも、エアコンやストーブは使えません。
 細心の注意をはらっていますが安全面から工場は人里離れた山の中にあるんです。星を入れたら割役と呼ばれる、星を飛ばす役割の火薬を入れます。3色の火薬を使えば、3色の打ち上げ花火に。上空で綺麗に広がるために、割役と星を規則正しく並べます。

 詰め方で、花火のデザインが決まるんです。玉を重ね合わせて、テープを貼ったら玉込め作業は完了。玉込めのあとは、玉にテープをはる作業。
 何重にも貼ることで、玉が上空で破裂する時にエネルギーが増して大きく花火が開くんです。花火作りは膨大な時間がかかるため冬の間も、花火職人さんは忙しく働いていたんです!

特製!目がテン新作花火

 冬の間は新作花火を試す場でもあります。そこで、目がテン花火を作っていただきました。デザインは、番組を多くの人に知ってもらうための目がテンの文字花火に。記号やイラストなどを星で形作り打ち上げる型物という花火に挑戦。型物は、開いた時の形とほぼ同じに星を詰めるのですが、みる角度によっては形がキレイに見えない場合もあるんです。
 目がテン花火その結果は!?角度によっては綺麗に見えていたはず!目がテン花火大成功です!

冬の花火がキレイな理由

 花火といえば、夏!しかし、全国には冬の花火大会もあるんです。冬に花火がみれるという岐阜県にある下呂温泉へ向かいました。河原では、花火大会の準備が行われています。この日は、1万3000発の花火を上げる予定です。
 この日の下呂市の夜の気温は、1度。かなり寒くお客さんも服を着込んでいます。午後8時、打ち上げ開始。音楽に合わせて、たくさんの花火が打ち上がりました。
 花火大会に来ていたお客さんに感想を聞いてみると冬の花火は夏より綺麗に見えたというんです。全国の花火業花火企業が加入している煙火協会理事の河野さんに聞いてみても、冬は綺麗に鮮明に見えるので非常におすすめとの答えが。さらに、現場で花火を見ている花火師さんも冬の花火はすごく綺麗に見えるといいます。本当に冬の花火の方が綺麗なのでしょうか?
 気象の専門家に話を伺うと、冬の方が綺麗な理由は冬の方が大気中にいる微粒子の数が少ないという点だそう。そこで実験!足利大学大学院の花火研究室をお借りし、人工的に冬と夏の空気の状態を再現します。
 一方は加湿器とヒーターをたき、温度、湿度が高い夏の環境。もう一方は、空気清浄機で空気中の微粒子を少なくし、温度、湿度が低い冬の環境を再現。二つの環境で花火の見え方に違いはあるのかを検証します。
 夏の環境での花火は花火の中心部がぼんやりとし、煙も目立ちます。一方冬の花火は、はっきりと花火が見え、煙もほとんど見えません。

 夏の花火大会の映像を見ると空全体がぼんやりとし煙も目立ちます。一方冬の花火は暗い空にくっきり花火が見え、煙も見えにくかったんです。

 夏は水分量が冬に比べて多く大気中に浮かんでいる微粒子が水蒸気を吸収して膨れ、それにより光が散乱しやすくなり夏の花火はぼんやり見えるんです。散乱した光は途中で弱くなり、目まで届きにくくなるので、ぼんやり見えてしまうんです。さらに夏は微粒子に当たって散乱した光が煙にあたることで煙が目立って見える可能性が高いんです。空気の状態から冬の花火の方が綺麗に見える可能性が高いんです。

冬の10日しか作れない花火

 冬の10日しか作れない花火があると聞き杉原アナが向かったのは福岡県みやま市。出迎えてくれたのは、3代目の筒井良太さんです。
 冬にしか作れない花火とは線香花火。実は、線香花火は2種類あります。
 江戸時代に書かれた夏の一コマで、縁側の二人が見ているのは、藁の先に火薬をつけた花火です。この花火、仏壇に供える線香のように見えることから線香花火と名付けられたと言われています。
 米作りが盛んだった関西地方、米を刈った後に残る、藁の中心の固い芯、藁スボを持ち手とした線香花火が作られ、スボ手牡丹と呼ばれました。これが、線香花火の元祖で冬の10日ほどしか作られない花火なんです。

 一方、稲作の盛んでなかった関東地方では、藁の代わりにカラフルな和紙で火薬を包んだ「長手牡丹」が流行したんです。
 冬の10日ほどしか作られない西の線香花火、スボ手牡丹。その制作場所に案内してもらいます。
 藁の芯の先端に火薬をつけていきます。使うのは、藁を何百本も一気に垂直に立てる昔ながらの道具。盤にあいた穴に藁をはめ込みます。藁の入った箱に盤を重ねて、これをひっくり返し藁を下に落とします。こうすることで、盤の穴に藁が入り込むんです。

 使う火薬は、硝石、硫黄、松煙と昔ながらの材料。そして、動物の骨や皮から抽出される膠を接着剤として使用します。湯煎した膠に火薬を混ぜたものを藁の先端につけていきます。伝統の花火を残したいと300年前と同じ材料で作り続ける筒井さん。温度で変化する膠を使うスボ手は1月から3月の、湿度が低い晴れた日にしか作れないんです。
 火薬をつけたら3時間ほど乾燥。日が強すぎても、火薬にヒビが入ってしまうため日陰で乾かします。こちらでは、1日約4万本の線香花火を製造しています。