放送内容

第1624回
2022.05.08
ビーチコーミング の科学 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー 水中の動物

 温かい季節になり、今人気なのが海辺の漂着物を探し、観察して楽しむビーチコーミング。今回、挑戦するのが、目がテン初登場の入社2年目の黒田アナウンサー。
 海辺を歩いてみると、普段見ることのない生き物との出会いや、鎌倉時代の器のかけらを発見!漂着物は歴史や環境など、学問の貴重な資料になることもあり幅広い分野の研究者も収集しているんです。
 今回は、海辺で楽しく宝探し!ビーチコーミングを科学します!

由比ヶ浜でビーチコーミング

 ビーチコーミングをしに訪れたのは、神奈川県鎌倉市にある由比ヶ浜海岸。外海に接しているものの、比較的波が穏やかな海岸です。
 今回ビーチコーミングを教えてくれるのは、漂着物学会に所属しビーチコーミング歴10年の大渕達治さん。大渕さんの所属する漂着物学会は、大学や研究施設の学者から学生、主婦まで300人ほどのビーチコーマーが所属。年に一度行われる大会で、漂着物に関する情報交換を行ったり、「漂着物」に関わる研究成果を学会誌で発表したりしているんです。
 ビーチコーミングとは、海の海流によって海岸に打ち上げられたものや、海岸の底に眠っているものが波によって出てくるものを見つけて拾って調べて楽しむこと。
 それでは早速、漂着物が多く見られる場所へ向かいます。波打ち際に打ち上げられたものが帯状に見える「漂着帯」に狙いを定めて漂着物を探すんです。

 ちなみに、ビーチコーミングは、浜が広くなる干潮に近い時間帯がおすすめ。
 最初に見つけたのは、タカラガイ。熱帯や亜熱帯の海域に分布するタカラガイが黒潮に乗って太平洋にたどり着き、冷たい海水に耐えられず死んでしまったものが春先に打ち上がるんです。

 昔の方々はこの貝をお金の代わりに使われていたこともあるといいます。お金にまつわる漢字に「貝」がつくものが多いのは、貝が貨幣として使われた歴史的な背景があったんです。
 さらに、貝の内側を覗くと人の唇に当たる部分が赤く色づいていることから名前が付いたクチベニガイも。

 漂着物の名前やそれにまつわる背景などを調べるのもビーチコーミングの醍醐味なんです。
 次に見つけたのは、ニオガイという2枚貝が開けた穴がある石。ニオガイは泥が固まってできた泥岩に殻を回転させながら穴を開け、そこを住処にするんです。

 次に見つけたのは、アメフラシ。巻き貝の仲間で敵に襲われたりすると出す紫色の液が、雨雲が立ち込めたように広がることからその名前がつきました。この時期、卵を産むために浅瀬に寄ったアメフラシが、岸に打ち上げられてしまったのです。

 そして、材木座海岸付近で見つけたのは、かわらけ。素焼きの器で、そのかけらが落ちていたんです。

 なぜ、海岸に器のかけらが落ちているのでしょうか。
 神奈川県の考古学を研究する上本さんに話を聞くと、鎌倉時代、客を招く酒宴などでは一回限りの使用で破棄される素焼きの器が使用されていたといいます。拾ったかわらけは、およそ800年前鎌倉時代のものの可能性が高いそうなんです。

日本海側でビーチコーミング

 やってきたのは福井県の美浜町水晶浜。透き通った海水や白い砂浜が美しく、日本の水浴場88選にも選ばれた人気の海岸です。

 今回一緒に、ビーチコーミングをしてくれるのは、漂着物学会の林さん。ビーチコーミング歴は20年の大ベテランです。
 この日、砂浜には多くの漂着物が上がっていました。
 その中に海外からの漂着物が。それは、対馬海流にのって、東南アジアなどの国々からやってきたココヤシ。ココヤシは種子を海流に乗せて散布するんです。

 さらに、南方から海遊してきたハリセンボン。寒さに弱いため、力つき打ち上げられてしまったんです。

 他にも、海水の温度が下がってくると打ち上がるのが、タコの仲間であるアオイガイの貝殻。

 アオイガイは、ぷかぷか浮きながら卵を育て海流に乗って拡散して行くんです。腕の一部から分泌した石灰質を使い、トタン板のような波状の薄い殻を作ることで、強度を確保しながらも、軽く水に浮くこともできる貝殻を手に入れたのです。
 さらに、ビーチグラスやシーグラスと呼ばれている、割れたガラスが海の砂や石で削られ摩耗し、表面が半透明になったものなど、さまざまな漂着物に出会った水晶浜でした。

海の宝石「シーグラス」とは!?

 海の宝石ともよばれ、ビーチコーミングで人気のシーグラス。アート作品の素材やアクセサリーに活用されることも。シーグラス専門店の松井さんによく見られる場所について伺うと、川の下降付近の砂利浜だそう。海に繋がる川には瓶などのガラスが捨てられることが多く、小石の混じった砂浜は、ガラスをよく研磨するためシーグラスができやすい環境なんです。
 そこで向かったのは近くに川があり小石が砂浜に多くある、千葉県のいなげの浜。波打ち際を探していきます。
 探すこと1時間、茶色のシーグラスを発見!

 ビール瓶や栄養ドリンクの瓶が割れてできた、茶色のシーグラス。シーグラスは色によっても珍しいものと、そうでないものがあり、お酒の瓶などで多く流通する茶、白、緑、水色がメジャーなカラーなんです。

 逆にレアなカラーは、普段見ることのないオレンジや赤などのガラスからできるシーグラス。

 そして、色の他にも高値で取引をされるレアなシーグラスがあるそうなんです。
 それが、おはじきやビー玉、瓶の底やボトルキャップなど、元の形が残った状態のシーグラスもレアなものとして扱われるそうなんです。

 波や小石に揉まれ、長い時間をかけて変化していくシーグラス。どのくらい揉まれてできるのでしょうか。
 そこで、人工シーグラス作りに挑戦!まずは砂浜の砂と、小石をボトルに入れ、さらに、海水を追加し、海の環境を再現します。
 今回は栄養ドリンクの茶色い瓶の破片を使います。

 ガラスをボトルの中に入れ蓋を閉めたら、回数計をつけ全力で振ります!ふること5分。1000回こえたので中身を開けてガラスを見てみると、ガラスの破片は少し角がとれたもののあまり変化がありませんでした。
 そこで、ここから1週間。およそ6万回振った人工シーグラスをスタジオで発表!すると、天然シーグラスと比べると、遜色のないものが出来ました。