放送内容

第1515回
2020.03.01
かがくの里・田舎暮らし の科学 場所・建物 食べ物 地上の動物

 荒れ果てた土地を切り開き、かがくの力で豊かな里山をよみがえらせる長期実験企画。それが、目がテン!かがくの里。
 巨大なクズの根からデンプンを採り出し、クズ粉作り!果たして、どれだけクズ粉が採れたのか!?
 さらに!!2020年新たなプロジェクトが始動!それは…里にフクロウを呼ぼうプロジェクト!そこには、里山とフクロウのふか~い関係が!
 今回は、クズにフクロウ!冬のかがくの里スペシャル!!

クズの根を掘り出す

 去年、炭づくりの最中に、木材利用の専門家、村田先生が、かがくの里に自生したクズを発見!
 クズは、日本各地の山などに自生する、マメ科のつる植物。夏場に、ツルが他の木に巻き付き成長を邪魔するなど、厄介者というイメージですが、その根にはデンプンをたくさん貯めていて、それを採り出したものを「クズ粉」といい、昔から重宝されてきました。
 クズ切りの原料になる、クズ粉。でも今、世の中に出回っているクズ切りの多くは、クズ粉ではなく、サツマイモなどのデンプンから作られたもの。その理由は、クズの根は掘るのが大変な上、クズ粉はわずかしか採れないから。だからクズ粉100%のものはかなり高価で、80gでおよそ1000円するものも。そんなクズ粉が、かがくの里でも採れるかもしれないのです!

 クズは夏場、勢いよくツルを伸ばすため、冬の間、そのエネルギーとしてデンプンを根に貯めます。そこはサツマイモのように太くなるのだそう。しかしクズの根は、まっすぐ下に生えているのではなく、横に枝分かれし、複雑に絡み合いながら伸びます。

 そのため、どこまで根が生えているかわからず、化石や遺跡を発掘するようなもの!収穫祭のとき、ほんの一部しか掘り出せず、残りの大部分は持ち越しになっていたのです。
 あれから2か月。掘り残したものを掘り出すことに。
 少しでも多くクズ粉を取るためには、とにかく根を掘ること!一番太い根は、下ではなく奥へ伸びており、おそらくその先にデンプンが貯まっているはずとの読み!しかし、掘り進みたい方向をブロックするように生えていたのは、クズが巻き付いているオニグルミの根。これを切ると、オニグルミが倒れる危険があり、切れません。
 困っていたところへ、達人、西野さん登場!自然薯を掘る時などに使われる道具を使い、オニグルミの根を避けて掘り進めます!すると、先生の予想通り、クズの根は地中でつながっていたようです!そして、根の先端が出てきました!
 最後に、枝分かれした細い根も掘り出せば、ついに巨大なクズの根の全貌が明らかに!なんと身長185cmの阿部さんより大きいクズの根!ここから、どれだけのクズ粉が採れるのでしょうか!?

かがくの里特製!!クズ粉作り

 まずは、高圧洗浄機で泥を落とすと同時に、水の勢いで薄皮をはがし、のこぎりで細かくします。根の中にある「柔細胞」という細胞にデンプンが蓄えられているため、これを採り出すために、さらに細かく切り、水と一緒にミキサーにかけます。続いて、ミキサーにかけたクズの根の汁から繊維を取り除くため、ネットで濾します。これでしばらく置いておけば、水とデンプンが分離し、デンプンだけが沈殿するはず。
 あとは、ただひたすら根を砕き、水にさらしていきます。クズの根を砕き、水にさらしてから4時間後、白いものが沈殿してます。これがデンプン、クズ粉です!!

 先生の指示通り、上澄み液を捨て、新しい水を入れ、再び攪拌させます。それをさらしで濾すと、真っ黒から、ミルクコーヒー色に。これを10時間置き、翌朝見てみると、再びデンプンが沈殿していました。この作業を何度か繰り返すと、茶色かったクズ粉が、だんだん白くなってきます。最後は天日で乾燥。翌日、まだ茶色い部分は残っているものの、カチカチに固まっていました!

 植物の専門家、糟谷先生と、調理の専門家、露久保先生に、クズ粉として使えるのか確認してもらうと…クズ粉づくりは大成功!

 採れた量は、194g!
 このクズ粉の一部を使い、露久保先生にクズ餅を作ってもらいましょう!
 クズ粉といったらクズ餅!まず、水に砂糖、そしてクズ粉を溶かします。それを火にかけ、かき混ぜていると、ところどころで、のり状に固まりはじめました!熱を加えるとデンプンが水を吸い、全体がお餅のようにネバネバに!あとは冷ますだけ!冷えて固まったら、食べやすい大きさに切り、定番の黒蜜と、きな粉を振りかければ、かがくの里特製、クズ餅の出来上がり!

 クズ粉は、きめが細かくて舌触りもよく、消化吸収もよいそうです。

フクロウを呼んで里山再生

 里の生き物の専門家、宇都宮大学の守山先生。実は守山先生、フクロウ研究のスペシャリスト!野生のフクロウにGPSをつけて行動調査を行ったり、森の中にフクロウの巣箱を設置して、いまだ謎の多いフクロウの生態を研究中。守山先生のフクロウ研究は、里山の自然保護にもつながっているのです。
 フクロウは、はばたく音も立てず獲物を仕留める名ハンター。森の生態系では頂点にいる動物ですが、今、耕作放棄地や放置林の増加により、里山の環境が悪化。フクロウの数は減りつつあるといいます。
 実は、食物連鎖の頂点にいるフクロウが減ると、エサとなるネズミなどが増えてしまい、里山全体の生態系のバランスが崩れてしまうそうなのです。
 そして里でも、ある大きな被害が!去年、ひまわりから油を取ろうと考え、順調にひまわりを育てていたのですが、収穫したひまわりの種がネズミに食い荒らされてしまい、ひまわり油を断念せざるを得なかったのです。

 このネズミによる被害から考えても、かがくの里周辺にはフクロウがいないと推測されます。そこで守山先生は、里山再生プロジェクトの一環として、かがくの里にフクロウを呼び戻してはどうかと考えたのです。でも、里はフクロウがすめる環境なのでしょうか?
 守山先生いわく、間伐を行ったことで開けた里の裏山は、フクロウにとっても、いい環境になっていたようです!

 ということは、里にフクロウを呼んでネズミを食べてもらえば、被害も抑えられるはずです!
 フクロウは普段、巣を持たず、昼間は森の木の枝などに止まって過ごしています。冬から春になると繁殖期を迎え、つがいになり、直径45から70cmほどの「樹洞」という、樹皮がはがれ木の中が腐って空洞になった穴に棲みつき、子育てを行なうのです。
 もちろん、フクロウなど野生の鳥を捕まえることは法律で禁止されています。そこで今回、実験として、樹洞の代わりに、フクロウが入れる大きさの巣箱を設置して、そこで子育てをしてもらおうという計画!もし、かがくの里の裏山にフクロウが来れば、里山再生の大きな一歩になるはず!今後の里山プロジェクトでも、フクロウが暮らしやすい森にするため、整備を進めていきます。