2011/2/ 4
オランダ・アムステルダムにある「レンブラントハイス」は
レンブラントが最盛期の約20年間、
実際に住んでいた家を使って当時の暮らしを再現し、
レンブラントの版画作品とともに展示している美術館です。
写真中央の、緑とオレンジの窓戸があるのが実際の家で
入口は向かって左側のビルになります。
レンブラントは1639年に この家へ引越し、妻・サスキアと暮らしながら
代表作《夜警》や さまざまな作品を生み出しました。
現在、レンブラントハイスで見られる
内装やコレクション品は
当時のものを忠実に再現したものです。
1656年にレンブラントが破産した際に、
資産目録が作られており、
どの部屋に何があったかについて
記録されていました。
レンブラントハイスではこの目録や
実際に発掘されたものなどを元にして
当時の様子を再現しました。
館内にあるほとんどの物は
レプリカですが、
1階の玄関ホールの棚だけは、
レンブラントの2番目の妻的存在の
ヘンドリッキェが使っていたものだそう。
地下には台所があります。
1日中、食べ物を温めるために
室温が高かった台所。
奥に見えている、こげ茶色の箱で
白い布団が見えているのは
なんと、ベッドです。
台所にベッド。しかも小さい...。
17世紀のアムステルダムでは、
「まっすぐ横になって眠ると
悪魔に入られて病気になる」
という迷信があり、
上半身を起こして寝ていたそうで
ベッド全長は
とても短く作られています。
1階の玄関ホールには、
こんな風にたくさんの絵が
飾られていたそうです。
これは、富裕層とつきあいが
増えていったレンブラントが
当時のお金持ちの
インテリアを真似たからだとか、
画商として絵を展示するためだとか、
いろいろな理由があるそうです。
向かって右手には
先ほどのヘンドリッキェの
棚も見えますね。
レンブラントハイス内の
上層階にあるアトリエには
窓からの陽の光が
ふんだんに取り込まれていました。
秋冬のオランダでは
日差しはとても貴重です。
ここでレンブラントは
光と影を観察したり、
モデルにポーズをとらせたり
お弟子さんを指導したり
していたのでしょうか。
上の写真のアトリエの
片隅にあった絵具のテーブル。
当時、絵具は
もちろん手づくりでした。
動物の骨の炭や鉱物などを
細かく すり潰したものや
顔料を油に混ぜて
一色一色、つくっていたそうです。
レンブラントの油彩は
絵具の塗り方にも
年代によって特徴が
あるようですよ。
アトリエの隣りには、
レンブラントが蒐集した物を
陳列しておく部屋がありました。
彼は生涯、オランダ国外へは
行きませんでしたが、
貿易に沸くアムステルダムには
海外から
たくさんの人と物が集まっていて
市場やオークション等で
さまざまな異国の物を
買い集めることができました。
中には動物の剥製や
異国の民族衣装、武具、
壷、石膏像など
あらゆるものがありました。
下の この写真も、蒐集物の部屋にあるコレクションの一部。
当時、遠い海から
もたらされる貝殻は
1つの値段で家1軒が買えるほど
非常に高価なものだったとか。
本展の出展作品に
《貝殻》の版画がありますが
これはレンブラントの唯一の静物画。
この《貝殻》、じつは自然界では
ほとんどの貝は右巻きなのですが
版画では左巻きになっています。
それは...銅版画では描かれた図が
左右反転するから!
レンブラントは光の反射や
貝の3D感を版画で描くことに
熱心で、巻き方の正確さには
関心がなかったようです。
レンブラントハイスは、
彼のエッチング版画のコレクションを
ほぼ全て所有しており、
時期に応じてその一部を
展示しています。
同じ作品でも、初版、第2版...と
"ステート"が変わったり
刷られた紙が違ったりすると
どんどん印象が変わってくるのも
見逃せませんね。
展示室には非常に貴重な
オリジナルの銅版も
展示されていました!
(本展覧会にも2点展示されます)
また、版画を
実際に刷る過程が見られる
デモンストレーションも
毎日、行われています。
左手前が銅版のインクを
紙に写すためのプレス機です。
上には刷り終わった版画が
洗濯物のように干されているのが
見えますね。
銅版にインクを塗り、ふき取って、
プレス機にかけるのは
1つ1つがとても繊細な作業で
レンブラントが いかに
この作業を楽しんでいたかに
思いを馳せることができます。
レンブラントが実際に暮らし、歩き、眠り、笑い、悩み、
人生の頂点を極めて、やがて去っていった家・レンブラントハイス。
昔も今も、世界中からたくさんの人が 彼に会いに来ています。
Museum het Rembrandthuis (The Rembrandt House Museum)
住所: Jodenbreestraat 4
1011 NK Amsterdam, The Netherlands
TEL: +31 (0)20 5200 400
開館時間: 午前10時から午後5時
休館日: 1月1日
くわしくは レンブラントハイス公式サイト をご覧ください
【レンブラントの生まれた町・レイデン 】編 は コチラ