腸骨

※首長竜をクリックする事で、各部分の化石を見ることが出来ます

発掘１２２日目

腸骨(１)

縦6.5 cm　横10.0 cm

以前、脊椎骨が発見された場所を、122日目に神田隊員が再調査し、40 cmほどの岩を掘り出した。
その表面には、茶色で楕円形の物体が見えている。骨化石の断面なのか？
だが神田隊員は、「木だと思っておいた方が、後のショックが少ない」と、なぜか慎重な姿勢。
たしかに、これまでに見た骨化石よりは太い。
はたして骨なのか、それとも木なのか？

充分に乾燥させ、130日目にいよいよクリーニング。
まず、ハンマーとタガネで母岩を削り取ろうとしたが、あまりにも固くて歯が立たない。
そこで、名手・鈴木先生が、ダイヤモンドカッターで母岩をおおまかに削り取り、神田隊員がコンクリート針で仕上げを行った。
若干の欠損部分があったため、粘土で補強し、パラロイド溶液を塗って全体を保護。

こうして、半日がかりでクリーニングは終わったが、鈴木・高橋両先生にも、何の骨か判然としない。
太一は「太くて頑丈な骨だから、陸上に住む恐竜の骨という可能性もあるのでは？」と大胆な推理を展開。
「博物館で見たティラノサウルスの骨に似ている」と言い出す隊員も。
高橋先生は、「首長竜の骨でないとしたら、ロンドンの博物館で調べないといけないかも…」と、驚くべき事を口にした。
それほどまでに貴重な骨なのか？　はたして正体は!?

早速、いわき市石炭化石館に展示されている首長竜のレプリカと比較。
鈴木先生が「腸骨に似ている」と指摘したものの、確証は得られなかった。

本部に戻り、長谷川博士に鑑定をお願いすると、やはり、骨盤を形成する骨のひとつで、腸骨であると特定された。

恐竜をはじめ、陸上を脚で歩いて生活している脊椎動物の多くは、骨盤が坐骨や恥骨を支える構造になっている。また、お腹の部分に骨はない。

これに対して、水中で浮力の助けを借りて生活している首長竜の場合、その骨盤は、坐骨や恥骨を支えるような構造になっていない。
また、腹部には、腹肋骨（ふくろっこつ）という骨がある。
この腹肋骨は、脊髄とは直接つながっておらず、肋骨の凹んだ部分に接している。呼吸や運動などで腹部が動くと、この凹みに沿って、腹肋骨がスライドするという仕組みになっている。
一度は陸に上がった爬虫類が、再び海に帰り、このような特異な姿に進化を遂げたのだ。