TOYOTAプレゼンツ・FIFAクラブワールドカップジャパン2007

現地レポート

2007.11.12 北中米カリブ都並日記「全ての人々がサッカーを愛している」


 北中米カリブ担当の都並敏史です。10月18日からパチューカの取材のためメキシコにいます。
テーマは「100年に学べ」。歴史あるメキシコサッカーの強さの秘密を見つけてきましたよ。

 北中米カリブ王者のパチューカは、メキシコサッカー発祥の地と言われています。
メキシコシティから車で約2時間、標高2500メートル以上のところにパチューカはありました。
ちょっと早足で歩いただけでも息がきれる。高地は初めてだけど、これほど大変だとは。

 まず驚いたのが、サッカー大学も併設する近代的なクラブであること。敷地も広いのなんのって
ビックリですよ。100周年を記念して作られたと教えてもらいました。
大学以外にも学生の寮とかも作っていて、すでに200名の選手が暮らしていました。
下部組織とか、各地域のスクールなど合わせると5万人くらいパチューカに関係しているらしいです。どこを見ても皆サッカーしてるって面白い状態でした(笑)。

 さっそくトップチームの練習を見て、メサ監督・ヒメネス選手・エースFWのカチョ選手に挨拶。
アルゼンチンのヒメネス選手には、僕が昔マラドーナと対戦した時の写真を見せたら良いリアクションが。GKのカレロ選手とは、一緒にランニングをさせてもらっち ゃいました。クラブの象徴的存在なのにすごく気さくで何でも話してくれました。
必勝ハチマキを渡したら喜んで頭に巻いてくれて、
その模様が翌日地元の新聞に出ちゃいました。
明るく楽しい雰囲気でのトレーニング。
これも100年の歴史の余裕かと。

 パチューカは、メキシコ人監督メサのもとパスサッカーを主体とした攻撃のチーム。
ヒメネスやカチョのコンビネーションも良いし、はまれば非常に怖いチームです。一方で、試合を見て守備には不安を感じました。考えられないようなミスが出ます。それでもメサ監督は横綱相撲というか、自分たちのサッカーを貫くと思います。
12月までにはDFを補強する噂もあるので、
しっかりと仕上げてくるでしょう。



 続いてパチューカのスタジアムへ。3年前くらいに改修されて新しくなったのですがこれまた最高に良い環境が整っていました。
チームにお願いしてロッカールームに入れてもらったのですが、選手の写真パネルがあって
その上にユニフォームが飾ってある。これがぐるりとメンバー分そろっていてカッコいいんですよ。
僕もいろんなチームを見てきましたが、その中でナンバーワンと言っていいでしょう。
選手の入場口は、過去の歴史が飾られていてクラブ100年以上の歴史を感じるつくりになっています。これで選手が盛り上がらないわけがない!
スタジアムもピッチとスタンドが非常に近い。ベンチのイスは独立式で最高の席。
100年の歴史の積み重ねから細かい配慮が行き届き、最高の舞台を作り上げていました。


 メキシコのサッカーは、個人技を主体にした美しい攻撃サッカーです。ただし、美しさを追求する故にメンタル面の弱さとか、フィジカルなどに課題があると思っています。
それを補うために、メキシコは何と「アルゼンチン式」の導入に取り組んでいました。

リーグを見渡すと多くのアルゼンチン指導者、選手が所属しています。
アルゼンチンの持つメンタルの強さ、勝つための戦術、フィジカルなどを学ぼうとしていたのです。
 僕の尊敬する元アルゼンチン代表監督のペケルマンさんもトルーカというクラブに呼ばれました。
僕はアルゼンチン大好きなので嬉しいと同時に、
もともと個人技などを持っているメキシコが
アルゼンチンの勝利の哲学などを手に入れたら、
こりゃ恐ろしいチームになるでしょう。


 パチューカは、マルティネス会長とアルゼンチン人スタッフが作り上げた革命的クラブです。
総指揮をとるファッシ氏は、「世界ナンバーワンのサッカーに大学などの設備がなかったのに
疑問を持ち、パチューカで実現した。メキシコサッカーはまだまだ発展途上。我々アルゼンチンの
指導などを経て、メキシコ人たちの力で今後強化できるような体制を作りたい」と語っていました。

 メキシコに来て一番感じたのは、サッカーをとりまく全ての人々がサッカーを本当に愛して、
盛り上げようと考えていることです。誰と会話してもサッカーの話になるんですよ。
本当にサッカーへの思いが強い国です。100年間、作っては壊し、作っては壊しを繰り返して今がある。この差を日本が埋めるのは大変な作業だと改めて感じました。
これまでの世界の図式は、欧州×南米でしたが、今回はメキシコのパチューカが
その図式を崩すと面白いんじゃないかなと思っています。
初戦のアフリカを倒すと、次はアルゼンチンのボカと対戦です。こりゃ注目ですよ!
メキシコの美しく楽しいサッカーを世界の舞台で堂々と表現してもらいたい!

 私は引き続きメキシコサッカーを取材するためこちらに残っています。
12月の中継ではいろいろ面白い話ができると思いますのでお楽しみに!

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