工房日誌

リストラロボットは再就職できるのか!? まさるくん2011/9/18

進化を続けるロボット界で、お役御免となってしまったロボット達を、新たな職場で、働くロボットとして再生させたい!
前回、見事に再就職を果たした、ピッチングマシン「球道くん」に続けと、今回、再起を目指すのは、「腕相撲ロボット」まさるくん。
中央に力士の人形が鎮座し、30年以上前、全国の遊技場で花形ゲーム機として活躍した、腕相撲の対戦が出来る体感式ゲーム機。
作動させるには、一回ずつマシンに100円を入れて、対戦。
ゲームは、6つの番付ボタンにより、十両から横綱まで選べ、力量が変化。
そして、番付が点灯し、スタート音が鳴ると対戦開始となる。
“横綱" は、かなり強力なパワー、その源は何なのか?
基本的な構造は、番付で油圧ポンプの圧が変化してギアを回転、中央から右側へ腕を倒す仕組み。
挑戦者が左に倒せば、“勝利"ランプが点灯。
負けた時は“敗北"ランプ、力が拮抗した場合は「引分」となる。
その動きとパワーを活かした仕事として、まず思い付いたのは、強い指圧を加えることで身体をほぐす、「マッサージロボット」。
最初の職場候補は、東京大田区にある銭湯『第二日の出湯』。
銭湯に来たら必ずあると言っていい、マッサージチェア。
まさるくんの“指圧"は、古株のマッサージチェアの快適さに敵うか。
手にマッサージボールを持たせて、いざ体験。
しかし、“横綱"は力が強すぎて、危険と判明。
しっかり押すことは出来たが、手加減が出来ないため、残念ながら不採用。
ならば、今度はパワー重視の仕事。
やってきたのは千葉県八街市、落花生の収穫をしていた『中川農園』。
落花生は、土の中で数多く広がって育つため、1株抜くのも重労働。
そために必要な力は、一升瓶を一本持ち上げる程度という。
さっそく、力を活かせるよう滑車を使い、畑の落花生に紐を放射線状につなぐ。
腕は伸ばして可動域を広げ、支点を作って「農作物収穫ロボット」の完成。
だが、実際は、期待していた程のパワーは見せられず、腕の動きも遅いため作業が進まず、ここでも不採用となった。
では、動きに注目し、まさるくんにハンマーを持たせて鐘を鳴らす仕事か。
しかし、実験してみると叩くと言うより擦るように、小さな音が鳴るだけ。
そこで、「球道くん」でお世話になった『株式会社 城南』に力をお借りする。
さっそく、技術部長の新田さんにまさるくんの機構を見てもらう。
まさるくんの駆動源である油圧ポンプは、パワーは出るがスピードが出ない。
油圧駆動は、体積の変化が少ない油が動くため、大きな力を発揮する。
一方で、加速減するのは難しいというのが弱点とのこと。
左右同じスピードで動かすには、電気モーターが最適。
扇風機の強弱のように、モーターへの電圧を変えれば加速減が簡単に出来る。
これにならい、油圧駆動からモーター付きの新機軸に取り替える。
すると、勢いのある腕の振り、それに伴い、鐘の音も良い音色となった。
そして、神奈川県川崎市の『川崎競輪場』にて「ジャン」の就職試験。
ジャンは鐘を打って、選手に周回数が残り1周であることを通告する。
だが、鐘を鳴らすことは出来たものの、パワー不足か思いのほか音が小さく、選手たちには、ジャンの音が全く届いていなかった。
これでは役に立つことは出来ず、結局不採用。
ならば、機構はそのままに、左右の動きを最大限に活かす作戦。
窓拭きなら、パワーもスピードもいらず、規則的な左右の動きがあればいい。
さっそく城南で、アルミ板で新たな腕を作製し、先端にはワイパー、さらに関節を取り付け、腕を伸ばして、広範囲を拭けるように改良。
そして、舞台は千葉県千葉市の高層ビル『千葉ポートタワー』。
その高さは125.2m、窓ガラス総数5571枚。
高所用のゴンドラに乗って、さっそく窓拭き作業開始。
ワイパーの先端に布巾を装着、水拭きのあとはワイパーできれいに。
順調に作業をこなしていく、「窓拭きロボット」まさるくんだったが、窓1枚で、800円とかなりの高給取りとなってしまった…。

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